鴻海はシャープのディスプレーに惚れ込んでいる
郭会長兼CEOは、「破談になることは、99.999%ないと考えている。破談になる理由も見当たらない。だが、万が一のことを考えて、破談となった際に、鴻海はシャープのディスプレー事業を購入する権利を得られることを盛り込んでいる」とする。
この条項を最後に盛り込んだことをみると、仮に破談になったとしても、鴻海は、どんなことがあっても、シャープのディスプレー事業を手に入れたいという思いがあることが、透けて見える。もっとも手に入れたいのがディスプレー事業であるというわけだ。
今回の出資によって得た資金は、研究開発や設備投資などに振り分けられ、具体的には、有機ELの事業化に向けた技術開発投資や量産設備投資などで2000億円、中小型液晶を中心とした高精細化や歩留まり改善投資、ディスプレーの次世代開発投資、増産および合理化投資に合計で約600億円を投資。さらに、IoT分野の業務拡大など、コンシューマ製品分野でのビジネスモデル変革などに400億円を投資することを発表している。
だが、この数字は、約1000億円の出資金額減少を盛り込んだものであり、当初の見込みと比べると、有機ELへの投資以外は、すべて減額している。つまり、見方を変えれば、ディスプレー事業への投資は減らさない姿勢が明確であり、ここからも、鴻海がディスプレー事業を重視していることがわかる。
郭会長兼CEOは、「ディスプレー産業は、技術変化の重要なタイミングに入っている。日本において、新たな技術開発に投資したい。この投資を躊躇するわけにはいかない。競争の土俵が変わるタイミングにおいて、新しい技術に目を向けて行く必要がある。次世代技術で勝つのは、いち早く動いた企業である」などと述べ、有機ELへの投資を加速する姿勢をみせる。「世界の主要な有機ELディスプレーサプライヤー」を目指すことを打ち出している。
だが、今回の会見で、有機ELよりも力を注ぐ姿勢をみせたのが、シャープが持つIGZOだ。
「シャープのIGZOは世界トップの技術である。様々な技術蓄積があり、これを生かすことで、今後のコスト削減や小型化が可能になる。私がエンジニアであれば、IGZOを押したい」と発言した。
会見場では、郭会長兼CEOの横に、85型の8Kディスプレーを設置。IGZOとの組み合わせによって、鮮明な画像を実現していることを示した。
「このように、8Kディスプレーは、66歳の私でも若々しく映しだしてくれる。2020年の東京オリンピックには、世界中の人たちがこの技術を使ってオリンピックを楽しむことができる。これを、シャープと一緒に世界中に紹介できることを誇りに思っている」などと語った。
郭会長兼CEOは、会見の最後の最後までIGZOという言葉を繰り返した。有機ELだけでなく、IGZOに対する惚れ込み具合が並々ならぬものであることを示した格好だ。
会見では、「シャープの強みは、ディスプレー事業だけでなく、白物家電やIoTなどにも広がっている」と、付け加えてみせたが、ディスプレー事業に対するこだわりが強いのは明らかだ。
鴻海傘下での再建において、ディスプレー事業以外の事業が後回しになることは避けてほしい。
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