このページの本文へ

人気鍋のオウンドメディア、ヒットの理由はトマトごはん (1/2)

2016年01月29日 11時00分更新

文●野本纏花

  • この記事をはてなブックマークに追加
本文印刷

最新トレンドを実践するEC事業者に取材し、どのように成果をあげているのかをレポートする「最新トレンドの成功者から学べ! ECサイト研究レポート」。今回はフランス生まれの高級キッチンウェアブランド「ル・クルーゼ」を紹介する。主婦のハートを鷲掴みにするレシピをフックにしたオンライン・コミュニケーションの手法について、ル・クルーゼ ジャポン(以降、ル・クルーゼ)PRマネージャー 頼廣直子氏とWEBコーディネーターの及川真由美氏に話を聞いた。

ル・クルーゼはカラフルでかわいいだけじゃない

1925年、鮮やかなオレンジ色の鋳物ホーロー鍋が世に現れた。昨年90周年を迎えたル・クルーゼだが、当時はお鍋といえば鉄の色(=グレー)。センセーショナルな色味と高いデザイン性は、ラジオを通じてたちまちフランス中の評判となった。

ル・クルーゼ ジャポン


YouTubeの「Le Creuset Japon」に掲載されている「ル・クルーゼのお鍋の選び方 」

日本上陸は1991年。それから25年、多くの主婦の憧れの的としてロングセラーを続け、順風満帆に見えるル・クルーゼだが、裏ではこんな課題を抱えていた。

「一度手にしたら二度と手放せないお鍋ですが、使ったことのない方からは『重い・高い』と言われてしまう」(頼廣氏)

ル・クルーゼ ジャポン株式会社マーケティング部PR・広告宣伝マネージャー 頼廣直子氏

鍋はコートのように「冬が来たら買う」といった緊急度が高いものではなく、“今、買わなければいけない理由”を伝えづらい商品だ。

ル・クルーゼがレシピサイトに力を入れる理由

ル・クルーゼの売り上げは、ホールセールと直販(直営店+オンラインショップ)が、2010年までは5対5だったが、直近では4対6になっている。その要因は、直営店が3店舗から19店舗に増加したこと、直営オンラインショップが右肩上がりで成長していることだ。

オンラインショップでの懸賞キャンペーンや会員限定の優待セールといった施策の結果、2014年から2015年にかけてメルマガの登録者数は約20%アップし、会員数も約30%で増える好調ぶりだ。

そんなル・クルーゼのオンライン施策の柱の1つとなっているのが、オウンドメディアである「レシピサイト」だ。前身となるコミュニティーサイトは2011年4月に立ち上がっており、昨今のオウンドメディアブームが始まるはるか前からスタートしていた。

「以前のコミュニティーサイトは、ただレシピが並んでいるだけの簡易的なもので、ユーザー目線で見ると非常に使いにくいものでした。そこで2013年の8月に今の形にリニューアルしました」(及川氏)

ル・クルーゼ ジャポン株式会社マーケティング部 PR・広告宣伝 WEBコーディネーター 及川真由美氏

レシピページ

「ル・クルーゼの鍋のことを365日考える人はいないが、料理のことなら1日1回は必ず考えているはず」と頼廣氏は、料理=レシピがル・クルーゼと顧客との“接点”になると考えている。

レシピは新規顧客のためだけではない。「鍋のデザイン性に魅かれてル・クルーゼを買ったものの、どう使っていいのかわからない」という既存顧客の声に応え、リピーターになってもらうために、以前からリアル店舗ではスタッフ手作りのレシピを印刷して配布していた。

「レシピが顧客との接点になる」との考えの根底には、そこで得た感触もあった。

「ヨーロッパではル・クルーゼのような厚手の鍋は、生活に馴染んでいますが、日本人がよく使うのはフライパンやアルミ製の薄い鍋。ル・クルーゼのお鍋で料理をすると、とってもおいしくなるんだという機能の部分を伝えるために、レシピは欠かせないツールだと考えています」(頼廣氏)

前へ 1 2 次へ

この連載の記事

一覧へ

この記事の編集者は以下の記事をオススメしています