親会社のビジネスを乗っ取った
Crystal Semiconductor
Crystal Semiconductorは1984年にJames H. Clardyによって創立された。こちらはサウンドチップの専業メーカーとしてスタートしており、CS4200シリーズを各種生産している。
最初は1984年という時期からもわかる通り、FM音源程度のものであったが、そのうちにSoundBlaster互換やMIDIのサポート、3D/ドルビー/マルチチャネルなどどんどん機能を増やして現在に至る。
そこそこの機能のものが、比較的安価に手に入るということで、これを搭載したOEM向けの低価格サウンドカードはそれこそ山とある。またいくつかのサウンドカードベンダーの低価格品に採用されるというケースもあった。
画像の出典は、“Fasttech”
そのCrystal Semiconductorであるが、1991年にCirrus Logicに買収された。この結果、1996年にはそのサウンド技術を中核に、サウンド以外にもデータ収集用のADC/DACやテレコミュニケーション用製品(電話回線向けの特定用途製品)、さらにはイーサネット向け製品なども手がけるようになっている。
その一方でサウンドカードの市場はAC97が登場して以来、どんどん縮小するようになってきた。もちろんCirrus LogicもAC97コーデックやHDAコーデックもラインナップしたものの、ここはRealTekがかなり大きなシェアを握ってしまっており、そう大きなビジネスにはならなかった。
その代わりといってはなんだが、同社のオーディオ技術をもっと組み込み方向に展開しているのが昨今の同社の動向である。最近ではスマートフォン向けのノイズキャンセラーやスピーチプロセッサー、VoIP向けのエコーキャンセラー、さらにはSiマイクやMEMSマイクなどもラインナップに加え、すでにCirrus Logicの大黒柱の1つになっている。
余談だがClardy氏はCrystal Semiconductorの買収後はCirrus Logicにそのまま移り、1992~1998年にはCOOを務めていた。
この時期にCirrus Logicは(1994年に買収した)PicoPowerをNational Semiconductorに売却したり、PC Graphics BusinessをIntegrated Software & Devices Corp.に、PC Modem BusinessをAmbient Technologies, Inc.に、Communication BusinessをBasis Communications Corp.にそれぞれ売却する一方で、さまざまなサウンド関連の企業を買収し、サウンド専業ベンダーとしての生き残りに向けた急速な戦略転換を完了している。
その意味では、Crystal Semiconductorは名前こそもう残っていないが、実態からみると親であるCirrus Logicのビジネスそのものを乗っ取って、現在も元気に活動しているというべきなのかもしれない。

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