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高橋幸治のデジタルカルチャー斜め読み 第10回

ネット上とネット外の境界とは

五輪エンブレム騒動はクールジャパン、サザエbot中の人がネットを語る

2016年01月19日 09時00分更新

文● 高橋幸治、編集●ASCII.jp

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オリンピックのエンブレム問題は壮大なアートプロジェクト

―― 昨年、世間では大問題になったオリンピックのエンブレム騒動のときも、サザエbotでは「非公式エンブレム」を募集していましたよね。ああした軽やかさというか、マスメディアがひたすら深刻な空気を醸しているときに、ちょっと視点を変えて空気の抜けをよくするということはとても大事だと思います。

※ 昨年夏のオリンピック・エンブレムの騒動の渦中、サザエbotで展開された「#非公式エンブレム」プロジェクト。1ヵ月ほどの募集期間中に300以上のエンブレムが投稿された。その成果はhttps://www.instagram.com/sazaef/で見ることができる。ちなみに募集時はこんなツイートだった。

なかのひとよ そうね、それこそインターネットじゃないとできないことかもしれないわね。あの騒動自体も、見方によってはさまざまな問題を世の中にあえて提示するためのクリティカルな側面も持ち合わせていると思うの。問題を提起するという意味でいうと、「スキャンダル」と「アート」の境界もますますあいまいになっているような気がするし。こんなことを言うとそれこそ炎上してしまうかもしれないけど(笑)。

―― わかりますよ、その感覚。「オリジナリティーとはなにか?」「アイデアはどこから来るのか?」とか「インターネット時代の著作権とは?」、さらには「業界内の慢性的な癒着の構造」とか。実はとても問題提起的なアートプロジェクトだったんじゃないかというね。前回「スペキュラティヴ・デザイン」について書いたんですが(関連記事)、あの騒動も意図せずして「スペキュラティヴ=思索的」になっている。

なかのひとよ いま代案の選考が進んでいて、そのうち新しいものが発表されるみたいだけれど、今度は逆に、「やっぱり最初のデザインのほうがよかった」なんてことになったりしてね。実際、「サザエbot」での募集した「非公式エンブレム」では最初の案が最優秀賞に輝いているわ。

※ 最優秀賞決定のツイートはこちら。

―― ヤバい、それはおもしろすぎる!

なかのひとよ 客観的に見て、あの一連の騒動をインターネットも巻き込んだ壮大なスペキュラティヴ・デザインやアートプロジェクトととらえるなら、「エンブレムを元に戻そう」という署名運動が始まったりしてもおかしくないわよね。世界中であんなに有名になったロゴも滅多にないわけだし、それこそプロセスも含めて「クールジャパン」なんじゃないかしら? そういうちょっとタブー視されているようなことをあえてする人がもっと出てきてもいいと思うわ。

―― そうですね、12月23日の天皇誕生日のときもTwitterで「あんまり絡みなけど、おめでとう」というのが拡散しましたよね。あれもタブーにかなり接近したいい例だったと思います。では、前編はこれくらいで(笑)。次回はなかのひとよさんが10月に参加されたドイツ・ベルリンでの国際会議のことなどをお聞きしたいと思います。



なかの・ひとよ

 フォロワー数20万人を上回る人気Twitterアカウント「サザエbot」(@sazae_f)の中の人。Anon-ism(アノニズム)の名のもと、ネットユーザーの匿名的な行為をポジティブに活用するためのプロジェクトを数多く行なう。ファン参加型イベントや代替現実ゲームの開催、近年は本人不在のままトークイベントや国際会議に出演するなど、活動の場を徐々にリアルへと広げているが、その素性は未だ謎に包まれたまま。自身を未来人と称する。近著に「あなたへ #100_MESSAGES_FOR_YOU」(セブン&アイ出版)がある。
Twitter:@Hitoyo_Nakano
Anon-ism:http://anon-ism.tumblr.com


著者紹介――高橋 幸治(たかはし こうじ)

 編集者。日本大学芸術学部文芸学科卒業後、1992年、電通入社。CMプランナー/コピーライターとして活動したのち、1995年、アスキー入社。2001年から2007年まで「MacPower」編集長。2008年、独立。以降、「編集=情報デザイン」をコンセプトに編集長/クリエイティブディレクター/メディアプロデューサーとして企業のメディア戦略などを数多く手がける。「エディターシップの可能性」を探求するミーティングメディア「Editors’ Lounge」主宰。本業のかたわら日本大学芸術学部文芸学科、横浜美術大学美術学部にて非常勤講師もつとめる。

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