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Apple Geeks 第177回

「Windows Subsystem for Linux」はOS Xのライバルとなるか?

2016年04月15日 10時00分更新

文● 海上忍(@u_shinobu)、編集●ハイサイ比嘉

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 本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。

 UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。

Macが開発者を引き寄せた理由

 この10年ほど、Macの出荷台数は増加基調にある。iPhoneの大ヒットによりApple製品全体の認知度・イメージが向上したためか、新モデル投入のタイミングなどによる多少の振れ幅はあるものの、一貫して販売は好調なのだ。PC市場全体におけるシェアは決して高いとはいえないが、それでもジリジリと上げ続けている。

決して高いとはいえないが、PC市場全体におけるMacのシェアはジリジリと上げ続けている(参照:StatCounter GlobalStats)

 その好調を支える要因には、iPhoneなどiOSデバイスとの親和性の高さのほかに「開発環境としての柔軟性」を挙げる人は多い。Mac用アプリ開発はいうまでもないとして、同じ開発ツール(Xcode)を使用するiOSアプリの開発にはMacがもっとも無難な選択であり、他の開発プラットフォームとしても活用しやすい。

 たとえば、Webサービス/Webアプリケーション開発。LAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP/Perl/Python)という言葉があるように、WebサーバとDBエンジン、Webとの親和性が高いインタープリタ型言語を(ローカルの) Linux上で動作させることが開発環境に求められるが、Macでもほぼ同じ状態を構築できる。というより、ApacheとPHP/Perl/PythonはOS Xに標準装備されているので、DBエンジンさえ追加すればLAMPならぬ「MAMP」の一丁上がりだ。このほかにも必要なソフトがあれば、パッケージ管理システムを導入すれば自在に追加できるようになる。

 一方、Windows上でのLAMP環境構築は一筋縄ではいかない。CygwinやMinGWのように、UNIX/Linuxライクな環境(Cygwinの本来の目的は完全なPOSIX互換レイヤーの実現だが)を構築する方法もあるが、完全互換ではなく動作しない/コンパイルできないソフトウェアも多い。強力な「Hyper-V」を生かし、仮想マシン上にLAMP環境を構築する方法もあるものの、それではWindows APIとは分離されてしまう。他のアプリケーションとの連携が必要な場合は、やはりWindows APIに直接アクセスできる実装がベターなはずだ。

 そこに現れたプロダクトが、Windows 10の次期メジャーアップデート「Windows 10 Anniversary Update」。Microsoftの開発者向けイベント「Build 2016」で発表、すでにWindows 10 Insider Previewの最新ビルドで「Windows Subsystem for Linux」という形で提供されている。注目しているのはWindowsユーザーにかぎらず、LinuxやOS Xを含むUNIX系OSコミュニティにも興味を持っている方は少なくない。なぜ注目を集めるのかは、後段で説明したい。

「Xming X Server for Windows」「VcXsrv Windows X Server」など、Xサーバを用意すれば、Xクライアントも一部そのまま動作する(ただしGNOMEやKDEが動作するわけではない)

OS Xでもデフォルトシェルとして採用されている「Bash」がWindowsでもネイティブ動作する

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