アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSJ)は7月28日、「Amazon Aurora」や「Amazon RDS(Relational Database Service)」などのデータベース関連サービスを中心とした、今年4月以降の機能強化に関する説明会を開催した。
NFSでファイルアクセスできる「Amazon EFS」の一般提供開始
説明会ではまず技術本部 本部長の岡嵜禎氏が、データベース関連以外のサービスアップデートを紹介した。AWSサービスの新機能追加件数は年を追うごとに加速しており、一昨年の2014年は年間で516件、昨年2015年は722件に達している。今年も6月時点ですでに360件を超える機能追加が発表されている。
米国時間6月29日には、これまでテクノロジープレビューとして提供されてきた「Amazon EFS(Elastic File System)」が、米国東部、米国西部、欧州の3リージョンで一般提供開始(GA)となった。このEFSは、NFS v4経由でファイルアクセスできるストレージサービスで、EC2上のLinuxサーバーからマウントして利用できる。
岡嵜氏は、これまで提供してきたオブジェクトストレージの「Amazon S3」やブロックストレージの「Amazon EBS」と比較しながら、EFSの特徴やメリットを説明した。特に、複数のサーバーからアクセスでき、同時にAPI経由ではないため既存のアプリケーションも容易に対応できる点が、S3やEBSではカバーできなかった特徴となる。
「先日、EFSについての技術セミナー(Webセミナー)を開催したが、参加者も質問件数も非常に多かった。ユーザーの期待は高い」(岡嵜氏)
EFSの東京リージョンでの提供開始時期は未定だが、顧客からの要望が多いことも鑑みて早期に展開したいと述べた。
そのほか、6月27日には世界13番目のリージョンとして、インドに「アジアパシフィック(ムンバイ)リージョン」を開設した。同リージョンは2つのAZ(アベイラビリティゾーン)を備える。岡嵜氏は、来年にかけてさらに5つのリージョンを新設する予定だと説明した。
Aurora/RDSの機能強化とDBマイグレーションサービス
続いてAWSJ 技術本部エンタープライズソリューション部 部長/シニアソリューションアーキテクトの瀧澤与一氏が、MySQL互換の高速RDBMSであるAmazon Aurora、マネージドRDBMSサービスであるAmazon RDS、さらに既存データベースからの移行(マイグレーション)サービスについて、最新の機能強化を紹介した。
Auroraは、MySQL 5.6との互換性を持たせながらAWSが再設計、開発したRDBMSエンジンで、MySQL比で約5倍のスループットを発揮する高速性、それにより既存のノード数を削減できるコスト効率性、3つのAZにデータを保存することによる耐障害性、必要に応じて利用開始後でも柔軟にDBサイズを拡張していけるスケール性などが特徴だ。
最近リリースされたAuroraの新機能としては、異なるリージョン間をまたいでレプリケーションを可能にすることで、DR(災害対策)やリージョン間のDB移設などに対応する「クロスリージョンリードレプリカ」サポート、Aurora DBのスナップショットデータを他のユーザーアカウントにも共有できる「スナップショット共有」、非暗号化Auroraクラスタから暗号化クラスタを簡単に作成、移行できる機能などがある。
また、既存のMySQL環境で取得したバックアップデータから、Auroraクラスタが作成可能になっている。MySQLからAuroraにレプリケーションできる機能と併せて利用することで、アプリケーションを停止することなく、MySQL→Auroraのマイグレーションが簡単に実行できる。
主要RDBMSのフルマネージドサービスであるRDSでも、各RDBMSに対応した機能アップデートが行われている。
RDS for SQL Serverでは、複数のAZへのミラーリングを可能にする「Multi-AZ」機能が、新たに東京(およびシドニー、サンパウロ)リージョンでも利用可能になった。またRDS for SQL Serverインスタンスから、DBのバックアップをS3のバケットに保存できる機能も追加されている。このバックアップから、別のSQL ServerインスタンスやオンプレミスのSQL ServerにDBをリストアできる。同様に、オンプレミスSQL ServerのバックアップをS3に配置して、SQL Serverインスタンスとして復元することも可能。
そのほか、RDS for MySQLでは数クリックでバージョン5.6から5.7へバージョンアップできる機能が、RDS for PostgreSQLではクロスリージョンレプリケーションの機能が、それぞれ追加されている。
DBのマイグレーションを支援する「AWS DMS(Database Migration Service)」および「AWS SCT(Schema Conversion Tool)」についても、一部に新機能が追加されている。
DMSは、AWS上あるいはオンプレミスにあるDB(ソースDB)から、AWS上の新たなDB(ターゲットDB)へのDBレプリケーションを行い、アプリケーションを停止することなく移行をサポートするサービス。たとえば“Oracle DBからAuroraへ”など、異なるDBエンジン間でのマイグレーションも可能にする。
今回、新たにDB間のレプリケーション手法として「Replicate ongoing changes(CDC)」が追加された。これは、ソースDBのトランザクションログを参照して、新たに更新されたデータ(差分データ)をターゲットDBに常時反映していくもの。従来は、ソースDBに直接アクセスしてデータを取得、ターゲットDBにデータをロードするフルロード方式のみだったが、CDCの場合はソースDB側に大きな負荷をかけることなく移行の準備ができる。フルロードしたあとに、CDCを適用することも可能。
これに、DBスキーマやコード変換を行うSCTツールを組み合わせることで、柔軟かつ確実なDB環境のマイグレーションが可能となる。
瀧澤氏によると、DMSは今年1月からテクニカルプレビューを開始したが、すでに2000を超える顧客がDMSを使ってAWSクラウドに移行したという。特に、コストメリットなどを考えて、既存のOracleや他のDBからAuroraへ移行するパターンが多く、Auroraは「AWS市場最も成長の速いサービス」になっているという。
Auroraの国内採用事例として、AWS移行に際してニュースサイトの記事データなどを格納するDBにAuroraを採用した毎日新聞社、RDS for MySQLからAuroraへの移行でWebトランザクションのレスポンスを3倍高速化(平均15ミリ秒から5.5ミリ秒へ)し、ノード数削減によるコスト節減も実現したGrani、10TBに及ぶRSSリーダー用の記事データを5系統(15台)のMySQLサーバーから1系統のAuroraに集約したドワンゴなどが紹介された。
「データレイク on AWS」という新たな動向
ビッグデータ領域における新たな動向として、瀧澤氏は、クラウド上で「データレイク」の実現を検討する顧客も出てきている、と紹介した。クラウドならば事実上無限にデータを蓄えられるうえ、データ分析にも必要に応じて、その都度多様な分析サービスを適用できるからだという。
瀧澤氏は、AWSではデータの収集から保存、分析、可視化まで多様なサービスラインアップを揃えており、分析処理もスケールアウトにより高いパフォーマンスで実行できることなど、そのメリットを語った。