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下町工場で作るジンギスカン缶詰が本場も納得の味になる秘密

2015年12月20日 12時00分更新

文● 四本淑三

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本場の道民もうなる缶詰の味

 関西のたこ焼き、香川のうどん、宇都宮の餃子など、全国各地に様々なソウルフードが存在するわけですが、私はジンギスカンをソウルフードとする元・北海道民です。原料のラム肉自体は輸入品なので、地域の名産というわけでないですが、人が集まると大体ビールとジンギスカンが出てくる。私はこのような環境で育っており、ちょっとジンギスカンにはうるさいんだぞ、という点を、まずアピールをしておきたい。

 タニケイさんのジンギス缶も、原料は輸入大手のアンズコフーズのもの。食材の味を引き出すために醤油、塩などの調味料や分量を研究したということですが、羽田の人に道民が納得できるようなものが作れるのか? などと高い見地に立って缶を開けてみました。

缶の中身。確かに水に浸かったレトルトパックが入っています

 開けた瞬間に、羊肉の匂いがします。嫌いな人にはダメなんでしょうが、私にはたまらん匂いです。これがフィルムを透過した気体の匂いなのでしょう。この水は捨てろと書いてありましたが、自己責任でちょっと味見してみました。あ、なるほど、これはうまいことやったなあ、という味が。

 この水は、ハムや魚肉ソーセージなど、保存食系のお肉に共通するあの味がします。安い魚肉ソーセージを口に入れたときの、頬の内側に感じる痺れのような、あの味。それがえぐ味の正体らしく、どうやら水に溶け出しているようです。

 で、食べる際には温めても温めなくてもお好みで、ということなのでとりあえず、最初はそのままお箸でほぐしていただきました。

そしてレトルトパックの中には肉の塊、調味液、そして肉から溶け出した脂が入っています

一見すると塊肉のようですが、スライスした肉が使われています

 あ、やべえ、たしかにこれは美味いわ。というのが第一印象。缶入りの肉という感じがまったくしません。これは先のえぐ味が抜けた結果でしょう。ただし、ジンギスカンだと思って食べると違和感があります。というのもジンギスカンは鍋で焼くもの、これは煮たものだから。でも、味はジンギスカンそのものです。

 考えてみると、これは低温調理されたラム肉なんですね。真空パック入りのラム肉を、水とともに缶に入れて密封し、そのまま加熱している。これは真空調理法と同じです。真空パックで加熱すると、味がよくしみ込むので、味付けを濃く必要がない。タンパク質の変性温度に近いか、ちょっと上くらいのところで長時間加熱すると、大体、肉は美味しくなる。あれです。

 北海道民にとってのジンギスカンといえば、冷凍した肉を薄切りにして焼き、タレに付けて食べるスタイル。あるいは調味液に漬け込んだものを焼いて食べるスタイルの二派に分かれますが、そのどちらでもないので新鮮です。

ほぐしてみるとこんな感じ。味付けが濃くないせいで、ずいぶんと淡白な色です

(次ページでは、「ほかの缶と比べてみた」)

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