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VC出身の異色社長「薄い財布」に賭けた執念と情熱 (1/2)

2015年12月10日 11時00分更新

文●野本纏花

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最新トレンドを実践するEC事業者に取材し、どのように成果をあげているのかをレポートする「最新トレンドの成功者から学べ! ECサイト研究レポート」。今回は、「薄い財布」などのユニークなオリジナル雑貨を扱う「SUPER CLASSIC」を紹介する。ベンチャーキャピタルの投資家出身という異色の経歴を持つ、運営会社バリューイノベーションの代表取締役 南 和繁氏に商品開発とショップ運営の流儀を聞いた。

「薄い財布」ができるまで

「自分が事業を立ち上げたとき、『1人でがんばる』『自分がやりたかったことをやろう』と決めていました。ずっと探していたのに見つからなかった、『薄い財布』を作ってみようと始めたんです」(バリューイノベーション代表取締役の南 和繁氏)

2009年に設立されたバリューイノベーション。同社は設立当初、ベンチャーキャピタルであるngi group(現ユナイテッド)で働いていた南氏の経験を活かし、Webサイトの受託制作や飲食業界のコンサルティングなどを主力としていた。

現在の同社の事業は、オリジナル雑貨を販売するECサイト「SUPER CLASSIC」の運営がメイン。主力商品は、南氏がモノづくりを始めるきっかけとなった「薄い財布」だ。当時流行していた薄い携帯電話の作り方を参考に、氏自らが考案した商品だ。

「SUPER CLASSIC」トップページ

「SUPER CLASSIC」運営会社バリューイノベーション株式会社 代表取締役 南 和繁氏

南氏は以前から、財布をポケットに入れる際の「快適さ」を決めるのは、「小ささ」ではなく「厚さ」だと考えていた。そんなときに読んだ、携帯電話エンジニアのインタビュー記事が突破口になった。

「携帯電話は、一番厚いパーツを真ん中に置いて、それ以上厚くならないよう、他のパーツを周りに配置しているのです。一方、財布は、カードや小銭という厚いものが重なり合って厚くなっています。携帯電話のように、パーツが重なり合わないように配置すれば、薄い財布ができるのではないかと思いました」(南氏)

サイトで説明されている薄い財布の考え方

最初はボール紙で試作した薄い財布を実際に使ってみたという。その使い心地を体感しながら、試行錯誤を繰り返した。設計がかたまると試作に臨んだが、素材に使いたい革で何かを作った経験はない。途方に暮れた。

「結局、東急ハンズでたまたま実演販売していた女性に、革の扱い方を教わりました。革を扱うと、意外に大きな音が出るんですね。家に帰って夢中で財布を作っていたら『うるさい』と奥さんに怒られたので、駐車場で試作を重ねました(笑)」(南氏)

売れるモノは作らない

2009年9月に完成した薄い財布を製品化し、2009年12月にはSUPER CLASSICのサイトを立ち上げた。宣伝に使ったのはGoogle AdWordsのみ。発売当初の2009年9月1カ月間で90万円を売り上げ、2010年12月は1カ月で1600万円を売り上げた

「SUPER CLASSIC」の主力商品薄い財布

「SUPER CLASSIC」の主力商品薄い財布

商品の製作は、国内の外注先(職人さん)に依頼しているが、2011年初頭までは、発送もすべて1人でやっていた。つい最近までスタッフは3人で、現在は6人体制で運営している。

「少人数にこだわるのは、『無理に成長させない』のが戦略だから。無理やり成長させて売上規模や人数が増えると、固定費も確実に跳ね上がり、今のような商品開発ができなくなってしまう」

SUPER CLASSICの商品は長い期間をかけて開発されたものばかり。普通の雑貨のように四季やイベントシーズンを狙わず、薄い財布も完成までに30回の試作を重ねている。南氏が作るのは、自分が欲しいモノだけ。売れるモノは作らない。

マーケットが欲しいモノと自分たちが欲しいモノが重なれば、必然的に売れる商品になる」(南氏)

自分が作りたいモノだけを作って、多くの人に喜んでもらえるのなら、これほど幸せなことはないだろう。売れるモノを作りたい、というジレンマから、そう簡単に逃れられるのだろうか。

「もちろん『こうしたら売れるな』『こうした方が利益は高いな』と、わかってきます。それでもあえて自分が欲しいか欲しくないか、という基準をかたくなに守っています。10個作った商品のうち2個が売れたら、それでいい。6個はそこそこ、2個は売れなくてもいいモノを作る、という感じです」

そう話す南氏だが、かつてはマーケットを見て売れる商品を作ろうと考え、量販店が作るような商品を作ったことがある。似たような商品であれば価格競争になり、価格では大手には絶対に勝てない。この苦い経験から、100人中2〜3人が「こんなの欲しかったんだ!」と言ってくれるモノを作る、レッドオーシャンには行かないと、再確認したそうだ。

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