今年3月、日本法人を設立し、日本市場への本格的な取り組みを始めたスキャリティ(関連記事)。同社のSoftware-Defined Storage(SDS)製品「Scality RING」は、ペタバイト級の拡張性とオブジェクト/ファイル/ブロックアクセスが可能な汎用性が特徴で、クラウドサービス事業者からエンタープライズまで幅広い顧客を持つ。来日した同社幹部2名、および日本法人代表に、最新機能のアップデートや顧客動向などを聞いた。
メディア企業から諜報機関、一般企業まで拡大する顧客層
ASCII.jpでは昨年11月、同社CEOのジェローム・ルキャット氏へのインタビューを行った(関連記事)。同社の旗艦製品、Scality RINGはスケールアウトが容易で高速、可用性の高い堅牢なSDSであり、オブジェクトアクセスだけでなく汎用的なファイルアクセスやボリューム(ブロック)アクセスもできる点が大きな特徴だ。
数百TBからシステム停止なしでスケールアウトしていくことのできるRINGは、すでにペタバイトクラスの顧客を80社ほど抱えている。米国政府機関における30ペタバイトのアクティブアーカイブ、分散コンピューティング基盤用の500ペタバイトという導入事例もある。
この1年間の顧客動向、導入事例についてキング氏は、「特に最近、新たな動きが多いのはメディア業界だ」と語った。1年前、メディア業界の顧客は2、3社しかいなかったが、現在では15社以上に増えた。コンテンツ配信から社内ワークフロー、メディアアーカイブまで、多様な用途でRINGが本番稼働しているという。
もう1つ、RINGの新たな導入目的になっているのが「研究用データのアーカイブ」だ。さまざまなセンサーやカメラから収集される膨大なデータを長期間保存していくうえで、理論上は無限のスケーラビリティを持つRINGを採用するのが理に適っているからだという。
「欧州のある自動車メーカーでは、8ペタバイトのRINGを導入し、実験車の車載カメラ映像を保存するために利用している。この運転映像は、自動車の衝突回避アルゴリズムを研究するための基礎データとなる。つまり、非常に価値の高いデータをRINGで保存しているわけだ」(キング氏)
同様の採用例として、米国のハワードヒューズ医療研究所における頭脳スキャンデータの長期保存、北米や英国の政府諜報機関における監視カメラ映像などの証拠データ管理などがある。
「コネクテッドカーやネット家電など、IoT分野での利用も始まっている。ある新しい顧客は、販売した製品から収集するユーザーデータを数年間分格納する目的でRINGを導入した。製品のユーザー自身で、過去のデータをさかのぼって参照できるサービスを提供し、新たな価値を提供できている」(スペシアレ氏)
またより身近な例としては、「一般企業において、従来のテープメディアに代わるバックアップターゲットとしても利用されている」とキング氏は説明した。広帯域のI/Oにより、高速なバックアップ/リカバリが可能だという。
このように、幅広いユーザーニーズをRINGがカバーできるのは、オブジェクト型、ファイル型という両方のアクセスに対応しているからだ。それがRINGの大きな「強み」になっている。
「自らアプリケーションを開発することの多い研究機関や政府諜報機関では、最近はオブジェクト型のストレージインタフェースが好まれる。一方、メディア企業や一般企業では、従来型のファイルシステムインタフェースがまだ必要とされている」(キング氏)
またキング氏は、いずれの顧客においても、最近はジオレプリケーション(遠隔地へのデータレプリケーション)へのニーズが高まっていると語った。
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