いくつもの目を持って自分の位置と向きを把握
ルンバ980の正確な矩形走行は、自分の位置と方向の把握に支えられているが、それを可能にしているのは一味違うセンサー類だ。
1、ルンバ自体が大きなマウス
ルンバの底面を見ると、段差検知センサー(階段から落ちないようにするためのセンサー)に加えて、さらに4つのセンサー(窓)を持っている。
これはパソコンの光学式マウスと同じしくみで、床の細かな凸凹を読み取ってロータリーエンコーダーよりはるかに正確に移動量を測定している。マウスを微妙に動かしても、マウスポインターが追従することを知ってのとおり、メチャクチャ分解能が高い。こうして前後左右の移動距離を正確に測れるのがルンバ980の特徴だ。
ただし、光学式マウスには弱点がある。それは絨毯の上などでは、検出に誤差が出てしまうという点。絨毯の上でマウスを操作すると、ポインタが動かなかったり、ワープしたりするのと同じだ。ルンバ980は床材を見分け、センサーを切り替え移動距離を測定している。
2、CCDカメラによる位置把握システム
どうしても発生してしまう、ジャイロや距離センサーの誤差。それを補正するのが、ルンバ980で初めて搭載されたCCDカメラだ。これまでもカメラを搭載したメーカーはいくつかあったが、いずれも真上を向けて、天井の形状から部屋の形を割り出そうというシステムだった(D社のみ360度のパノラマ、S社はスマホで部屋の様子をみるためのカメラ)。ルンバ980は、斜め前を映すというこれまでにない方式がオトコらしい!
僕ら人間が掃除するときウマく矩形に掃除できるのは、フローリングの板の継ぎ目や特徴的な家具を基準にして、どこまで掃除したか、まっすぐ掃除しているかを脳にフィードバックして、位置補正をしているから。
斜めを向いたカメラの画像解析は難しいのだが、ルンバ980はあえてソレをやってのけるオトコ気溢れるマシーンなのだ!
もちろんルンバは、「そこにイスがある」、「あっちにテーブルがある」なんていう認識はできない。カタログなどを見てみると、画像輪郭線抽出して角(頂点)に着目しているようだ。
20秒以降を見ると、CCDで位置補正しているしくみがよく分かる
たとえば机の角、イスの角、本棚の角、壁やドアの角など。これら複数の頂点を組み合わせると、ちょうどGPSの要領で位置が分かるという原理らしい。ただ、GPSは衛星と測定ポイントとの距離を調べて三角法(衛星から電波の届く遅延時間を、マイクロ~ナノ秒単位で調べてそこから距離を割り出す)で位置を割り出すが、ルンバのカメラでは頂点までの距離が分からない。そこでルンバは、自分が移動した距離を元に、直前の映像を見比べて、各頂点までのおおよその距離は算出しているようだ。
軍用機かよっ! なアルゴリズムは、ぜひ男気溢れるASCII.jp読者にオススメしたい。
効率のよさは電池の持ちと掃除できる範囲を広めた
ランダム走行ではだいたい1時間かかる部屋(12畳のリビングダイニング+廊下でつながる2畳のキッチン)でも、矩形走行するルンバ980なら30分で終わる。時間はおよそ半分になると思っていいだろう。
しかし、清掃時間などどーでもいいこと。なぜなら自分で掃除するわけじゃないから。重要なのは清掃時間が短くなったぶん、電池は減らないのでより広範囲を掃除できるという点だ。
日本の住宅事情には合わないが、ルンバ980のスゴさ分かるムービー
カタログスペックだと、1回の充電で清掃できる面積はおよそ112畳! まじっスカ!? 時間にすると120分だという。まあ、カタログなので好条件のバイアスがかかりまくっていると思うので、半分と見ても56畳60分だ。お金と2次元の嫁はあっても、リアル嫁がいない2DKに住んでいる標準的な世帯(編集部、未調べ)なら、一度放流してやれば、家を丸ごと掃除してくれる勢いだ。
しかもバーチャルウォールという缶コーヒーのワンダのような大きさの装置を置くと、ガンプラを作っているちゃぶ台を中心に1.2m以内は掃除させないようにしたり、部屋の隅に広げているNゲージのレイアウトに立ち入らないよう仮想的な壁を作ることも可能だ。
長年ともにしてきた嫁でも気遣えない、オタの気持ちを読み取って掃除できるのがルンバ980だ。
毛が絡まらないブラシは800シリーズを継承
掃除機のブラシは、どうしても糸状の毛などが絡んでしまうのは当然。ブラシに絡みついた毛は、ハサミやカッターで掃除するのが日常だろう。まあ男らしく掃除しないのが一般的だ。
しかし、ルンバは1世代前の880シリーズからこれを解消している。それが2つのゴムローラーを使ったブラシで、掃除機に革命をもたらすといっていいほど斬新!(※ルンバからお金は貰ってません、お金ください)
髪の毛のような細長いゴミは、プリンタやコピー機の紙送り機構のように、2つのローラーに挟んで吸い込む。だからローラーに毛が絡まないというわけだ。素晴らしい!
しかもこの2本のローラーは、ピッタリ密着していて同時に回転するので気圧差を生み出し、吸引力を補助する役割を持っている。ちょっとしたスーパーチャージャーみたいなものなのだ。
(次ページでは、「いじわるな実験を敢行!」)