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デスクトップPCの油没冷却に再挑戦! 第1回

海中でPCを冷却するだと? なにを言っている?

2017年02月24日 12時00分更新

文● 林 佑樹(@necamax) 編集●北村/ASCII.jp

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PCを海や湖に沈めてしまえば
冷却コストはほぼゼロになる

 藤原准教授によると、後付けでスマホに防水機能を持たせるコーディングのニュースを見て「マザーボードでもいけるんじゃないか?」と思ったのが液浸冷却のきっかけだという。

 また鯉渕准教授は「楽しそうだったから」と自作PCファン特有のノリも見せた。藤原准教授は、川や海、もしくは水で冷却できれば、安価で扱いやすく、かつ効率的なシステムを構築できるのではないかと考えたそうだ。

 実験開始は2013年から。藤原准教授は、気化させた樹脂が基板の部品内部まで入り込んで均一な皮膜を形成する化学的気相成長法に注目。パリレン樹脂でマザーボードを防水加工する方法に至った。パリレン樹脂の厚さが薄いと防水機能が弱まるので、製造工程で最大の厚さである120μmにしているという。

 2016年の実験では海で40日間、水道水で約3ヵ月間(53日間)の連続動作実験をクリアしている。

パリレン樹脂でコーティングされたASRock製マザーボード「Q1900DC-ITX」

パリレン樹脂での蒸着をする前に、マザーボードのUSBピンなどを折ったり、半田吸引器で必要のないインターフェースを外したり、ショートしそうな箇所を極力排除している

鯉渕「海没させたバージョンは、PCの熱で貝が群がり養殖みたいになってしまいました。養殖場とセットでの運用がいいかもしれないですね。それに、海水はダメージがあるのでやっぱりダメかもしれない。まだこのあたりは不明な部分が多いです」

 ギリギリの浮力で浮かぶ箱を作って、潮の満ち干きで回転しないようにふたつのいかりで固定。55日後に引き上げたときには、箱に貝がビッシリとついていたそうだ。

2016年5月11日、海に沈める直前の機材

5月11日の設置時の様子。いかりで固定し、波にさらわれないよう工夫がされている

6月2日に引き上げた際の様子。この状態で動作しているのだから驚きだ

7月27日に引き上げた直後の様子は、簡易養殖場状態。鯉渕准教授も藤原准教授もこれは予想しておらず、爆笑したそうだ。引き上げ時は貝の重みで重量が5~6kg増加してしまい、6人がかりで引き上げたという

成功の裏には数々の失敗も

 パリレン樹脂の厚さはどれがいいのか、どれくらい耐えるのか、それ以前にどのマザーボードがいいか、などは最近の研究結果だという。もちろん、そこに行き着くまでには数々の困難に直面してきた。

藤原「開始当初は試行錯誤ばかりでした。エポキシ樹脂でコーティングしてみたり、容器に密封しようとしたり、いろいろやりました。ホント失敗の連続でしたよ」

 そう言いながら、数々の失敗作を披露してくれた。

エポキシ樹脂にどぶ漬けしてみたテストモデル。粘度が高いと浸透させるのが難しく、粘度が低いと硬化する前に垂れてしまうので、塗布するのに苦労したそうだ。どぶ漬けなので、塗布というより封入に近い樹脂の塊になっている

だが、水没以前に陸上で起動しなかったという。ボード上に貼り付けた温度計の配線が樹脂封入時に基板上の配線に触れた可能性があるが、原因究明には至っていないそうだ

Project Natickのように、密閉容器内にPCを入れて冷却しようとしてみた試作品。フランス人のFabien Chaix特任研究員が制作したもの

蓋周辺を防水加工+20ヵ所のネジ止めでバッチリな自作ケース(フランス人の特任研究員談)だったが、微妙に歪みがあり、実験開始からわずか3日後に浸水し、テスト終了となった

防水設計の産業向けPCケースでの実験。コネクター類も防水処置が施されている。先の手作り試作機に比べると、安心感がとてもある。実際に海没実験もクリアしているが、冷却性能は思ったほどではなかったそうだ

 ASCII読者向けにお手軽なやり方の提案として、「密封したPCケース内をフロリナートや油で満たせば、カンタンに液浸環境ができますよ」と藤原准教授からアドバイスを受けた。

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