クアルコムは、12月11日、アジアのメディアを招いたイベントを中國・北京で開催。2016年には搭載端末が発売される「Snapdragon 820」をお披露目した。
Snapdragon 820は、設計を一新したフラグシップ向けのチップセット(SoC)。先代にあたる「Snapdragon 810」は、英ARMのCPUをそのまま採用してSoCにしていたが、820からは従来のように、クアルコム自身がカスタマイズを加えた「Kryo」(最大2.2GHz駆動)を搭載する。オクタコア構成からクアッドコア構成に切り替わっており、「SoC全体で最適化を行ない、パフォーマンスを上げながら、消費電力を下げられるようにしている」(クアルコム関係者)のが特徴だ。
オクタコアからクアッドコアへ
カテゴリー12/13のLTEやIEEE802.11adに対応
元々、SnapdragonはARMからアーキテクチャーライセンスを取得し、CPUをモバイル端末に最適化する形で、カスタマイズを行なっていた。ところが、他社がクアルコムに先駆け、64ビット化を行ない、ここに対抗するためSnapdragon 810では、ARMのコアをそのまま搭載することになった。クアルコムが想定していたよりも、64ビット化の波が早く訪れてしまったというわけだ。
よく言えばタイムリーな市場投入を狙ったチップであったが、一方で急場しのぎであったことも事実。熱問題など取りざたされており、日本では、冬春モデルの多くがSnapdragon 810から一段パフォーマンスを落とした「Snapdragon 808」を採用した。グローバルでも、サムスンのように、採用を見送るメーカーが出ている。これに対し、Snapdragon 820のKryoは、満を持して64ビット化した、クアルコムのカスタムCPUとなる。
イベントでは、クアルコムのマーケティング担当シニアバイスプレジデント、ティム・マクドノー氏が、Snapdragon 820の特徴を紹介した。同SoCは、上記のようにコアを一新しただけでなく、GPUに「Adreno 530」、DSPに「Hexagon 680」を採用している。モデムは、LTEのカテゴリー12/13に対応する「X12 LTEモデム」となり、IEEE802.11adに対応するなど、WiFiのパフォーマンスも大きく向上している。
同氏によると、CPUはパフォーマンス、電力効率ともに2倍に向上しているほか、GPUはそれぞれ40%、DSPはパフォーマンスが3倍、電力効率が10倍に改善しているという。SoC全体では「Symphony System Manager」という仕組みが採用されているため、GPUやDSPとも緊密な連携が可能になっている。
こうした性能を活かし、「Unreal Engine 4」での3Dグラフィックスや、低照度での撮影を行なった際のノイズ低減といった機能に対応する。合わせて、機械学習で画像を認識する「Zeroth」に対応。
同様に、機械学習を用いて、未知のマルウェアが行なうゼロデイアタックを防ぐ、セキュリティー機能もチップセットとしてサポートしている。このほか、従来より38%高速化した「Quick Charge 3.0」も利用可能だ。
810と比較し35%の省電力化を実現
1月と3月の大型発表会では搭載製品が登場か
パフォーマンスが向上した一方で、実利用環境での省電力化も進んだ。同社はメーカーやキャリアにリサーチをかけ、ユーザーの使い方をモデル化。それに基づき、各世代のチップセットの消費電力を測定している。マクドノー氏が示した資料によると、Snapdragon 801を1としたとき、Snapdragon 820は0.65まで消費電力が下がっているという。なお、Snapdragon 805が0.95、Snapdragon 810が0.92と、消費電力の低下がわずかだったことに比べ、Snapdragon 820では大きな削減が実現している。
マクドノー氏は、「すでにSnapdragon 820は、70以上の端末で採用されることが決まっている」と自信をのぞかせた。チップセットは10月31日にメーカーに対して出荷されており、デモ用の端末に組み込まれていたチップセットも、すべて製品版のSnapdragon 820となっていた。
おもな端末はプレミアムクラスのスマホになり、来年から徐々に出荷が開始される。早ければ1月のCESや、2月のMobile World Congressといったイベントで、メーカーが実機をお披露目する可能性がある。