いま聴きたいオーディオ! 最新ポータブル&ハイエンド事情を知る 第1回
DDFA利用のヘッドフォン再生、打楽器が気持ちよく空間にはじける
多機能で高音質、DNP-2500NEはフルデジタルで使いやすい (3/3)
2016年03月04日 15時00分更新
ヘッドフォン再生は非常に魅力的、オンリーワン的な存在感
「なるほど、そう来たか」などと思いながら、ヘッドフォン再生に移行する。
実はDNP-2500NEに関心を持った最大の理由がヘッドフォン再生だ。最初のほうに書いた豊富な調整機能がウリだが、ヘッドフォンアンプ専用に使っている、フルデジタルアンプ「DDFA」の効果を試したいというのもあった。今回は手持ちのゼンハイザー「HD700」と組み合わせて聞いてみた。
まず設定項目も説明からだが、ゲイン切り替えは3段階。基本ヘッドフォンのインピーダンスに合った音量になるよう調整するのがいいと思う。HD700の場合は、インピーダンスが150Ωと高めなので、HIGH以外の位置では音量がとりにくかった。ただもっとインピーダンスが低い一般的なヘッドフォンであれば、ゲイン切り替えによる音の変化を試すのも面白そうだ。ゲインに応じて、ボリューム位置を変える必要はあるが、同じぐらいの音量で聞き比べると音の差が出る。
ダンピングファクター調整機能はLOW/Lower MID/Upper MID/HIGHの4段階(出力インピーダンスはそれぞれ100Ω/47Ω/33Ω/0.1Ω)。音質傾向としてはHIGHが最も硬質で、LOWになるほど柔らかくなる。この効果はHD700で聞く限りかなり顕著。同じ機器を使っていると思えないほど出音が如実に変わる印象だった。
ダンピングファクターHIGHの状態は高解像度かつシャープな印象で、細かい情報を良く拾うHD700との相性がいい。なかなかマッチした組み合わせと思ったが、ギターやピアノ伴奏のみで音数の少ないボーカル曲などではLower MID、LOWのほうがゆったりと聴けるように感じたりもする。シチュエーションによって使い分ける楽しみがあった。
空間表現が心地よい、そして打楽器の抜けの良さ
DDFA採用のメリットとしてデノンが解説しているのは、カップリングコンデンサーをなくせること。DDFAはデジタルデータから生成したPWM信号をローパスフィルターに通すだけで直接ヘッドフォンを駆動する(さらに出力段からのフィードバックで特性を改善する)ため、パワーアンプから直流が漏れないようにするカップリングコンデンサーがいらない。通常なら80~100Hz程度から下が緩やかに落ちてしまう低域が、20Hz以下のかなり低いところまでフラットに維持できるという。
ただこうした蘊蓄よりは実際の音のほうが大事だろう。そして聞いてみると、やはり一般的なヘッドフォンアンプにはない個性があるように思えた。
複数聴いた中で、印象的だったのは打楽器の表現。実はDNP-2500NEのヘッドフォン再生の音を聞いてとても印象的なのは、空間表現がピタリと決まり、かつ打楽器が非常に爽快に鳴るという点だ。この辺りはフルデジタルの恩恵かもしれない。立ち上がりが早く、適切な量感があって、しかも奥へ奥へと深く広がっていく。音離れの良さ、音の立ち上がり、立ち下がりの速さを存分に感じられる。
例えば、『ガールズ&パンツァー 劇場版』オリジナルサウンドトラック。WAV形式で32bit版の音源がリリースされているが、こういった最新フォーマットでもDNP-2500NEであれば再生可能。曲というよりはオーディオ的な感じとしては、21曲目『待ち伏せします!』、22曲目『知波単、新たなる戦いです!』あたり。音程の低い打楽器の立ち上がりや広がり感に注目したい。すごく奥行きの深い空間が再現されて印象的だ。
Image from Amazon.co.jp |
TVアニメーション「ラストエグザイルー銀翼のファムー」O.S.T. |
打楽器がいい曲ということで「ラストエグザイルー銀翼のファムー」O.S.T.を久しぶりに聴いてみた。CDではあるが、特に打楽器の速いパッセージが含まれている曲では、音の抜けが良く、空間にスパと立ちあがる。このリズム感が正確で良かった。
残留ノイズや歪みが少なくクリアーな印象がある点もいい。ノイズ感の少なさという意味ではアナログアンプのほうがリードしているイメージがあったが、DDFAは非常に優秀だと思う。ソースによっては、高域などに若干の歪み感を感じたが、総じてノイズは少なくクリアー。雑味がないサウンドだと思う。
このようにDNP-2500NEには、新世代のデノンを予感させる新しい音の世界があった。音場や空間がひとつの魅力だが、その理由はセパレーションの良さと音の立ち上がりの速さなどが関係しているように思う。
そのポテンシャルを特に感じるのがヘッドフォン再生時で、DDFAを使った専用ヘッドフォンアンプの能力は、想像以上にできがいいという印象であった。まずはヘッドフォン再生から初めて、単品システムでのスピーカー再生にいずれステップアップしていける機種をと考えた際、中核となるプレーヤーはクオリティー面でも機能面でも充実していたほうがいいと考えるなら、本機はオススメできると思う。
訂正とお詫び:リモコンの音量調整ボタンは標準状態ではアンプの音量調整用に設定されているが、設定を変更することでDNP-2500NEの音量調整にも使えるという指摘が入りましたので、本文を修正しました。(2016年3月12日)
この連載の記事
-
Audio & Visual
第26回 ドイツの老舗beyerdynamicが放つ、スタジオ育ちのハイエンドゲーミングヘッドホン「MMX 300 PRO」を試す -
Audio & Visual
第25回 「コレいいじゃん!」と思わずポチりたくなった高音質、beyerdynamic「Verio 200」を早速聞いた!! -
Audio & Visual
第24回 映画を楽しむのにいい! Sonos初のヘッドホン「Sonos Ace」体験レポ -
Audio & Visual
第23回 4000円弱で買える、JBLのUSB-Cイヤホン「TUNE310C」、ハイレゾ認証も取得!! -
Audio & Visual
第21回 開放的で高解像度、ダイナミック型の新境地感じたFAudio「Dark Sky」 -
Audio & Visual
第20回 オールラウンドという言葉がふさわしい、ティアックの万能DAC「UD-701N」 -
Audio & Visual
第18回 Wi-Fiスピーカーへの印象を改めるとき、iFi-Audioの「AURORA」は感激の音 -
Audio & Visual
第17回 これぞ完成形、CHORD「Hugo 2」+「2go」のタッグのすごい機能を紹介 -
Audio & Visual
第16回 これ1台でいいかも、豊富な機能で音のいいプレーヤーFiiO「M11 Pro」はオススメできる【更新版】 -
Audio & Visual
第15回 歌声がよく聴こえる、finalの新機軸イヤホン「B1」を聴く -
Audio & Visual
第14回 選ぶ楽しみ、そして使いこなす楽しみ、双子のDITAを体験 - この連載の一覧へ