新チップセットProfusion
インテルはPentiumに続き、Pentium Proの開発を行ない1995年末に出荷を開始するが、これにあわせてCorollaryも新チップセットであるProfusionを開発した。1996年8月には搭載製品の発表をしているため、おそらく1995年中にはOEMへの提供が始まっていたのだろう。
Profusionに関しては、1997年に行なわれたIEEE Hot Interconnects Symposium VでCEOであるWhite氏と、同社のDirector of System Architectureを勤めていたPete Vogt氏による講演が行なわれている。そこでこの講演のスライドをいくつか取り上げよう。
Profusionは4~8CPUの市場をターゲットにしている。8Pを超えると、OSやアプリケーションレベルで特殊な対応が必要になるので、8Pまでに留めておくのが賢明という判断である。
画像の出典は、“Profusion, a Buffered, Cache-Coherent Crossbar Switch”
ただし4Pを超えて共有バス構成にすると、今度はバスがボトルネックになる。そこでProfusionではFSBを2つに分割し、さらにキャッシュコヒーレンシ・フィルターをそれぞれ搭載した上で間をクロスバーでつなぐ構成になっている。
画像の出典は、“Profusion, a Buffered, Cache-Coherent Crossbar Switch”
FSBそのものはPentium Proにあわせて66MHzであるが、2つのメモリーチャンネルを持ち、限りなくccNUMAに近いハードウェア構成に近いながら、きちんとキャッシュコヒーレンシが取れているのでソフトウェアから見れば共有バスにすべてのプロセッサーが載っているように見えるというものだ。
ちなみに4つのプロセッサーごとに32MBの共有3次キャッシュを搭載しており、これでバストラフィックの軽減を図る工夫もなされている。
画像の出典は、“Profusion, a Buffered, Cache-Coherent Crossbar Switch”
クロスバーの中身は5ポートのSRAMで、特にFSBFSBとメモリーインターフェース、およびI/Oポートとメモリーインターフェースは高速にアクセスするFast Pathと呼ばれるデータパスが用意されている。
画像の出典は、“Profusion, a Buffered, Cache-Coherent Crossbar Switch”
このFast Pathを経由する場合、データは内部のSRAMに書き込むのと並行して、出力側にデータが送り出されることで、レイテンシーを最小限に抑える工夫がなされているそうだ。Pentium Proのキャッシュラインサイズは32Bytesなので、64ラインだと全部で2KBになり、サイズとしては上の画像のSRAMはそう大きなものではない。
ただPentium Proは同時に4つのキャッシュラインアクセスを発行できるため、8CPUがそれぞればらばらにリクエストを出したとすると最大32ライン分になる。64ラインはこの倍の容量になるわけで、ファブリックとしては十分ということなのだろう。
チップそのものはMAC(Memory Access Controller)チップが0.35μmプロセスで約60万ゲート、パッケージは596ピンのBGAである。これとは別に、DIB(Data Interface Buffer)が0.5μmプロセスで約5万ゲート+2KBマルチポートSRAM、655ピンのBGAパッケージで提供されるとしている。
この2つでProfusionチップセットが構成される。厳密に言えば他に、3次キャッシュコントローラーもあるはずだが、これに関しては講演の中では言及されていない。

この連載の記事
-
第852回
PC
Google最新TPU「Ironwood」は前世代比4.7倍の性能向上かつ160Wの低消費電力で圧倒的省エネを実現 -
第851回
PC
Instinct MI400/MI500登場でAI/HPC向けGPUはどう変わる? CoWoS-L採用の詳細も判明 AMD GPUロードマップ -
第850回
デジタル
Zen 6+Zen 6c、そしてZen 7へ! EPYCは256コアへ向かう AMD CPUロードマップ -
第849回
PC
d-MatrixのAIプロセッサーCorsairはNVIDIA GB200に匹敵する性能を600Wの消費電力で実現 -
第848回
PC
消えたTofinoの残響 Intel IPU E2200がつなぐイーサネットの未来 -
第847回
PC
国産プロセッサーのPEZY-SC4sが消費電力わずか212Wで高効率99.2%を記録! 次世代省電力チップの決定版に王手 -
第846回
PC
Eコア288基の次世代Xeon「Clearwater Forest」に見る効率設計の極意 インテル CPUロードマップ -
第845回
PC
最大256MB共有キャッシュ対応で大規模処理も快適! Cuzcoが実現する高性能・拡張自在なRISC-Vプロセッサーの秘密 -
第844回
PC
耐量子暗号対応でセキュリティ強化! IBMのPower11が叶えた高信頼性と高速AI推論 -
第843回
PC
NVIDIAとインテルの協業発表によりGB10のCPUをx86に置き換えた新世代AIチップが登場する? -
第842回
PC
双方向8Tbps伝送の次世代光インターコネクト! AyarLabsのTeraPHYがもたらす革新的光通信の詳細 - この連載の一覧へ











