1台のアプライアンスに重複排除やクラウド対応機能などを統合、新興ベンダーの狙い
「時代遅れのバックアップ製品にイノベーションを」Rubrikが語る
2017年02月01日 07時00分更新
近年、ハイパーコンバージドインフラ、オールフラッシュストレージなど、エンタープライズITの世界を大きく変える新世代のプロダクトが次々に登場している。しかし、そうしたプライマリシステムの世界とは対極的に、「バックアップ/リカバリの世界は、イノベーションのないまま取り残されている」と主張するのが、バックアップソリューションベンダーの米Rubrik(ルーブリック)だ。
3年前(2014年)に設立された新興企業であるRubrikは、そんなバックアップ製品市場に新風を吹き込もうとしている。同社でAPAC地域のセールスを率いるスティーブ・ディクソン氏、昨年12月設立の日本法人で社長を務める山田秀樹氏、SEマネージャーの神近孝之氏に、Rubrikの製品特徴や目指すものを聞いた。
既存のバックアップシステムは複雑化しすぎている
Rubrikでは、18カ月前に最初のプロダクトを市場投入した。それが「Rubrik Converged Data Managementアプライアンス」だ。発売から間もない製品だが、導入顧客には大手企業も多く「顧客の10%はFortune 500企業」だと、ディクソン氏は説明する。フェイスブック(Facebook)も早期に導入した顧客の1つだという。
「Rubrikの平均セールスサイクル(最初に製品を紹介してから購入されるまでの期間)はわずか『76日間』だ。競合製品ならば検証環境の構築に何日もかかるところを、Rubrikならば数時間で済んでしまう。顧客はあっという間にRubrikの良さを理解して、早々に導入決定に至るというケースが多い」(ディクソン氏)
山田氏は、従来のバックアップシステムは、過去のアーキテクチャを引きずったまま機能追加を繰り返しており、その結果として複雑化し、構築も運用も面倒な作業になっていると指摘する。
「そうしたバックアップシステムを、『箱(アプライアンス)をひとつ入れれば終わり』にしてしまおうというのがRubrik」(山田氏)
具体的には、エージェントレスで動作し、重複排除/圧縮などの機能を備えたソフトウェアもバックアップストレージもアプライアンスに内蔵しており、容量が足りなくなればアプライアンスを追加してスケールアウトできるというのが、Rubrikアプライアンスの特徴である。製品ジャンルは異なるが、Nutanixのようなハイパーコンバージドインフラ(HCI)が目指すシンプルさと同じだ。
クラウドバックアップのゲートウェイ機能も備えており、クラウドストレージをレプリケーション/アーカイブ先としてセットアップすることも簡単にできる。GUIからバックアップ先のクラウドを選択し、ポリシーを設定すれば、あとは自動的にクラウドバックアップが実行される。現在のところ、「Amazon S3」やS3互換の各種パブリック/プライベートクラウド(Scality、Cloudianなど)、Microsoft Azure、日本ではIIJ GIOのクラウドストレージを選択できる。
もうひとつ、リストア作業のシンプル化にも注力しているという。山田氏によると、従来型のバックアップシステムを導入している企業の中には、社内ルールに従ってバックアップはしているものの「実際はリストアできない」と考えている企業も少なくないという。複雑な構成のシステムをリストアするのは容易ではない。たとえリストアできたとしても、その作業に何十時間もかかるようでは、ビジネス継続性(BCP)の観点から問題がある。
そこでRubrikでは「RTO(目標復旧時間)を限りなくゼロに近づける」ことも目的とした。たとえば、仮想マシンイメージをバックアップしている場合、プライマリストレージを修復してイメージを戻す(コピーする)のを待つことなく、Rubrik上でイメージをマウントしてシステムを復旧できるインスタントリカバリ機能がある。
また、Rubrikがアプライアンス/クラウドにバックアップした全ファイルのインデックスを保持しており、ファイル検索をしたうえで必要なファイルだけを取り出す(リストアする)操作も簡単にできる。創業者チームにはグーグル出身者がおり、Rubrikの検索でも“Googleライク”な使い勝手を目指したという。
ディクソン氏は、Rubrikをアップルの「iPhone」になぞらえた。10年前に登場して携帯電話/スマートフォン市場を刷新したiPhoneの功績をふまえながら、Rubrikは“バックアップ界のiPhone”を目指す、とその意気込みを語る。
今後さらにバックアップ対象を拡大、国内クラウド事業者との提携も狙う
Rubrikはまだ歴史の浅い製品であり、機能面では発展途上の部分もある。たとえば、現時点でバックアップ対象とするのはVMware vSphere環境の仮想マシン、物理Linuxサーバー、SQL Serverだ。今後Rubrikはさらに機能拡張を進め、OracleのデータベースやHyper-V/KVM環境の仮想マシン、物理Windows Serverなどにも対応していく計画だという。
またVMwareやMicrosoftだけでなく、NutanixやPure Storage、Tintri、Scality、Cloudianといった新興ベンダーとの戦略/技術アライアンスを結んでおり、各社ストレージ/HCI製品との強固な連携機能を備えていく可能性もある。ディクソン氏によると、Rubrikの顧客のおよそ20%はNutanixの顧客でもあるという。
日本市場における戦略について、まずは国内のリファレンスユーザーを数多く作っていくこと、また販売代理店とSIerとの間を結びつけていくこと、などだという。山田氏は、Rubrikはクラウドバックアップゲートウェイでもあるため、国内クラウドサービスプロバイダーとの協業によるクロスセルも狙っていくと語った。