進歩したチタンドライバーのチューニング
最初に製品化されたTITAN 1は、カジュアルユースに向いた仕様でありながら、マニアックな要素も含んだ製品として注目していたのですが、高音域が若干暴れる特性に、まだこなれていない感じがあり、少々お薦めしにくいものでした。なによりDUNUにはDN-1000という怪物的なハイコストパフォーマンス機があるため、同じ価格帯の製品として比べると、どうしてもその差が目立ってしまうわけです。
それで、TITAN 5はどういう舵取りになったのか興味深々だったのですが、やはり欠点と感じられた部分を潰してきています。若干ながらボーカルのサ行が強調される傾向はあるものの、それはチタンドライバーのテイストとして容認できる程度に抑えこまれており、輪郭は明瞭ながら高音域の解像感を失うほど太いわけでもありません。その昔、奥に引っ込んだボーカルやギターを浮かび上がらせる、オーラルエキサイターというレコーディング用のプロセッサーがあったのですが、ちょっとその効果を思い出しました。
そしてなによりダイナミックドライバーらしく、粘りの効いた低域が魅力だと感じました。ローエンドまでレスポンスがあって、点ではなく面で聴かせるタイプのライブ感ある音作りに、ダイナミック型の美点が活かされていると感じました。
総じてローの効いて中音域のエッジも立つキャラクターという点で、オケの音数が多いJ-POPや、ディストーションギター主体のヘヴィロックに向いていると思います。TITAN 5がこのチューニングで、かつ「メリハリの効いた」TITAN 3も存在するわけですから、この2機種がどんなチューニングで差別化を図っているのかも気になるところです。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ