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IoT&H/W BIZ DAY by ASCII STARTUP 第17回

Cerevo岩佐×VAIO中田 IoT/ハードウェアの”生産”を語る

シャープ買収の衝撃 日本が出遅れた「作り手市場」の逆転

2016年04月13日 07時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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中国は早い、フレキシブル、細かいお金に文句を言わない

── ハードウェアスタートアップとしてもCerevoさんは長くやっていてノウハウがありますよね。会社のフェーズによって要求度が違いそうですけど。

岩佐 うーん……まわりに変なおじさんがどれだけいるかじゃないですか。

 「中国はダメだ」「コントロールしなきゃいけない」「俺たちが上だから上から目線でこうやっていくんだ」「日本の基準はこうで、中国の基準はこうだからこうしなきゃいけない」とか最初からいろいろ脳みそに入れてくる人がまわりにいるところ(会社)は、やっぱり日本の人と一緒にやったほうがいいと思っていて。

 逆にぼくらは常識がちがうやり方をやっているので。ぼくは日本の(大手)EMSさんに嫌な思いをしたことが何回かあって。電話で「今日いまから行くわ」と言ったら、バカ呼ばわりとは言わないまでも「なんじゃおまえは」みたいなことを言われたりして、スピード感がまったく合わなくて。「わかった、明日ならいいでしょ」と言ったら「明日って……いや、まずは社内で検討」みたいに言われたりして。いや、とりあえず(製造)ライン見に行きたいんだからって。

 ぼくってかならず事前通告なしでラインを見に行くんですよ。準備されるときれいにしたり、本来ないはずのサンプルを他の工場から借りてきたりする。ぼくはいきなり殴り込みに行って見る。たぶんやり方だと思うんですよね。そういうやり方にぼくらは慣れすぎちゃったので。日本のスタートアップの人たちも、そういうやり方でいったら中国ローカル、ベトナムローカルで行けると思うんです。

 でも「これが正なり」みたいのを昔からやっている人、アドバイザリー的にシニアの方が「製造を見ます」みたいなおじさんが入ってその人がいろいろ言うみたいなパターンのときは、絶対に日本とやったほうがいいのかなと。

 で、中国とやっていて満足しています。クオリティ低いんだけど、早いのとフレキシブルなのと、細かいお金に文句を言わないことに満足してます。

 日本法人で海外工場みたいなところは、困ったことがあるとすぐに「追加請求」。「ラインを押さえてたのにっていうけど、この前ライン行ったらスカスカだったじゃないですか」「いやあ~」みたいなことがよくあって。「試作は何回までしか見込んでなかったので、追加は~」とか言われる。そんなのレイバーコスト(人件費)大したことないでしょと思うんだけど、なんか管理費がいっぱい乗った請求が来たりする。

 中国はいい意味でなあなあなところがあって、謎のコストが積まれたりしてるとき「オラッ」と言ったりはするんですけど、フレキシブルなところはいいなと。

 おっしゃるように、クオリティの面で、歩留まりがけっこう悪いだとか、ロット不良をバゴンと出したりするとかはありますよ。あとは常識。日本人の場合は常識のレベルが一緒というか。表面がきれいというレベルが同じだったりとか。中国・フィリピン・ベトナムだと、表面にぷつぷつ塗装の粒があっても「きれいだ」と出してくることが普通にあるんで。そこのコミュニケーションの時間がすごく短いのは日本のいいところなんですけど。

 それでもなんで中国を使いつづけているのかというと、中国のほうがやっぱり速いんですよ。変なのを出してきても「バッカヤロー明日出してこい!」と言うと、明日出してくる。ごねたりしない。「上司にかけあいます」「追加料金で」「契約書に入ってない」「このサンプルのレベルはどうの」みたいな話は出てこない。

 トータルで考えると、日本はクオリティ高いんだけど、スピードとか常識とか組織としての行動で割食って損してるという印象はあります。

中田 スピード感とか細かいところを気にしないというのは、VAIOが海外のODMを扱ってきていいところだと感じました。ただ、つくろうとしてるモノによると思うんですよ。PC、とくにVAIOというとクオリティを要求されちゃうんです。

 それを求めてほしいとODMにお願いしても、なかなかそれにかなうものが出てこなかったというのがいちばん苦労したところだと思います。自分がつくりたいと思っているものが、日本人的な目で見てきれいなものをつくりたいとか、多少時間をかけてもしっかりしたものをつくりたいという方。

 海外とのコミュニケーションが苦にならない、語学力もそうだし、海外の方の価値観を理解した上で、一緒にモノをつくっていきたいという方はガンガンODMさんを使っていけばいい。でも、岩佐さんほどの度胸も経験もないという方は、まず日本のサービスをしている方とやってみたほうがいいんじゃないかなと。

── VAIOさんに来てくれと。

中田 そうですね。

岩佐 中田さんのコメントでそのとおりだなと思うのは、コモディティな商品は比較対象があるんです。今日からノートPCを作りますと言うと、VAIOやMacBookやXPSと比較する。表面が波打っていないかどうか、平滑度とかが話題になる。やっぱりこのクオリティじゃないとVAIOじゃないとかそういう話になりますよね。

 そういうコモディティなものは、おっしゃるようにうまく国内EMSにお願いして、「少なくともアップルのレベル以上はいこうよ」「ソニーのレベルはねらっていこうよ」というのは、すごくいい気がしますね。

 逆にぼくらが中国やフィリピンで作っているのは、比較対象がないものだから。そこはけっこうあるんじゃないかなと。もちろんロボットといえばAIBOもあれば何とかもあればとありますが、クオリティも値段も違いますからね。

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