2017年4月に、攻殻機動隊の実写映画「GHOST IN THE SHELL ゴースト・イン・ザ・シェル」が公開予定だ。パラマウント・ピクチャーズが制作し、ルパート・サンダース監督がメガホンを取り、原作の草薙素子にあたる“少佐”をスカーレット・ヨハンソンさん、荒巻大輔役をビートたけしさんが演じる。
11月13日に、本作のエクスクルーシブイベントが開催され、イベント終了後にはルパート・サンダース監督へのラウンド取材も実施された。
セリフに落とさなくても感覚的に伝わる映画にしたかった
ーーアンドロイドやAIを描いた映画はたくさんありますが、今回攻殻機動隊以外に参考にした作品はありますか?
ルパート・サンダース監督(以下、サンダース監督):攻殻機動隊自体がすばらしいテーマや要素を持っていて、制作者としては甘やかされる危険性があるくらい潤沢な作品ですので、ほかの映画を参考にするということはなかったです。ただ、私も20年間フィルムメーカーとして映画を作ってきましたし、当然今までの年月の間に様々な作品から吸収しているので、それが自然とでてくるということはあると思います。
ーー実写化するにあたって難しかった箇所を教えてください
サンダース監督:挑戦という意味ではたくさんありました。例えばイノセンスなどは哲学的に難しいと感じられ、物語もなかなか1つの線をたどっていくようなわかりやすさがあるわけでもないです。ただ、攻殻機動隊の根底に流れるテーマみたいなものを映画的な形で、セリフなどに落とさずに感覚的に伝わる映画にしたかったんです。観てくれる人たちが、フロイトだデカルトだみたいな感じに説教くさくなくならずに、人間性、テクノロジーなどについて何か響く映画にしたつもりです。
ーー今のテクノロジーについてどう思いますか?
サンダース監督:ホーキング博士が「AIは人間が生み出したもっとも偉大で最終的な発明だ」と話していましたが、私は真実ではないかと思っています。ただ、テクノロジーはものすごいスピードで変わり続けていて、我々には予測ができなくなってきています。なので、テクノロジーはどんどん変わっていくけれども我々がそれをある程度導かなくてはいけないと思います。そうでないと、テクノロジーだけが先に行って、人間なんて地球にいらないのではないかとなる可能性がありますから。
初期の段階から少佐はスカーレットに決めていた
ーー少佐役に日本人のキャストは考えなかったのですか?
サンダース監督:初期の段階から、スカーレットに演じてもらいたいと思っていました。作品を世界に発信したいと思っていたので、彼女は役者としてどんどん成長していますし、世界的に魅力的な役者でもあるので。また、攻殻機動隊と同じようなタイプの「her/世界でひとつの彼女」や「LUCY/ルーシー」「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」など、皆さんの中に残る作品にも参加している勇気のある役者ですし。役者と映画スターがいるとすれば、映画スターと呼べる人はなかなかいませんが、彼女はその1人だと思っています。最初からビートたけしさんが荒巻だなと思っていましたが、スカーレットも最初から(少佐役だと)思っていました。
ーー押井 守監督がスカーレットでよかったとコメントしたことが話題になりましたが、このことで(少佐役が日本人ではないということに)批判的な人の意見は変わると思いますか?
サンダース監督:批判する人は批判をやめはしないと思いますが、スカーレット自身の演技に目を向けて観てもらえれば、きっと彼女でよかったと言ってくれると思います。また、歴史的に実在した人ではなく、少佐はアンドロイドなので、この人種ではいけないというのはないと思います。押井さんが攻殻機動隊の“GHOST IN THE SHELL ゴースト・イン・ザ・シェル”バージョンに彼女がぴったりだったと感じてくれたというのは、とても後押しにはなります。また、この作品は日本の文化にインスピレーションをあたえられた、グローバルに向けた作品だと考えていますので、そういう意味でもスカーレットでよかったと思っています。
ーーバセット・ハウンド(押井さんが飼っている犬、イノセンスではバトーが飼っている)は登場しますか?
サンダース監督:登場しますよ! 押井さんの愛犬を香港の撮影現場まで連れてきてもらうという話もありましたが、それは実現しなかったですけどね。ただ、押井さんは現場まできてくれましたよ。
作品情報
作品名:GHOST IN THE SHELL ゴースト・イン・ザ・シェル
公開時期:2017年4月予定
監督:ルパート・サンダース
音楽:川井 憲次
出演
少佐役:スカーレット・ヨハンソン
荒巻役:ビートたけし
オウレイ博士役:ジュリエット・ビノシュ
クゼ役:マイケル・ピット
バトー役:ピルー・アスベック
配給:東和ピクチャーズ