HDDの価格低下に押され、売上が低迷
第2世代Bernoulli Boxを投入し巻き返しを図る
さてこの後も順調に推移するかと思いきや、HDDの価格低下にともない急速に売上げが低下することになった。1986年末における有利子負債は850万ドルとなり、株価はピークの23ドルから4ドルまで下落。1987年の最初の9ヵ月で3900万ドルの営業損失を出し、1987年度の売上げは前年比30%ダウンの8900万ドルとなった。
在庫も積みあがったため、すべての製造施設を休止してキャッシュフロー確保に走る。結局同社はプライベートファンドから資金提供を仰いでこの窮状を切り抜けることになった。
これにともないCEOはプライベートファンドのMichael Kucha氏が務めることになった。Kucha氏は直ちに大規模なリストラを敢行。従業員は1350人から750人まで削減され、さまざまな出費が抑えられた。ただその中でも研究開発費用だけはきちんと確保したあたりがKucha氏のバランス感覚である。
1988年には第2世代のBernoulli BoxとBernoulli Diskが出荷開始された。こちらはサイズが一回り小さくなっており、容量も20/35/44MBと大きく増え、最終的には1枚あたり230MBまで容量を拡大している。
画像の出典は、“Wikipedia”
幸いにもこの第二世代のBernoulli Boxの評判は悪くなく、売上げも順調に回復し、かつリストラの効果もあって、1988年末には有利子負債を解消しながら手元資金を1800万ドルまで増やすことに成功する。
これでIomegaの再建が一段落したと見たKucha氏はファンドの仕事に戻るべくCEOを辞任。後任にはHPからやってきたFred Wenninger氏が就いた。
Wenninger氏は、さらに製品の生産ラインにメスを入れた。彼の指揮の下、同社は製品製造に要する時間を28日から2日未満まで削減、Bernoulli Diskのヘッド周りの流体設計の設計時間を9割近く削減、コントローラーボードの設計時間も8割削減するなど、大幅に効率の改善を成し遂げた。
結果、同社の業績は再び改善していく。1990年には売上が1億2000万ドルまで伸びし、出荷台数はほぼ1986年と同程度まで復活した。この1990年は利益も1400万ドルとなり、再びIomegaは健全性を取り戻したかのように見えた。
ところが1992年、第4四半期の売上げが突然下落する。同期の売上げは3750万ドルで、前年の3940万ドルに及ばなかった。また1992年通期で見ても、売上げは1億3920万ドルとわずかに増えたものの、利益は470万ドルまで下落する。
Iomegaは直ちにリストラを行ない、1150名の従業員のうち99人を解雇するが、これで不調を押し留めることはできなかった。
同社の不調の原因は、SyQuestとよく似ている。SyQuestはDTP向け市場に行き渡った時がピークであり、他の市場を開拓できないままにDTP向け市場の消滅にあわせて消えた格好だが、Iomegaはこれを先取りしていた。
同社の主要な顧客は政府機関や一部の大企業に限られていた。価格は1990年代には695ドルまで落ちていたが、HDDはそれよりもはるかに安く、大容量になっていたため、コンシューマー向けの需要はほとんど皆無に近かった。
1993年末に同社は1450万ドルの営業損失を計上、株価は再び2ドル近辺まで下落していた。ただここから猛然と反撃に出る。市場の調査により、安価で大容量、ただし速度は遅くても良いというのが求められている製品であることが判明し、Bernoulli Diskとはまったく異なる新しい製品の開発を始める。
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