さて、この季節になると温かい料理が好まれるので、ホールスタッフさんの作業も料理をテーブルに運んで終わりではなく、料理にソースやチーズをかけたり、鍋の調理をしたりと忙しくなります。ホールで働くスタッフの多くは浴衣姿だと思いますが、暑さも和らいだ10月に入った今でもなぜ浴衣を着ているのでしょうか。少々強引なつなぎですが、ここからはこのあたりの疑問を解き明かしていきます。
まめ知識1:塚田女子はなぜ浴衣姿なのか?
この疑問に答えるべく、ワタクシは宮崎県日南市の塚田地区に取材にいって参りました。みなさんご存じかどうかわかりませんが、塚田農場の「塚田」はこの日南市の塚田地区に由来しています。エー・ピーカンパニーの社長である米山 久氏が自社の養鶏場をこの場所に自らが作ったことが塚田農場の始まりです。
塚田農場では、ホールスタッフの女性はそれぞれが異なる色や柄のカラフルな浴衣、男性は黒い作務衣を着ていますね。中には、鯉口やダボと呼ばれる衣装を着ているスタッフも見かけるかと思います。祭り好きの方ならピンとくるかと思いますが、鯉口やダボは神輿を担ぐ人が着用する衣装です。ちなみに、ダボを来ているのは店長です。知ってました?
もうおわかりかと思いますが、塚田女子が浴衣を着ていたり、店長がダボを着ているのは、村祭りをイメージしているからです。実はこのコンセプトを考えたのは、現在は宮崎県で地頭鶏ランド日南の社長を務める近藤克明氏。
近藤氏によると「当初は巫女さんをイメージした白装束でしたが、オペレーションの問題もあり浴衣に変えた」とのこと。ちなみに普通の浴衣よりも短いのは機動力を高めるためです。普通の浴衣だとあんなに高速に動けませんからね。ちなみに、最初にこのコンセプトを思いついたときは想像上の村祭りだったそうですが、実際に調べてみると塚田地区には塚田神社があり、そこで本当に村祭りが開催されていることを知ったそうです。
「よく行く塚田農場はそんなユニフォームじゃない!」という方もいらっしゃるかと思いますが、それは北海道シントク業態の塚田農場です。現在、北海道シントク業態は浴衣は浴衣でもデニムブランドのLeeとコラボした「デニムミニゆかた」を着用しています。
まめ知識2:鉄骨や運動会のテントが店内あるのはなぜか
すでにネタバレなんですが、塚田農場が村祭りコンセプトにしているからです。コストダウンのためではありません。祭りのときに出店する露店などは仮組の屋根や運動会で使うようなテントを使っているのをよく見かけますね。まさにそれをイメージしているのです。照明が裸電球というのも露店などのイメージなんですね。全店舗にテントがあるわけではないですが、錦糸町店などにいけばその雰囲気をかなり強く感じることができるでしょう。そのほか、壁のフェンスなどは農場のイメージ。近藤氏によると、「いまはBGMにJ-POPが流れていることが多いですが、当初は村祭りをイメージした祭り囃子をBGMに使っていた」とのこと。
ちなみにまめ知識1の回答でも出てきた北海道シントク業態の店舗は、デニム浴衣だけなく内装も他業態の塚田農場とは異なります。具体的には、壁面にレンガブロックが埋め込まれているなど、村祭りというよりはバルのイメージが強いインテリアです。特に、八重洲北口店はその雰囲気を色濃く感じられると思います。さらに帰りにもらえるお土産も異なります。宮崎日南業態や鹿児島霧島業態は壺味噌を小分けにしたものですが、北海道シントク業態ではミント味のタブレットです。
まめ知識3:賽銭箱やしめ縄が飾ってある店舗がある
東京・八王子店にある宮崎日南業態の塚田農場は、入口付近に賽銭箱やしめ縄がディスプレイされている異色店舗。実はこの店舗が塚田農場の1号店で、そもそものコンセプトである神社での村祭りの外観を取り入れているわけです。あと、塚田農場の前身は同じく八王子にある「わが家」という居酒屋で、以前は八王子以外にも店舗がありました。現在は塚田農場の業態が大きくなったことで、わが家という名称を使っているのは八王子店だけです。
まめ知識4:秘密の役職としてのあるべき姿
塚田農場にいくと手渡されるのが名刺ですね。主任→課長→部長→専務→社長→会長と昇進していきます。それぞれ、2回、5回、7回、10回、12回、14回来店すれば、次の役職に昇進できます。会長の次は何かというと「秘密の役職」です。塚田農場に50回行けば就任できるわけですね。ちなみに以前は、秘密の役職になると「塚民健康保険証」というものが発行されていました。
実は今回の宮崎取材の2日目に、湯本さんという塚田農場の秘密の役職の方にお会いできました。ワタクシは仕事で取材に来たのですが、湯本さんは東京から自腹で宮崎県に視察に来られたそうです。宮崎県西都市にある地頭鶏ランド日南の加工センターと、同じく西都市にある直営農場を一緒に見学しました。ちなみに湯本さんは前日も、塚田農場(エー・ピーカンパニー)が出資しているワイナリーを視察していたそうです。ワイナリーのお話はまた後日に。
塚田農場に通ううちに農家や加工センターのことも知りたくなって今回の視察に来られたそうです。もう1つ教えてもらったのが、塚田農場に行く際は必ずアルバムを持って行くということ。なんのアルバムかというと、来店時に卓担当のスタッフさんにサインを書いてもらい、それを綴じておくアルバムとのこと。名刺システムは会長でなくなってしまうので、それに代わるものとしてアルバムを持ち歩くことを思い付いたそうです。
湯本さんは、長らくは町田店がホームだったそうですが、最近は青葉台店をホームとしてよく行かれているそうです。ワタクシはそれを聞いてちょっと反省しました。これまで土日になると、川口店と赤羽店、新小岩店と錦糸町店、銀座中央通り店と川口店、八重洲北口店と飯田橋店、水道橋店と飯田橋店などなど、塚田農場ハシゴをしていましたが、複数店舗を短時間でハシゴするよりも1店舗にじっくり腰を据えて酒と料理を楽しむべきだと。
加えて、今回の宮崎取材で痛感したのは「塚田農場に行ったら鶏料理は必ず食べるべき」ということ、エー・ピーカンパニーの自社の養鶏場は、3拠点のうち2拠点が休止中です。土壌を休ませるという目的もありますが、鶏の需要変動に対応するための生産調整という側面もあります。自社農場で生産調整することで、約20軒ある契約農家の生産(=所得)を減らすことなく持続可能な農業を実現するための施策なのです。秘密の役職になったからには、来店時には必ず「じとっこ炭火焼き」「じとっこたたきネギまみれ」「チキン南蛮」「塚田流ミックス盛り」などの鶏料理を食べてみやざき地頭鶏の需要を増やすべきです。