SAPジャパンは11月12日、次世代ビジネススイート新版「SAP S/4HANA Enterprise Management(以下、S/4HANA EM)」を発表した。
インメモリプラットフォーム「SAP HANA」に最適化されたコア部に、業界別(LoB)ソリューションを組み合わせたもので、企業やエンド・ツー・エンドで業務のデジタル化を推進できる。
LoBソリューションとしては、これまで提供していた会計向けの「Simple Finance」以外にも、営業/サービス/マーケティング/調達/製造/サプライチェーン/アセット管理/研究開発/人事といった計10種の業務部門のビジネスプロセスをカバーする。
S/4HANAは、SAP Business SuiteをHANAに最適化させるべく、一からコードを書き起こしたという新製品で、2015年2月に産声を上げた。6月には顧客に選択肢を与えるため、クラウド版(SAP S/4HANA Cloud Edition)をリリース。10月にはグローバルで1300社、国内で50社以上に導入された。
S/4HANA EMは、その最新版として、新たに「ユニバーサルジャーナル」「財務決算」「資材所要量計画」「在庫管理」などの機能も、SAP HANAに合わせて再構築した。
特に「サプライチェーン」で提供される「在庫管理」については、「リアルタイム性によるイノベーションが実現する」と、SAPジャパン インダストリー事業統括本部 シニアディレクターの大我猛氏はアピールする。
在庫管理においては、実際の在庫数とシステム上の在庫数が異なることがよくある。在庫の変化をシステムに反映するのは夜間のバッチ処理で行うことが多く、反映されるまでギャップが生じてしまうのだ。「システム上は存在する在庫が実際にはなかった」という事態も起こりうるため、多くの企業はバッファとして余剰在庫を抱えている。それは当然、無駄なコストとなる。
「根本的な原因は、大量の部品を払い出したときなど、在庫システムの処理が重くなるため、業務時間中にリアルタイムに処理するのは避けて、夜中にbatch処理を行わざるを得ない。つまりは処理性能の問題だ」(大我氏)
SAP HANAに最適化された「在庫管理」では、インメモリによる高速処理で「リアルタイム在庫管理」を実現。そうした在庫のギャップをなくせるほか、在庫削減に向けた分析・計画立案も可能になるという。
「例えば、在庫金額の大きい部品を即座に特定し、その回転率を上げるため、JIT(ジャストインタイム)納入に切り替えるといった判断がリアルタイムで行えるようになる」(大我氏)
日本語版の発売は、グローバルと同じ11月12日より。まずはオンプレミス版からの提供となり、近くクラウド版も提供する。
新版の普及を加速するため、全世界20社を対象に「早期顧客プログラム」が進められている。日本でも野村総合研究所(NRI)をはじめとする3社が参画し、いち早くS/4HANA EMの導入検証を進めてきた。その成果として、NRIセキュアテクノロジーズ(NRIセキュア)が導入。日本第一号の導入プロジェクトとなることが決まった。
NRIはこの経験を活かし、「S/4HANA EMに対応した導入テンプレート」の提供を開始する。同時にSAPジャパンも既存ERP環境からS/4HANAへの移行を支援するサービスを、NRIのようなパートナーや顧客に提供し、市場への訴求を図る方針。パートナー企業との協調も順調に進んでおり、「SAP S/4HANAコンソーシアム」参加22社すべてがテンプレートのHANA化を完了しているとのことだ。