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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第110回

Adobe Summitで体験した、マーケティングとしてのVR

2016年04月07日 13時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII.jp

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VR体験もマーケティング情報にするAdobe

 さて、Adobe Summitカンファレンスの話に戻ります。

 Adobe Summitのコンセプトには、「マーケティング」というキーワードが必ず含まれてきました。しかし今年は「エクスペリエンス」、体験というキーワードに切り替わりました。顧客体験を中心に据え、マーケティングを経営ごとに変えよう、というアイディアが込められていました。

Adobe SummitでVR企画を担当したBrad Robins氏。Creative Cloudでコンテンツ制作を行い、Marketing Cloudで計測する、AdobeのプラットホームのVRでの活用に注目してほしいという

 顧客体験の中心は現在、モバイルに置かれています。モバイルでのウェブやアプリ体験、これと店頭での体験をいかに組み立てて、顧客の期待に応えていくか、その方法をマーケティングツールを使って見つけ出そう、というのが、カンファレンス全体を通じたメッセージになっていました。

 顧客体験は、必ずしも驚きを与えたりする必要はないと言います。それよりは、フォームをあらかじめ埋めておくとか、必要な情報を必要なときに供給するといったご用危機的な役割をデジタルで果たしていくことの方が、日常に対するインパクトは大きいでしょう。

 AdobeがデジタルマーケティングのイベントでVRを持ち出した理由は、同社が掲げるテーマ「エクスペリエンスビジネス」のなかで、新しいメディアであるVRをカバーできる点をアピールしたかったからではないか、と思います。

 そして、Adobeが作ったVRコンテンツは、他のウェブサイトと同様、顧客がどのような体験をコンテンツ内で経験したか、という点を克明に記録していくと言います。今まではマウスでどこをクリックしたか、スマホでどこをタップしたかという情報でしたが、VRでは、どの空間に長くいたか、なにを見ていたか、といった情報が得られます。

 顧客にとっては、お店やイベントの仮想体験ですが、提供する側のブランドやメーカーなどの企業にとっては、顧客がその空間でどんなことに期待しているか、何を楽しんでいるかを知ることができるわけです。

 その話を聞いた瞬間、VRはもっと伸びるんじゃないか、もっと活用が進むのではないか、というイメージを持つことができました。Googleも、仮想体験のGoogle Analyticsを早く用意すべきだし、Appleは仮想体験のプライバシー保護に取り組むべきだと思います。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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