2015年はSIMフリーの知名度が大きく向上した1年でした。格安SIMの価格競争は激化しており、SIMフリー端末もそろそろお腹いっぱいという声があるかもしれませんが、2016年はさらに盛り上がるのではないかと筆者は予想しています。
SIMフリースマホがさらに伸びる
2015年12月、日本では携帯電話料金引き下げの議論が盛り上がっていたようです。筆者は海外にいたのでその空気感はあまり掴めなかったものの、ふたを開けてみると“愚策”やら“官製不況”など、穏やかでない批判が出ているのが興味深いところです。
むしろ総務省効果により、販売現場では“最後の”キャッシュバック商戦が熱くなっているようです。今後、キャッシュバックや一括0円が減ることはあっても、増える可能性がない以上、このタイミングでMNPするのは経済合理的です。年明けの初売りも楽しみになってきました。
2016年、各キャリアはどう動くのでしょうか。1GBで5000円未満など、低料金のプランが春頃に登場することが期待できるものの、何らかの制限が付くなどして、総務省の要求を完全に満たしつつ、骨抜きにされる可能性があります。
その一方で、キャッシュバックや実質0円が本当に減っていくとすれば、キャリアは在庫管理にシビアになり、メーカーからの調達台数に保守的になる可能性もあります。そうなれば、キャリア向け端末事業は割に合わないとして、撤退するメーカーも現われるでしょう。
キャリア向けがダメでも、SIMフリー市場があります。これまで市場全体の5~10%に過ぎないとみられていたSIMフリーが20%くらいまで成長すれば、無視できない市場になります。これまで恐る恐るだった富士通やシャープ、ソニーモバイルはもちろん、様子見を続けてきたサムスンも大きく動き出すものと予想できます。
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富士通のSIMフリースマホ第2弾『arrows M02』。指紋センサーなしとはいえ、ドコモ向けモデルをSIMフリーでも出してしまったのが印象的だ。 |
SIMフリー市場では、注目の新OS、Windows 10 Mobileにとってもチャンスは大きいといえます。ただ、アプリやゲームの充実は急務です。ユーザー層が広がるにつれ、「期待していたのと違う」とか「Windows(デスクトップ)アプリが動かない」といった不満の声が上がることになるでしょう。
SIMフリーのノートPCが増加、MacBookも期待
これまでノートPCはLTEを搭載していないものがほとんどで、外出時にはモバイルWi-FiルーターやUSBモデムを一緒に持ち歩いていたものです。しかし最近ではLet'snoteやVAIOのSIMフリーLTE搭載モデルが登場。2016年はノートPCにもSIMフリーの波が訪れる可能性が出てきました。
Windows PCへのLTE採用が増えるのはもちろん、MacBookの動向も気になるところです。MacBookがよく使われるスターバックスコーヒーには無料のWi-Fiがあるものの、そろそろ本体にもLTEの搭載と、iPadのような全世界のバンド対応が期待されます。
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MacBookにもLTEを載せてほしいものの、アンテナをどこに搭載するかが問題だ。 |
ただ、一般に金属製のボディはLTEの電波を通さないという問題があります。iPadのセルラーモデルのように、アンテナ部分に樹脂パーツを使うという手はあるものの、アンテナはディスプレイの周囲に配置されることが多く、ビジュアル面でも課題があります。
もし発売するとなれば、iPadのようにApple SIMを同梱することになるでしょう。キャリアと組んで、MacBook用のスペシャルなデータプランが提供されれば面白いことになりそうです。
SIMカード増加でデュアルSIM端末も注目
2015年は、SIMカードのバリエーションも急増しました。FREETELは“iPhoneアプリのダウンロードが無料”、J:COMは“動画配信サービスが見放題”、スマモバは“夜間だけ高速で使い放題”などです。
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特定の条件や用途で無料になるSIMが登場。バリエーションは無限大だ。 |
これらに共通しているのは、特定の条件や用途においてパケット使用量をカウントしないという点です。こういったサービスを提供するにはパケットの中身を解析する必要があり、“通信の秘密”という点では気になるものの、ユーザーの同意のもとでなら問題ないでしょう。
こうしてSIMカードが増えていくと、そろそろスマホのSIMスロットが1つでは足りない、ということになりそうです。そうなると注目したいのは、SIMカードスロットを2基搭載するデュアルSIM端末です。
デュアルSIM端末の中には、片方のスロットがLTE、もう片方が2Gなどと”固定”されているものが少なくありませんでした。2Gが一切使えない日本国内では、意味がない仕様といえます。
しかし最近では両方のスロットがLTEに対応し、どちらか1つのスロットでLTEを使える端末も増えています。今後は、それぞれのスロットにSIMカードを入れ、用途に合うほうのSIMにOSの設定画面から切り替える、といったテクニックが広がりそうです。

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