日本企業のデジタル変革支援に向け、S/4HANAやHANA PaaS、業種別ビジネスフレームワークを展開
「顧客の半歩先を歩む」SAPの2016年戦略を福田社長が語る
2016年02月04日 10時00分更新
「これまでおよそ20年間SAPで勤めてきたが、今が最も顧客に貢献できる時期であり、時代の要請に応えられる楽しい時期だと思っている」。2月3日に開催されたSAPジャパンの2016年戦略 記者発表会において、同社 代表取締役社長の福田譲氏はこのように述べた。
SAPはこの数年で大きなビジネス変化を遂げてきた。発表会では、その変化を明確に示す昨年2015年の業績と、2016年に注力していくS/4HANAなどのビジネスが説明された。
グローバルでは新規案件倍増、順調に進むビジネスのクラウド移行
福田氏はまず、昨年の同社ビジネスを振り返った。グローバル、日本国内ともに業績は好調であり、特にグローバルでは総売上、営業利益ともに過去最高を記録している。
「昨年1年間は世界経済の減速などの不確定要素があったが、そういう中でこそ、企業幹部がIT投資を考える際に、SAPのようなクリティカルなITに投資していることが鮮明に出た、と理解している」(福田氏)
「5年前は影も形もなかった、0%だった」(福田氏)クラウドビジネスへの移行も順調だ。SAPでは、再来年の2018年度にオンプレミスとクラウドの売上比率を逆転させる中期計画を立てている。昨年、グローバルでは新規受注件数が前年比で倍増(103%増)、クラウド売上は同82%増となっており、すでに総売上の32%をクラウドサービスが占めている。福田氏は、クラウドサービスは顧客が解約しないかぎり持続的な売上が見込めることから「事業のサステイナビリティが順調に、強固なものになっている」と評価した。
なお、日本市場における2015年のクラウドビジネスは、新規受注件数が193%増(約3倍)となっている。元々の数字が少なかったため、グローバルの数字と単純比較はできないが、「われわれの予測を超える結果となった」と福田氏は述べた。
S/4 HANAが基幹システムとその他のシステムとをつなぐ
福田氏は、昨年一番大きかった動きとして、旗艦製品であるERP「SAP S/4HANA」の発表を挙げた。昨年2月に会計領域の、11月にロジスティクス領域のリリースを行い(関連記事1、2)、昨年末までにグローバルで2700社、国内で70社が採用している。
「2010年にリリースした『SAP HANA』を超える、SAP史上最速のスピードで市場への展開が進んでいる。昨年、国内でERPを新規導入された顧客の90%はS/4HANAを選択した」(福田氏)
S/4HANAの導入事例として福田氏は、ERPの基幹系データと制御システムなどのIoTデータをHANA上で統合し、従来の“ものづくり”や顧客対応力を違った次元に持ち上げることを目指している、田淵電機の事例を紹介した。
このS/4HANAの基盤であり、登場から5周年を迎えたHANAについては、当初の高速なインメモリデータベースだけでなく、アプリケーション開発/実行基盤、統計解析エンジン、地理空間エンジン、モバイル基盤などを統合してきたことで、「現在では、単一のプラットフォーム上でシンプルにやりたいことを実現できる、“ビジネスのイノベーションプラットフォーム”へと進化を遂げている」と述べる。
昨年のHANAの動きとして福田氏は、「HANAだからこそできる」機能を組み込んだ「SAP Cloud for Analytics」「SAP Digital Boardroom」などのリリースや、採用社数が1万社を超えたHANAベースのPaaS「SAP HANA Cloud Platform」を紹介した。後者の可能性については次のように語る。
「〔既存サービスをクラウドに移行するという段階から、〕次は『クラウドならでは』のサービスに焦点が当たってくるだろう。ビッグデータ、機械学習、統計解析、モバイル――こうしたものが組み合わさることで、新しいサービスが出来ていく。そうなれば、そうした基盤をいかにシンプルに実現するか、という視点で提供している“HANA×クラウド”の力が理解いただけるのではないか」(福田氏)