今後の「Live Photos」はこうなる
このように、Live Photosはファイルフォーマットというより「JPEGとH.264ムービーの簡易な連携」であり、それほど難しい決めごとは存在しない。どちらも普及した技術であり、ここ数年で発売されたスマートフォン/タブレットであればハードウェア的には無理なく表示できるはず。
iOSデバイスの場合、撮影にはSoCに「Apple A9」以降を搭載した端末が要求されるが、これは1440×1080ピクセル/15fpsという動画スペックの処理に必要だからと考えられる。「カメラ」アプリを構えた時点で動画の撮影が開始されていること(だからシャッターを切る前の動画が記録される)、撮影時にはH.264エンコードというそれなりの負荷が生じることを考慮すれば、やむを得ないことだろう。
Live Photosのようなメディアフォーマットを新設する場合、JPEGとMOVとに分離するのではなく、MPEG-4のような扱いやすいコンテナ形式 — 単独ファイルのように見えるが内部には複数のファイルが収録されている — を定義することも可能だったはずだが、Appleはあえてそうしなかった。
それはおそらく、MOVは巨大なリソースフォークという位置付けだからだろう。写真(JPEG)がファイルの本質であり、MOVはその引き立て役というイメージだ。少なくとも現時点のLive Photosは、iOSデバイスおよびMacでしか扱えない書類であり、AndroidやWindowsなど他プラットフォームへ送信するときには本質以外の部分がジャマになる。それに、それぞれを独立させておけば、解像度やフレームレートの決定で束縛されない。将来の多画素化/フレームレート増加をにらむと、簡易な連携のほうがやりやすいはずだ。
とはいえ、AppleはLive Photosのサポートを厚くする方向でのぞんでいる。表示用API「PHLivePhoto」をサードパーティー製アプリ向けに公開しているし、TumblrやFacebookもLive Photosのサポートを開始している。本稿執筆の数日前には、Googleも「Googleフォト」アプリでLive Photosをサポートした。この動きは今後も続くだろう。
OS Xでのサポートも厚くなった。Macに転送する場合、これまではUSBケーブルで接続したうえ「イメージキャプチャ」または「写真」で取り込むか、iCloud経由で同期するしかなかったが、OS X El Caitan 10.11.4からはiMessage経由での転送もサポートされた。OS Xの「メッセージ」アプリを利用すれば、受信したLive Photosをクイックルックすることも可能だ。
以上を踏まえると、Live Photosは今後もiOS/OS Xで大いに活用されるだろう。ファイルフォーマットではなく、独立して存在するJPEGとMOVのゆるい連携であるため、将来的な多画素化や収録時間の延長、フレームレートの増加にも対応しやすいはず。サードパーティーの対応も順調に増えている。安心して資産を増やせそうだ。
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