シン・アナゴゴハン
もし環境の変化で資源減少に歯止めがかからないのなら、人にできることは多くない。できることのひとつは人工的に増やすことだ。
しかし、アナゴの養殖はウナギ以上に難しい。研究室レベルとはいえ、卵からの完全養殖に成功しているウナギに対し、アナゴは卵すら発見されていないのだから。そして現在のアナゴ需要の多くは、中国や韓国からの輸入でまかなわれているのだ。
そこに「うなぎ味のナマズ」で有名な、あの近畿大学水産研究所が、稚魚からのアナゴ養殖に成功。それを受けて、大阪府の泉南市は近大の技術によるアナゴ養殖プロジェクトを発動した。これには大いに期待したいところ。
一方、大田区産業振興協会は「大田のお土産100選」という公募事業を展開中。4年後の東京オリンピックを控え、各自治体は国内外に発信できる名産品を作れないかと模索しているらしいが、おそらくその一環だろう。谷啓製作所も「あなごごはん」で、それに応募している。
ただ、増久さんが使っているアナゴは、東京湾をはじめ日本各地で水揚げされたもの。ピュア太田産とは言い難いことから、審査に残るか若干の不安もあるらしいが、それもアナゴの供給量を考えればやむを得ない。むしろ地元の食文化を、入手可能な材料で維持し続けているところに意味があるのだし、それは失われた歴史への批評にもなっているのではないか。
そして、映画も観ずにここまで読んでしまった人は、迷わず映画館へ行き、ぜひシン・ゴジラをどうぞ。約束です。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ