SAPジャパン、日立、ESRIジャパンの3社は11月9日、社会インフラに関する将来予測を可能にするビッグデータ利活用システム基盤を発表した。特定区域の混雑状況などさまざまな将来予測を迅速に行い、地図画面上で瞬時に可視化する。3社の製品を連携させて開発、実用化に向けた検証を行った。
SAP ジャパンの共同研究施設「SAP Co-Innovation Lab Tokyo」で実施されたプロジェクト。インメモリプラットフォーム「SAP HANA」と、超高速データベースエンジン「Hitachi Advanced Data Binder(HADB)」、およびESRIジャパンの地理空間情報を活用した意思決定を支援する「ArcGIS」を組み合わせ、将来予測した結果を地図画面上へ瞬時に表示する。
検証では、東京大学空間情報科学技術研究センターが提供する、約 130 万人分の移動履歴とその交通手段に関するデータ(人流データ)を活用し、タクシーの最適配車を想定したシミュレーションを実施。まず、東京首都圏のある特定日時における人流データを現在の状況と想定し、そのデータを基にSAP HANAで「現在の混雑箇所」を把握する。そして、現在の混雑箇所から数十分後に移動する可能性が高い複数地点を、HADBに格納した膨大な履歴データの中から統計的に導き出すことで将来予測を行い、これらの結果をArcGISの地図画面上に高速に表示することに成功した。
将来的にどのような役に立つのか。活用例として以下の3点を挙げる。
まず、人流予測による快適な都市交通インフラの実現。現在の混雑箇所の特定と、過去の移動パターンを組み合わせて分析することで、将来の混雑箇所や移動先候補が予測でき、タクシーなどの効率的な運用が実現する。
次が、最適な集荷・配送ルートの予測による広域物流業務の効率化。例えば、配送物の集積や配送の状況に関するデータを分析することで、荷物の配送状況をリアルタイムに把握できるほか、過去の配送パターンを踏まえ、季節や時間ごとに最適な集荷・配送ルートを選べるようになる。
最後が、インフラ設備の故障予兆把握と保守点検ルートの最適化。稼働停止が許されない電力・水道といったインフラ設備の安定稼働に貢献する。具体的には、複数の地域に点在する設備機器のセンサーデータを分析し、故障の予兆がある部品をリアルタイムに把握し、過去の故障履歴から故障パターンや適切な部品の交換タイミングを予測。保守点検作業の手順や作業員の移動ルートを最適化する。
3社は今後、実用化に向けた取り組みを加速させる。