日本各地のかっこいい技術・施設を取材する超不定期連載「日本各地のかっこいいスポットを愛でる」。思いっきり久しぶりの今回は核融合炉を取材してきた。
核融合発電は次世代発電技術のひとつであり、現在、基礎研究が進められている。ワードとしては前世紀からSF作品やアニメではおなじみで、MS-06F(ザク)のことが脳裏に浮かんだ人もいるハズ。
核融合炉にはいくつかの方式と種類があり、今回は磁場閉じ込め方式を採用するヘリカル型核融合炉になる。取材先は岐阜県土岐市にある自然科学研究機構 核融合科学研究所(National Institute for Fusion Science)で、核融合炉設計のためにプラズマ制御基礎実験を行なっている施設だ。
まだまだ研究段階の核融合発電
核融合発電は、研究段階の発電技術。いくつかの方法が考案されている状態で、世界各地で実験が行なわれており、核融合を効率よく起こすために、プラズマをどう制御するか、そもそもよくわかっていないプラズマの性質を研究している段階でもある。
今回取材した核融合科学研究所は、発電実証実験はしておらず、高温のプラズマを制御する技術を重点的に研究している施設だ。核融合炉は国際規模で開発されており、核融合科学研究所は、日本の代表的な研究機関として世界最先端の研究を行なっている。
プラズマを閉じ込めるにはいくつかの方法があり、核融合科学研究所にあるヘリカル型は「磁場閉じ込め方式」に属し、他にもトカマク型や磁気ミラー型、逆磁場ピンチ型、逆転磁場配位型がある。キーとなるプラズマをどう閉じ込めるかでカテゴリーが分かれているという認識でいい。
また磁場ではなくレーザーやビームによる「慣性閉じ込め方式」も存在しており、レーザー核融合や荷電粒子ビーム核融合などあり、「磁場閉じ込め方式」と「慣性閉じ込め方式」のハイブリッド仕様の磁気絶縁方式慣性核融合も登場している。
最もわかりやすい核融合炉は、やはり太陽だろう。太陽の場合は重力の強さもあり、1500万度で核融合が起きている。しかし、地球上で再現しようとすると、太陽より重力が弱く必要な条件を揃えられない。
そこでプラズマを閉じ込めるいくつかの方式が提唱されているわけだ。ちなみに太陽と同じ仕様で核融合を地球上で実現しようとすると、約50億度までプラズマを加熱する必要がある。
どの方式においても、発電の燃料は核融合が生じる条件の緩い重水素と三重水素で、これらは海水とリチウムから作ることができる。
核融合科学研究所によると、海水3Lとリチウム0.3gだけで日本の1人あたりの年間電気使用量分を得られるとのこと。
リチウムは、2014年に海水から生成する技術が確立されているため、実質の原料は海水のみ。また燃料はすべて反応するわけではなく、それをまたリサイクルして核融合炉に投入する仕組みも前提で研究が進んでいる。
核融合科学研究所では、現在、水素ガスを利用してのプラズマ制御基礎実験を行なっており、次期実験からは重水素ガスを用いた高性能プラズマ制御実験にシフトするとのこと。