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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第149回

人々をつなげるをミッションにするFacebook、無線インフラ技術プロジェクトを発表

2016年04月21日 17時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ASCII.jp

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ザッカーバーグ氏は
「5Gよりも世界中の人々がインターネットに」

 そのInternet.orgの一環としてFacebookがMWCでローンチしたのが、先述のTelecom Infra Project(TIP)、オープンなテレコムインフラプロジェクトだ。Facebookが展開するデータセンター向けハードウェアの仕様をオープンにするプロジェクト「Open Compute Project」のテレコムインフラ版となる。Open Compute Projectにより同社は累計で20億ドルのコスト削減が図れたという。同じようなメリットをテレコムにも持ち込むという。

 無線アクセス、バックホール、コアネットワークなど、高価なテレコムインフラの価格を下げることで通信事業者らが安価にネットワークを構築するのを支援する。Nokia、Intel、Deutsche Telekom、SK Telecomなどが参加している。無料で基本的サービスへのアクセスを実現するFree Basicsと無線インフラ構築そのもののコストを下げるTIPのセットで、インターネット普及に拍車をかけようというわけだ。

 「インターネットのインフラ構築の効率を改善し、事業者のコストを下げることができれば、コンシューマーに利益を還元し、安価なデータプラン提供につながる」とZuckerberg氏はローンチ時に語っていた。

 TIPの影響については未知数だが、調査会社Strategy Analyticsでは、ネットワーク機能の仮想化のための技術NFV(Network Functions Virtualization)などの業界の取り組みとの関係、Facebookの立ち位置(インフラとネットワークに影響を与えるプレイヤーを狙うのか、オペレーターソリューションに投資する立場なのか、コモディティー化された基地局を開発するのか……)など不明確な点が多いとする。また、主要なオペレーター(VerizonやAt&T、VodafoneやOrangeなど)とEricsson、Huaweiの両大手インフラベンダーが参加していない点も指摘する。

 MWCでTIPについてEricssonの幹部に尋ねたところ、「さまざまなアプローチと取り組みがある」と認めながらも、参加についてはコメントを控えた。

 Zuckerberg氏は、MWCで「Internet.orgでの目標はインターネットの利用を支援すること。これは人々をつなぐというFacebookのミッションに通じる」と説明。「我々はインターネットサービス企業で、確立されたすばらしい広告モデルがある。Internet.orgで収益を得ようと思っていない」と主張した。

 Zuckerberg氏はMWCの基調講演で、5Gを急ぐ業界に対し、「リッチな人向けに高速な無線通信に投資して、収益を得ている」と批判した。推定資産総額446億ドル、Forbesの億万長者リストで6位につく「リッチ」なZuckerberg氏が「個人的には、世界中の人々がインターネットに接続できるようにするという役割を果たしてほしい」と呼びかけると、会場からは大きな拍手が起きた。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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