今年は仮想現実(VR)の年ですね。
先日ラスベガスで参加してきたデジタルマーケティングのイベント、Adobe Summitで配られていたのは、段ボールのVRゴーグルでした。組み立ててスマートフォンをセットすると、Adobe Summitのセッションが体験できるというものです。
段ボールがなくても、スマートフォンから専用のウェブサイトにアクセスすると、スマホの加速度センサーを使って会場内の様子を疑似体験できます(関連リンク)。
基調講演会場にはGoProを360度撮影できる用に配置した全球カメラが用意されており、またレセプションなどのイベント会場各所で、360度カメラを使った静止画の撮影が行なわれ、会場に行かなかった人も、ビデオ、あるいは静止画で、イベント会場に入ったような体験ができました。
今後も、イベントのVRでの記録は進んでいくのではないかと思いますが、デジタルマーケティングの文脈でVRが試されている点には、非常に興味を持ちました。
経験すればわかるVRの可能性
VR自体はさほど新しい考え方ではなく、これまでアニメや映画でも描かれてきた技術でした。年初のCESや、オースティンで毎年開かれるSxSWでも、デバイス、コンテンツ面でその充実ぶりが見られました。いよいよだという感覚が高まっているわけです。筆者も人並みにはVRの体験をしてきたつもりです。
たとえば、Googleの段ボールにスマートフォンを差し込むVRは、最もライトなVRの実現を楽しむ事ができました。Facebookに買収されたOculusは、10分間という長いデモにクラクラ。Unityを使ったVRのデモでは、神奈川県・日吉でのハイジャンプをした風景を初めて経験しました。
また、東京では「進撃の巨人」の企画展で、巨人討伐の世界観をバーチャル体験できるVRコンテンツも経験しました。振動が伝わるヘッドフォンとの組み合わせは、かなり臨場感を刺激されました。
そして、Oculus Riftの製品版は遅れているようですが、2016年10月にはソニーがPlayStation VRをリリースし、2016年末のホリデーシーズンには、おそらく米国の量販店でも目玉商品になるのではないでしょうか。今年はAppleもなんらかの取り組みを披露するのではないか、Google GlassがVRとして復活するのではないか、なんて話も聞かれます。
でも、どうなんでしょうね。VRに慣れてしまえば、驚きは薄れるかもしれません。一方で、慣れないと、気分が悪くなったりして楽しめないという側面もあります。もう少したくさんの経験をする必要があること、若い世代はよりすんなりと受け入れるのだろうな、ということもわかりました。
見る技術と、撮る技術
人の感覚を新たなものにする技術、というのはやはりインパクトがあります。VRがどれだけの規模のものになるか分かりませんが、直近で最大級のそれは、モバイルだったのではないかと思います。
ただ、その技術がインパクトを持つまでには、様々な要素における発展が必要になります。モバイルの場合、通信の高速化とデバイスの性能向上、そしてアプリプラットホームの普及という環境が整備された上で、人々が動きながら仕事をしたり、問題解決に取り組む仕組みが作り上げられました。
日本人は1999年からモバイルでインターネットを利用をしてきましたが、世界的にモバイルが重視されたのは、2010年以降でしょう。2008年にiPhoneにApp Store環境が用意され、徐々にそのインパクトが拡がっていき、モバイルアプリによる大きな変化が、様々なものに対して起きるようになった。そんな振り返りができます。
技術が身近になり、そこにめがけて様々な取り組みが生まれ、生活の中に溶け込んでいく。VRについてもそんな時代を迎えることになるのでしょう。
VRは現在見る技術の顕在化が充実しているように思います。どのようにコンテンツを作るか、どのように現実を撮って経験できる形に変えるかという部分も充実してきました。前述のUnityのように、3D空間を作ってその中を動き回れるようにしたり、実空間を360度カメラで静止画もしくはビデオ収録して、疑似体験ができるようになってきました。
ただ、モバイルアプリのようなプラットホーム感は欠けます。GoogleやAppleが、空間の定義や再現方法について、アプリ的に規格を決め、開発者がそれを活用してコンテンツや空間を量産するようになるのを待つべきでしょうか。
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