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業界人の《ことば》から 第209回

在庫持てない駅構内の”狭さ”も強みに、アシックスのユニークな販売

2016年08月16日 12時30分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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在庫を置かない販売方法

 販売方法もユニークだ。

 基本的には在庫を置かないため、展示陳列品の購入はできるが、それ以外はEコマースでの購入スタイルを採用している。実販売とEコマースによる販売比率は約半分ずつを想定している。

 Eコマースの販売方法では、パナソニック「光IDソリューション」技術を採用しているのが特徴だ。同技術は、これまで展示会やイベントなどでは公開されてきたが、常設の小売業態で導入したのは今回が初めてのことになる。

 アシックスのロゴマークなど、店舗に設けられた3ヵ所の光ID発信ポイントに、専用アプリをダウンロードしたスマートフォンをかざすと、アシックスのECサイトである「アシックスオンラインストア」がわずか0.3秒で自動表示。店内にある商品の特徴やコーディネート提案などのより詳しい情報を受け取ることができ、そこから商品を購入することができる。

 パナソニック東京オリンピック・パラリンピック推進本部の北尾一朗副本部長は「今回パナソニックは、先駆的な店舗を技術でサポートをする。常設店舗では初めて採用されるものである。2020年に向けて、東京オリンピックのスポンサー同士で連携を図る」とした。

 さらに店舗外面には、二次元バーコードが表示されたパナソニック製の大型デジタルサイネージを設置。55型を6面使用したこのサイネージに表示される二次元バーコードをスマートフォンなどで読み取ると、同様に店舗で販売する商品の詳しい情報を受け取ることができ、その場で注文できる。

スマートフォンで、店舗外面に設置されたサイネージのバーコードを読み取ることで、注文できる

 西前社長は「駅構内ということもあり、多くの在庫を抱えることができない環境にある。パナソニックとの協業によって、新たな販売形態を確立し、Eコマースの拡大につなげることができる。在庫を持たないことはネガティブな要素だが、新たな工夫によって、ユーザーにも利便性が提供できる」とした。

 スマホで購入した商品は4~7日で自宅に配送され、手ぶらで帰ることができる。

サイネージは情報発信の役割も

 なおデジタルサイネージには、ニュースや天気予報、その日にあった出来事の情報などを配信し、店舗の前を通る駅利用客に対し情報発信を行なう。

 「毎日この場所を通勤や通学で利用する人に、商品を見て購入してもらうことができる。在庫がない取り寄せ品についても、店舗での受け取りであれば一両日中に様子することもできる。さらに京急品川駅は、羽田空港や成田空港へのルートであるとともに、東海道新幹線の乗換地点でもある。観光客の方々にもこの店舗を利用してもらいたいと考えている」とする。

 京浜急行品川駅を利用する1日26万人の通勤、通学などの駅利用者、新幹線や飛行機、電車を利用する観光客やビジネスパーソン、観光やビジネスで訪問した外国人観光客、品川駅周辺の約 7000 室のホテル利用者などが対象になり、「品川駅はこれからも利用増加が期待される場所である」とした。

 アシックスは中期経営計画「アシックスグロースプラン2020」を展開。ここで打ち出している「DTC(Direct to Consumer)マインドへの転換」、「顧客基盤の拡大」、「一貫したブランディング」、「差別化されたイノベーションの創出」、「卓越したオペレーションの追求」、「個人とチームの成長」という6つのコア戦略のすべてを包括したのが、「アシックスステーションストア品川」であるとする。

 「お客様にとって利便性の高い、新しいタッチポイントとなる場所を設け、アシックスブランドを絶えず新鮮な情報として発信する。これが会社やブランドの成長につながる新たな一歩になる。駅のホームという場所でお客様と直接的なコミュニケーションを図るという、アシックスにとってのパイロットケースであり、チャレンジである。日本ならではの新たな取り組みであり、アシックスの先駆的な事例になると確信している」と語る。

年商1億円目指す

現在はオリンピック期間のため、ユニフォームのレプリカなどを販売している

 そして「今後も新規流通の拡大、IoTの推進など、アシックスのブランドとの掛け合わせを行ないながら、人が行き来する場において、様々なフィールドで展開していきたい」と語った。

 これまでにないメーカー直営店に西前社長は、強い意思で取り組む姿勢をみせる。アシックスステーションストア品川は、年商1億円を目指す計画だ。

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