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デノン、110周年を記念した新製品4モデル、中級クラスながらハイグレード

2020年09月08日 15時00分更新

文● ASCII

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 デノンは9月8日、110周年を記念したアニバーサリーモデル4製品を発表した。SACDプレーヤー「DCD-A110」(税抜28万円)、プリメインアンプ「PMA-A110」(税抜33万円)、AVアンプ「AVC-A110」(税抜68万円)、「DL-A110」(税抜6万2000円)。発売は10月中旬。

 110周年ロゴはDENONをイメージさせる4つの言葉「日本」「音」「歴史」「人」をモチーフにし、太平洋から日が昇る、幾何学的でシンプルなものとした。また、本体カラーは、今までにないガンメタリック。従来シルバーやブラックのカラーが用いられてきたが、その中間になっている。アルミ製フロントパネルのアルマイト処理は国内で実施している。

 特にHi-Fi向けの2モデルは、技術者の集団であるデノンに、サウンドマネージャーの山内慎一氏の感性がまじりあったチームだからできる製品を目指した挑戦。中級クラスのベース製品をグレードアップするアプローチで開発した。「いいものをお求めやすい価格で提供するのも技術のひとつ」というコンセプトの表れだ。

 5年保証に対応。記念モデルだが、限定生産ではない。ただし、発売後にオーディオクエスト製ケーブルをプレゼントするキャンペーンを実施し、先着110名はロゴ付きのケーブルになるという。

SACD再生対応の「DCD-A110」

 「DCD-2500NE」をベースに開発している。ただし、まったく新しいCDプレーヤーができあがったとする。

 最新にして最高のアナログ波形再現技術をうたう“Ultra AL32 Processing”を搭載。オーバーサンプリング比を従来の768kHzから1.536MHzに倍増させることで、理論上-3dBのS/N比向上が得られるという。デノンの説明では、ノイズを含んだ音楽信号を等しくオーバーサンプリングしたのち、薄く広く伸ばして、ノイズ成分だけをカットすることでS/N比が向上する効果が得られるとのこと。

 例えば、192kHz/24btiのPCM音源を再生した際のS/N比はDCD-2500NEの118dBに対して124dBとなっており、非常に高いクオリティになっているのが分かる。

 新しいデジタル/アナログ変換回路も110周年モデルの肝となる部分だ。D/AコンバーターはPCM1795を4基使用している。2500SEより上位グレードの従来機「DCD-SX11」も同じチップを使っているが1基のみだ。また、DCD-A110も開発当初の設計ではデュアルDACだったが、さらに倍とした。出力電流が4倍となり、聴感上のエネルギー感に大きな違いが出るとする。

 また、コンデンサーなどのパーツには、フラッグシップの「DCD-SX1 LIMITED」用に開発したものを数多く使用。アナログトランスも36VAと「DCD-2500NE」の7VAに対して約5倍としている。奥行きを広く取ることにより、従来のようにオーディオ基板とデジタル基板を重ねて配置する必要がなくなり、回路パターンも美しくできた。フット部には、A6061素材のアルミ合金製インシュレーターを使用。DCD-SX1 LIMITEDに近い特性が得られるものとした。CDメカのカバーも銅製としている。

プリメインアンプ「PMA-A110」

 「PMA-2500NE」をベースに開発している。ただし、増幅回路そのものを変えている。PMA-2500NEはパワーアンプにボリュームを付けただけのシンプルな構成と言えるものだった。これはボリューム位置の違いによってアンプの動作が変わらないという利点もあるが、入力抵抗の熱雑音もボリューム位置に関わらず、フルゲインで増幅してしまう欠点もあった。

 PMA-A110では普段使うボリューム位置のノイズを改善するためにFLAT AMPを挟み、フルゲインで増幅しないようにした。これにより従来機種ではボリューム位置に関わらず、45.5dBだった熱雑音を0dBの位置にすれば29dBにまで減少。最大ボリューム時のノイズ量は変わらないが、利用する人が多い9~12時のボリューム位置であれば最大1/6の効果が得られる。

 UHC-MOSを使った回路も3ステージからSX11で採用した差動2段アンプに変更した。

 また、将来の部品供給を見据えつつ、ボリュームを伝統的な抵抗式(機械式)からデジタル方式で音質に特化した「MUSE72323」に変更した。これに合わせてプリアンプ部も変更している。ボリューム位置による音量変化のカーブも細かく調整して操作感を向上。利用頻度の高い8時~11時の位置での分解能を上げ、リモコン操作時にきめ細かく音量を調節できるようにした。また、電子ボリュームでありつつも最小値から最大値までの可動範囲が決められており、直感的に音量がどの位置かを感じ取れる(くるくると回らず、始まりと終わりがある)。

 電子ボリュームは信号経路がシンプルになるというメリットも持つ。抵抗式のボリュームでは背面の入力端子から取り込んだ信号をいったんフロントパネルまで引き回して、再び背面のパワーアンプから出力する形となるが、電子ボリュームの場合はフロントパネルを経由せず、直接プリアンプ⇒パワーアンプに信号を流す経路にできる。

 フォノイコもPMA-SX1と同等のもの。またPCオーディオ用のデジタル入力も備えるが、デジタル基板とアナログ基板はアイソレータ―で電気的に切断している。ネットワークプレーヤーとしての機能はDNP-2500SEと同等だ。

 パーツ類も、SX1 LIMITEDの開発時に起こしたカスタムコンデンサーなどを含む(サウンドマネージャー山内氏にちなんだ通称“山内コンデンサー”)。全端子削り出しで、スピーカーターミナルも上位機と同じもの、不活性ガス封入型リレーなどを使用している。

13.2ch対応のAVアンプ「AVC-A110」

 AVC-X8500Hがベースモデル。AVアンプのサウンドマネージャーは山内氏ではなく高橋佑規氏が務めるが、Hi-Fi向けで山内氏が手掛けた“SX1 LIMITED”シリーズと同様に、回路類に手を加えず、コストや開発期間の制約なく、部品選定などをこだわり抜いたら何ができるかをコンセプトに開発したものとなる。視覚的にも、内部の電源部を黒のシールドで覆って深淵を示すなどコンセプチュアルなものとなっている。

 多数の専用高音質化パーツを投入しているが、一例としては電源用に使用しているカスタムコンデンサーがある。

 デノンの説明では、コンデンサーの箔を薄く伸ばす際、その速度が遅ければ遅いほど、低域が伸びる傾向があり、その箔を巻き付ける際に、緩ければ緩いほど低域でる傾向があるという。ただ、そうして作ったコンデンサーをAVC-X8500Hのものとただ置き換えただけでは、量感はあるが締まりのない低域になるなど弊害もあるので、さまざまな工夫を施しながら、深く沈み込む低域のレンジ感を確保しつつ引き締まったものになるようにしたという。

 また、小型のコンデンサーでは、コーティング剤を柔らかいものに変えると高域が伸びるといった傾向があったり、Hi-Fi機器でつかうようなメタルフィルムや含浸コイルを使用したりなど、非常に物量を投入した内容だ。基板に関しては、低インピーダンス化するために、箔の厚さを35μmから75μmにまで厚くしている。結果、信号伝送時の抵抗が減り、S/Nがよくなるという。また、電源の下には純銅製の板を入れて確実に固定している。

 このような試みを通じ、回路自体は変えずに、明らかに音質面でのアップグレードを感じるものになったという。なお、AVC-X8500Hは有償基板交換で8K対応にアップグレードできるが、AVC-A110は出荷時から8K対応の製品となっている。

シェル同梱のMCカートリッジ「DL-A110」

 DL-103のスペシャルバージョン。カートリッジのほかに、専用ヘッドシェル、クリーニングブラシが付属し、これをロゴプレート付きの専用ケースに収めて提供する。

 DL-103は1963年、FMステレオ開始時にNHKがレコード再生用に使う標準カートリッジとして開発。その後、日本のほとんどの放送局で使われ、半世紀にわたって放送業界を支えてきた。また、1970年にデノンが民生ブランドに進出するきっかけを作った製品である。

 標準カートリッジということで、アームやシェルなども含めて規格化されており、シェルに入れたカートリッジをラジオDJが持ち込み、ゼロバランス調整などなしにそのままアームに取り付けて放送を始めるといった使われ方もしていたという。DL-A110は、そんな使われ方をイメージし、ヘッドシェルを同梱している。

 放送用ということで、LPレコードを色付けなく再生する点が重視されており、シンプル&ストレートというデノンの基本設計思想もその際にできたという。樹脂製の筐体も固有の鳴きがなく自然な音が出せる素材ということで選ばれた。半世紀以上に渡って、仕様を変えず提供され続けているが、日本の職人にしか作れない考え抜かれた形状を含め、高い完成度を持ち、変更する必要がなかったためとも言える。

 着色がなく、ストレートかつネイキッドな音が特徴だが、特に樹脂製のシェルは、従来のDL-103ユーザーに対しても新鮮ではないかとする。シェルの存在感がなく、素の音がそのまま出てくる感覚があるという。

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