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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情第378回

業界に痕跡を残して消えたメーカー SyQuestと死闘を繰り返したIomega

2016年10月17日 11時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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 前回紹介したSyQuestと、ある意味死闘を繰り返して最終的には勝利した……と言えなくもないIomegaを今回は取り上げたい。もっとも話はかなり激しい。

Bernoulli Disk IIのカートリッジ

ベルヌーイの定理を利用した
Bernoulli Boxを開発

 IomegaはDavid Bailey氏とDavid Norton氏という2人のDavidによって創業された。2人とも元はIBMに在籍してエンジニアリングからマネジメントまで経験してきており、Bailey氏がIomegaのCEO兼社長、Norton氏が研究開発、エンジニアリング、製造、製品管理その他全部を担う副社長というポジションで、Bailey氏はともかくNorton氏のこの役職は1994年まで続いた。

 ちなみに当初の社名はDatabyte Corporationだったが、1ヵ月ほどでこれをIomegaに変更している。

 さて、Iomegaの最初の製品はBernoulli Boxである。なぜこの名前かというと、流体力学などでお世話になるベルヌーイの定理を利用しているからだ。

Bernoulli Box A220。まさに「箱」。かなり大きい

 ベルヌーイの定理は、流速が上がるほど圧力が下がるというもので、身近なところではレーシングカーがボディの下側に通す空気の速度をうまく引き上げることで、タイヤの接地圧を引き上げる(グランドエフェクトなどと言われることもある)効果を生み出している。

 Bernoulli Boxの場合は逆にディスク面とヘッドの間の流速を下げることで、ヘッドとディスクが接近すると接触しない方向に圧がかかり、ヘッドクラッシュが理論上起きないというものだった。

こちらがカートリッジのBernoulli Disk。花王の5インチFD(左上)と比較するとその奥行きがわかる

 Bernoulli Diskの中身はフロッピーディスクと同じくPET(ペットボトルの材料となるポリエチレンテレフタレート)ベースのフィルムだ。ただし、性能向上のために回転数は初期モデルで1500rpm、後期モデルは3000rpmだった。

 ちなみにFDDの場合は規格によって異なるがだいたい300~360rpmで、一部の機種には590rpmと高速なものもあったが、いずれもBernoulli Diskに比べるとはるかに低速である。

 FDDではヘッドとディスクが接したからといってすぐにどうにかなるものでもないが、1500~3000rpmで接するとメディアやヘッドを破損する可能性がある。この防止のためにベルヌーイの定理を利用したことで「原理的に接触しない」とうたった形だ。

 この方式はもともとIBMが開発しており、実用化が難しいということで放棄した技術である。2人はこの技術を拾い上げて製品化にこぎつけた。もっともIBMが放棄したのにはそれなりの理由があり、Bernoulli Diskでも実際には煩雑にヘッドクラッシュが起きたそうだ。

 さすがにヘッド側が交換になることはまれで、だいたいはカートリッジがアウトになる「だけ」だったが、そうは言ってもクラッシュしたカートリッジが読み出せないのは問題ではあった。

 話を戻すと、この原理を利用して1983年に同社が初めて世の中に送り出したのがこのBernoulli BoxとBernoulli Diskである。当初は5/10/20MBの3種類の容量がラインナップされた。

 これを生み出すまで同社は資金的にかなり苦しい状況が続いたが、製品の発売と同じ1983年には株式公開も行ない、資金はだいぶ改善した。1983年の売上は700万ドルだったが、1984年には5100万ドルに達し、営業利益も250万ドル出ている。

 Bernoulli Boxの価格は2700ドルと高価だったが、それだけの需要があったということになる。1986年の売上は1億2600万ドルまで膨れ上がった。

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