Facebookが年次開発者カンファレンス「F8」で、ネットワークインフラ関連のプロジェクトを2つ発表した。ともに途上国向けにインターネットアクセスを安価かつ迅速に提供する技術で、インターネット普及に向けたMark Zuckerberg氏のあくなき追求の一環となる。
60GHz帯を利用し
都市部で7Gbpsの通信速度を実現するプロジェクト
Google(の親会社Alphabet)もバルーン(「Project Loon」)、ドローン(「Google Titan」)、Google Fiberなどのネットワークアクセス技術を開発しているが、Facebookも負けてはいない。
F8でFacebookは「Terragraph」と「Project ARIES」の2つの地上無線アクセスシステム技術を発表した。
Terragraphは都市など人口が集中するエリア向けのマルチノード無線システム。”V-Band”と言われるライセンス不要の60GHz帯を利用し、帯域幅は最大7GHzを利用可能。ポイントは、60GHz帯向けの無線通信規格であるWiGig。WiGigはWiFiのWiFi Allianceが推進する最新の規格で、最大7Gbpsの通信速度が可能と言われている。
TerragraphはWiGigベースの無線システムを備え、既存のテレコムインフラと比較すると安価にノードを構築できるという。IPv6オンリーノード、SDNライクなクラウドコンピューティング制御、モジュラールーティングプロトコルなどFacebookのデータセンターインフラ技術も活用するという。ネットワーク効率は最大で6倍改善できるとしている。
Project ARIESのARIESはAntenna Radio Integration for Efficiency in Spectrumの略で、データ信号の効率よい伝送技術のプロジェクト。周波数帯の効率化とともにカバレージの拡大も図る。96のアンテナを搭載した基地局を利用し、同一の周波数帯で24ストリームを同時サポートできるという。現在、1Hzあたり71bpsのスペクトラム効率を実現しており、最終的には1Hzあたり100bpsを目指す。
TerragraphはFacebook本社のあるメンロパークで実証実験を行なっており、今後サンノゼでトライアルをする予定という。Project ARIESは最初のテストベットが稼働中とのこと。2つともFacebookのConnectivity Labで開発したもので、同社が推進するTelecom Infra Projectで仕様を公開する。
新興国向けにインターネット接続をInternet.orgと推進する
ただし、インドでは挫折
TerragraphとARIESはFacebook初の無線アクセス技術ではない。Facebookはすでに衛星を使ったものや、ドローンによる無線通信プロジェクトAquilaを進めている。同社の共同創業者兼CEO、Mark Zuckerberg氏によると、Aquilaは「ボーイング747ぐらいの大きさで重量は車並み」。太陽熱を利用し、赤外レーザービームを使うことで、少ない電力で光ファイバーレベルのデータ通信が可能という。2月末時点で2機目を構築中とのことだった。
これらの取り組みは、Facebookが中心となってすすめるInternet.orgの一部だ(Connectivity LabはInternet.orgの下に入っている)。Internet.orgは同社が2013年にNokia、Ericsson、MediaTek、Qualcomm、Samsungらとともに立ち上げた非営利団体。その名のとおり、インターネットへのアクセスが困難な途上国などの地域でインターネットを普及させるというものだ。
他の設立メンバーがInternet.orgをプッシュする場面はあまり見かけないが、Facebookは積極的にInternet.orgを推進している。最初の取り組みである「Free Basics」は、各地のキャリアと提携し基本的なサービス(ヘルスケア情報やビジネス関連の情報など「基本」の定義は地域により異なるが、Facebookはもちろん必須)へ無料でアクセスできるというもの。
インターネット上のサービスを体験すれば、対価を払ってでも利用するようになるだろうというのがZuckerberg氏の読みだ。アフリカ、アジア、南米の3地区で合計35ヵ国以上でローンチしている。
だが、このFree Basicsは今年初めに大きな障壁にぶちあたった。インド政府がネット中立性に反するという理由でFree Basicsを禁止したのだ。インドはInternet.orgがターゲットとする新興国市場では最大規模であり、インパクトも大きい。
重要な市場で失敗した格好だが、Zuckerberg氏は2月末のMobile World Congress(MWC)で「残念だ」としながらも、「我々は失敗から学ぶ。インドで学んだことは国により異なるということ」と持ち前の前向きさをアピール。「(Internet.orgは合計で)1900万人がインターネットに接続するのを支援した。すばらしい第一歩を踏み出している」と成功を強調した。
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