ネットワーク管理の基本、pingコマンド
ネットワーク管理者を目指すならば最初に知るべきコマンドが「ping」。ネットワーク管理者向けの入門書を開けば必ず出てくるコマンドだ。このコマンドを使いこなすことから、ネットワークトラブルシューティングは始まると言っても過言ではない。
pingは、円滑なTCP/IP通信を支え、エラーメッセージを伝えてくれる「ICMP」(Internet Control Message Protocol)というプロトコルを用いたコマンドだ。手元の端末と宛先に指定したIPアドレスとの間がネットワーク的に到達可能かどうかを確認し、応答時間とともに示してくれる。
使い方は簡単で、Windows PCならばコマンドプロンプトを立ち上げ、
ping xxx.xx.xx.x
と入力するだけだ。もし「Destination net unreachable」「Request timed out」などのエラーメッセージが返ってくれば、ネットワーク設定に不備があったり、通信先のサーバがダウンしていることが分かる。その場合は「tracert」(traceroute)コマンドを用いて目的のIPアドレスまでのネットワーク経路を示し、どこがボトルネックになっているかを絞り込み、詳細な原因究明と対応に入ることになるだろう。
しかし、特定の一台の端末だけでなく、複数の端末や機器を対象に確認を行いたい場合にはどうすればいいだろうか? トラブルの影響範囲を見定める場合はもちろん、対処後に問題を解消できたことを確認し、安心して使えることを示す上でも、複数のデバイスを対象にpingを実行できれば越したことはない。
だが、一台一台IPアドレスやホスト名を指定してpingを実行するのは面倒だ。おそらく多くのネットワーク管理者は簡単なスクリプトを書いて自動化しているだろうが、それはそれで手間がかかるし、スクリプト自体の共有やメンテナンスも難しい。
複数の端末に一斉にpingを実行できる「Ping Sweep」
そうしたときに役立つツールがある。ソーラーウインズが無償で提供しているネットワーク管理ツール群「スタンダード・ツールセット」に含まれている「Ping Sweep」だ。
Ping Sweepは、特定のIPアドレスレンジに対して一斉にpingを実行できるツールだ。入力ボックスに調査したいIPアドレスレンジを指定するとコマンドが実行され、各IPアドレスごとにレスポンスタイムが一覧表示される。同時に、DNSのルックアップ結果も表示される。しかもこれらの結果は、一定時間保存可能で、CSVやXLS、テキスト形式で出力可能だ。
この結果、何らかの問題が生じている端末とそうでない端末とが一目で把握可能だ。また、応答時間を比較することで、どのネットワークで遅延が発生しているかを絞り込み、原因追及に役立てることもできる。
ちょっと詳しい人ならば、Ping Sweepの説明を聞いて、「Nmap(Network Mapper)に含まれている『Ping Scan』に似ているな」と感じたのではないだろうか。その通り、ネットワーク調査に用いられるNmapでも、特定のIPアドレスレンジでアクティブな状態にある端末をリストアップでき、セキュリティ検査の他、サーバの可用性管理などに用いられている。ただ、Nmapを使いこなすには相応の知識が必要とされるのに対し、Ping SweepはGUI上で利用でき、まだ駆け出しのオペレータにとってもやさしいことが特徴と言えるだろう。
ちょっとした「気になる」を調査できる便利なツールも
ソーラーウインズのスタンダード・ツールセットには、他にもさまざまな有用なネットワーク管理ツールが含まれている。特定のホストやデバイスに対してPingを定期的に実行し、その結果をグラフ形式で表示する「Enhanced ping tool」もその一つだ。
Windowsのコマンドプロンプトで利用できるpingでも、「-tオプション」を付ければ連続してpingを実行し続けることは可能だが、統計結果は数字で示されるだけ。これに対しEnhanced ping toolは、複数のホストやデバイスを対象に継続的にpingを実行し、レスポンスタイムの推移をグラフ形式で把握できる。取得したデータを保存しておき、後から比較することも可能となっている。
またpingに限らず、ネットワークの異常を早期に把握するには、「平時」はどのような状態なのかを理解し、普段からこまめに監視することが重要だ。スタンダード・ツールセットには、特定のデバイスの送受信データの帯域幅をリアルタイムに示す「Network Bandwidth Gauge」や、CiscoルーターのCPU負荷をグラフ化して表示する「Advanced CPU Load」といったツールも含まれている。これらを確認することで、「あれ、何だかちょっとおかしいな」という異常の兆候をいち早くつかむことができるだろう。
もちろん、SNMPに対応したネットワーク管理ツールならば、より深い情報が収集可能だ。ただ、こうしたツールはできることが多いだけに操作も複雑で、使いこなすには相応の知識とスキルが必要となる。駆け出しの管理者にとってはやや荷が重いのではないだろうか。
これに対しスタンダード・ツールセットに含まれるツール群は、それぞれは単機能だが、それゆえにシンプルで誰でも簡単に使えることが特徴だ。Ping SweepやNetwork Bandwidth Gaugeを見て気になる兆候をアドホックで確認し、深刻な問題になりそうならば既に導入済みのネットワーク管理ツールも活用して本格的なトラブルシューティングに入る、といった具合に相互に補完し合うこともできるだろう。
日々の運用の中で、ネットワークの「息吹」を感じ、知識を磨く際のおともとして、ぜひ活用してみてはいかがだろうか。
(提供:ソーラーウインズ)