世界初の24時間無料電話サポートなど
サポート面を強化し、価格以外でも勝負
Zeosは必ずしも価格競争力だけを売り物にしたのではなく、むしろ技術力や信頼性を差別化の要素としていた。たとえば同社の電源の供給能力は、競合製品と比較すると50~100%ほど高いことが多かった。
これは価格を抑えたマシンは電源のコストを限界まで下げていることが多く、結果いろいろ色々拡張すると電源の供給能力不足で動作が不安定になることが少なくなかったからだ。
あるいは、初期には同社はI/O拡張ボードをトータル13社から供給を受けていたそうだが、品質の点で満足できないということで、結局自社で製造することにしている。
もちろん全部の部品を自社でまかなう(たとえばHDDやモニター、ビデオカード)のは不可能であるが、そうした場合にも品質の高いベンダー(モニターはNEC Americaから供給を受けていた)を選ぶというポリシーを取っていた。
さらに同社は24時間の無料電話サポートを提供した最初の会社でもある。実はこの電話サポートも同社の武器の1つである。同社はテクニカルサポートの質を上げるべく、さまざまな工夫を凝らした。
そのうちの1つには、ファジイ理論とハイパーテキストを利用した電話サポートの支援システムを自社で開発し、これで顧客からの質問に対する回答を見つけるまでの時間を短縮したとする。
また自社でCBBS(Computerized Bulletin Board)という電子掲示板を提供し、顧客が直接ここから情報を得ることも可能にした。
そのうえ、同社は注文から出荷までの時間の短縮と、出荷のトラッキングシステムをかなり早期に実現したメーカーでもある。
1990年12月以降、同社の製品は注文から出荷までが数日のオーダーに短縮された。今日でも、一部のショップブランドPCやメーカー製PCの中にはオーダーから出荷まで数週間ということはあるし、1990年当時はこれが普通だった。
さらに言えば、いつ届くかは「届くまでわからない」のが常態だった。昨今では製造工程と輸送システムの高度化で、かなり細かく追跡が可能になっているが、同社は電話経由でオペレータが答える形ではあるが 1990年にこれを実現している。
Youtubeに同社の1990年代のCMがあがっているが、この内容も製品というよりは技術サポートや電話サポートなどに力点を置いたものになっているあたり、同社がこの部分にどれだけ自信を持っているかを伺わせるものである。
余談ながらこのコマーシャルの冒頭で“Come on”と言いながら部屋に手招きし、その後41秒あたりから“Bye bye”と手を振っているのが、創業者兼CEOのHerrick氏である。
こうした「価格以外」の品質と技術力の高さを武器に、同社は米国でシェアを増やしていく。1988年の売り上げは1180万ドル、利益は23万5千ドルとささやかなものだったが、1989年には売り上げが3740万ドル、利益は170万ドルに。1991年にはそれぞれ1億2700万ドル、420万ドルと急速に規模を拡大していった。
この当時のZeosがどのように認識されていたのかについて1つデータがある。これはPC Magazineの1992年12月8日号のものだが、同社の8592人の購読者から、サービスや信頼性に関するアンケートを取った結果である。
画像の出典は、“Google Books”
メーカーの信頼性ではGateway 2000に次いで2位、修理サービスでの満足度は1位、テクニカルサポートの満足度でも4位と、かなり高い位置にあることがわかる。同社は価格よりも、むしろこうした信頼性が大きな武器であった。
もう1つの同社の武器は、ノートPCである。写真を探していたらなぜかロシアのサイトにあったのだが、同社はかなり早くから386/486ベースのノートPCもリリースしている。
こちらはデスクトップに比べると出荷数量こそ少なかったが、価格は当然高くなるわけで、売り上げとしてはデスクトップと並ぶまでにはいかないものの、無視できないものがあった。
さらに同社はサブノート(あるいはミニノート)と呼ばれる市場にも進出している。1992年に投入されたPocket PCは、HP 95LXよりは一回り大きいものの、むしろキーボードが大きくなって打ちやすいという評判もあり、価格も595ドルと少し安い(HP 95LXは699.99ドルだった)こともあって、米国の愛好家には好評だったと記憶している。
画像の出典は、“Obsolete Technology”

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