シェアを拡大するも利益が伸び悩む
Connerの戦略は、低価格の民生向け製品に特化したことだった。1989年には2.5インチHDDを初めて市場投入し、1991年におけるノート向けのマーケットシェアの85%を取っている。
売上は着実に伸びており、1991年には16億ドルもの売上を達成した。ただその一方で、低価格の民生向け製品は競争も激しく、利幅を取りにくい。16億ドルの売上を達成した1991年における利益は、わずか9250万ドルでしかなかった。
競合のSeagateやIBM(後のHGST/WD)、富士通などはサーバー向けの高価なHDDに力を入れており、こちらで利益を稼いでいたが、Connerにはこうした利益を稼げる製品がなかった。
さらに1989年にはCOMPAQのLTEノートブック(昨今の4GケータイのLTEとは無関係)向けにHDDを提供しようとしたものの、需要を読み違えてCOMPAQが望むほどのHDDを提供できず、結果として競合メーカーにシェアを持っていかれてしまう、といういう手痛い失敗もしている。
もちろん中ではいろいろやっていて、例えばChinookと呼ばれるエンタープライズ向けのデュアルヘッドのHDDを試作したりはしたものの、最終製品化には至っていない。
画像の出典は、“Wikipedia”
またAV向けの製品(連続転送性能を高めたIDEのAV向け規格対応品)や、ネイティブのIEEE1394対応HDDなど、いろいろ差別化につながりそうな製品を発表したものの、どれも結果には結びつかなかった。
HDDそのものでも、競合メーカーがデスクトップ向けに7200rpmの高速品をラインナップしてきた時も対応が遅れ、ZBR(Zone Bit Recording:記録密度を高めるため、プラッタの内周と外周で記録bit数を変える方式)の対応も最後に近かった。
同社のメインである低価格帯向けにはこうした特長は要らない、という判断だったのだろうが、長期的には商品価値を損なう方向に作用するのは必然である。
こうした主力製品の不調を補うべく、1992年には1.8インチのリムーバブルドライブを商品化したり、1993年にはArchive Corporationを買収してテープドライブのビジネスに乗り出したりしたが、結果的にはこれらも全然助けにはならなかった。
SeagateがConnerを買収
かつての上司が部下を救う
1995年11月13~17日にLas Vegasで開催されたCOMDEX Fall 1995で、かつての上司であったShugart氏とConner氏が一緒にいるところが目撃され、噂が飛び交い始めた。
果たして同年11月19日に、SeagateがConnerと合併することが発表され、1996年にConnerが買収される形になった。買収は株式交換で行なわれ、総額45億ドルという金額になった。
この買収で、SeagateはConnerの持つプラッタ製造設備やドライブ製造設備、それと低価格製品のマーケットシェア(Seagateはこの時点では低価格帯がやや弱かった)を手に入れた形になるが、実際のところはかつての部下を上司が救った、というあたりが正確なところかもしれない。
Connerは1993年は4億4500万ドルの赤字を出しており、1994年は23.6億ドルの売上と1億970万ドルの利益を出すところまで復活はさせたものの、すでに経営陣がぼろぼろ離脱している状況だったため、この先の展望が見えなくなっていたのは事実である。
買収金額が高いか安いかは微妙な線だが、買収発表後のニューヨーク証券取引所でのSeagateの株価は2ドル落として45.25ドルというあたりで、市場の評価は妥当といったあたりだったと思われる。
Conner氏は買収のタイミングで離脱し、Conner Technology Corporationを立ち上げた。今度は製造をインド(中国という話もある)に委託する形で、同社は企画と販売/サポートに徹する、ということだったらしいが、やはりうまく行かなかったようだ。
ちなみにWikipediaによればConner Technology Corporationは1998年中に営業を終了したとあるが、Internet Archiveを見る限り2000年まで運営されていたようだ。実際国内にも2001年に若干であるが、このConner Technology Corporationの製品が入荷しているが、それで終わりであった。
ちなみにConner氏はこの後、暗号化ストレージカードを製造するStorCard, Inc.を設立したのだが、どうもここは2014年で店じまいした模様だ。その代わり、このStorCardの技術を生体認証に応用したと思われるBluStor という会社を設立しており、現在もここのCEOを務めている。
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