日本のITを変える「AWS侍」に聞く 第20回
リブートの原動力はIoTのワクワク感と指にとまった仲間たち
コミュニティ発のIoTで関西を沸かすJAWS-UG京都の辻さん
2016年04月08日 07時00分更新
ハンドルグルグルで風船が膨らむ萌えキャラも登場
デビューとなる「Cloud Days 2016 大阪」では擬人化キャラで遊べるゲームまで作った。ハンドル回すと、萌えキャラ(いおたん)の持っている風船が膨らむというゲームを披露し、実際に多くの来場者が楽しんだ様子。仕組みとしては、ハンドルを回すとダイナモが回り、発電してニクロム線を熱するので、それをセンサーが熱を関知して、クラウドに投げるというもの。リアルタイムで反応し、1~2秒くらいで描画されるのが特徴だという。
「IoTってなんだかようわからんという人が多いんです。でも、グラフだけ表示しても、正直素通りされる(笑)。だから、まずは体感して欲しいし、想像してもらいやすいと思って作りました」とは辻さんの弁。楽しみながら、IoTを理解し、サービスのメリットを知ってもらうという一工夫は、クラウドエンジニアならではのアイデアと言えるだろう。
エンジニアの辻さんにとってIoTは未知の可能性を秘めたもの。「僕自身、無限の可能性は感じるが、これや!というものはまだない。でも、今までできなかったことがすごく簡単にできるのは事実」と辻さんは語る。デバイスからのデータをクラウドに上げて、地球の裏側でも見られるというのはすごいこと。しかも、大学時代に電子工作をやっていた経験からすると、やっぱり面白い。この未知のワクワク感が辻さんのIoTへのモチベーションにつながっている。
IoTの開発とビジネス創出にコミュニティが貢献できる
さて、めでたくAWS Samurai 2015を受賞した辻さんだが、JAWS歴は浅く、2014年秋の勉強会が初めて。その後、2015年のJAWS DAYSに参加し、衝撃を受けた。「やはり熱量ですかね。この会場を埋めるために、これだけ多くの人たちが一生懸命やってるんだというのに感動して、僕もやってみたいなと思ったのがきっかけ」と辻さんは語る。
最初はJAWS-UG大阪で受付をやっていた程度だったが、そのうち「自分で立ち上げても面白いかな」と思いだし、休眠状態だったJAWS-UG京都をリブートさせることにする。会社の同僚や知り合いとともに、2015年10月にやったリブート後初の勉強会は平日の夜にもかかわらず60人が集まった。「京都で60人近い参加者が集まるコミュニティはなかなかない。立ち見が出た状態で、また衝撃を受けた」ということで、年始に2回目を実施し、今年の5月にも3回目を実施する予定。
また、昨年12月にはJAWS-UG関西IoT支部を立ち上げ、第1回の勉強会ではマクニカの協力を得てIoTハンズオンを実施した。とはいえ、「マクニカさんにいいセミナーをやっていただいたのですが、正直動かしてみたというところまでしか行かなかったし、クラウドからデバイスまで勉強するのは相当な熱量が必要だということがわかった」という反省もあり、ストーリーを持ったIoT勉強会の必要性を実感したという。
IoTの開発には、デバイスやネットワーク、クラウドなどフルスタックと呼ばれるようなさまざまな技術が必要になる。これら異なる分野であまり交わらないエンジニア同士を、コミュニティでつなぎあわせることで、新しいものを作る。そして、作ったモノは会社に持ち帰って、研修に使ったり、新規ビジネスの昇華させていく。こうした流れがまさに辻さんの考えるコミュニティとIoTの「ストーリー」だ。
こうした想いから生まれたのが、関西の複数のIoTコミュニティを束ねた「IoTリレーハンズオン」だ。3月21日は関西おうちハック主催で、まずは大阪の日本橋でデバイスを購入。次の3月26日はSORACOMでつなぎ、MQTTでクラウドにデータを投げるところまでをSORACOM-UG関西が担当。4月9日はJAWS-UGの関西IoT専門支部が担当し、デバイスからのデータをDynamoDBに取り込み、IoT.Kyotoで可視化するところまでを行なうという。
辻さんは、「IoT.kyoto VISもコミュニティで使ってもらいたいという思いもあり、立ち上げたようなもの。プロトタイピングはすごく重要だけど、そこに時間かけちゃダメ。さくっと作って、どのようにビジネスをドライブしていくか考えるのに時間を割くべきなので、ある程度テンプレート化できるプロトタイプ作りをコミュニティ側で貢献できるかなあと」とイベントの趣旨を語る。
企業にコミュニティの価値を実感してもらえるように
この半年間、まさに垂直立ち上げに近い勢いでJAWS-UG活動をリビルドした辻さん。「(支部長の)金春さんから圧力かかったのもありましたけど(笑)、やっぱりジョインしてくれる仲間が多かったのが大きい。この指止まれやったら、メンバーがいっぱい集まってくれた」と語る辻さん。IoTのような旬なテーマを掲げ、エンジニアを惹きつけ、ビジネスに巻き込むまでをテーマに載せたのがコミュニティ活性化の鍵のようだ。
しかし、コミュニティ活動に理解を示す企業はまだまだ少ない。「一部のメンバーがワイワイやっていても、周りの社員や幹部の関心が薄いといったことは多い」と辻さんは語る。こうした企業にコミュニティの価値を感じさせるのが、辻さんの次の目標だ。
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