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【後編】現役ミリタリーライター宮永・有馬のミリタリー放談

超大和型!氷山空母!WoWsに登場させたい8隻のロマン艦

2015年11月26日 18時00分更新

文● 有馬桓次郎 編集●南田剛志、村山剛史/ASCII.jp

氷と英国面を固めたなにか=氷山空母ハバクック

有馬 「ハバクック」は……今日のラインナップに入れてはみたんですが、どう考えてもキャンペーンでのネタ扱いしかないでしょうねえ(笑)

宮永 そもそも、何をもって撃沈とするのか判らないくらい巨大ですからね。甲板上を『World of Tanks』の戦場にできる(笑)

有馬 まさに学園艦サイズ(笑) 今でいうメガフロートみたいなものかもしれませんねこれ。ただし最大速力で10ノット程度と、非常に足が遅いんですけど。

宮永 むしろ海流に乗せて運んだり、自走できるけど最終的にはタグボートで引いて運んだりしたほうがいいかもしれません。何というか、これはもう奇想天外艦ですね。日本の五十万トン戦艦とか、ロシアでポポフさんが設計した円形戦艦とかと同じです。

Image from Amazon.co.jp
1/700 露海軍円形砲艦 ヴァイス・アドミラル・ポポフ

有馬 あー! ありましたね円形戦艦。お掃除ロボットみたいなやつ!

宮永 射撃プラットフォームとしては安定性も良くて理屈にはかなってるんだけど、くるくる回っちゃってまともに前進することができなかった、というね(笑)

※ハバクック……イギリスの発明家ジェフリー・パイクが提唱した、氷山を丸ごと航空母艦とする計画のこと。氷にパルプを混ぜ込んで強度を上げたパイクリートを材料に全長600m以上という巨大空母を建造する計画で、実際にイギリス海軍において検討がなされている。
※日本の五十万トン戦艦……明治時代、日本海軍の金田秀太郎中佐が提唱した超巨大戦艦プランのこと。「何隻もの軍艦を揃えるより、1隻で1国の海軍力に匹敵する戦艦を作ればよい」として考えられたもので、もちろん空想の産物である。
※ポポフの円形戦艦……帝政ロシア海軍のアンドレイ・ポポフ中将が設計した一連の円形艦のこと。別名「ポポフキ」とも呼ばれる。ちなみに実際に建造され、露土戦争で実戦にも投入された。

ソ連ツリーを眺めていると
我々はしょせん東洋のミリオタなんだなって思い知らされる

有馬 ソヴィエツキー・ソユーズ級戦艦については、先ほど話題にのぼったプリエーゼ式円筒防御を当初から導入した艦として計画されてましたよね。

宮永 最近実装されたソ連ツリーの駆逐艦を見ても、イタリアから技術供与を受けた艦が非常に多いですね。もしソヴィエツキー・ソユーズ級が実装されるとするなら、おそらくはプリエーゼ式を導入した計画のものが入ってくると思います。魚雷が命中したときのダメージが多少軽減されるとか、舵や機関故障が起きにくくなるとか、そういったデータの形で反映されることになるでしょうね。

(C) Wargaming.net

有馬 ……あれ? そういえばプリエーゼ式を付けてる艦って、ソ連ではこれくらいしかなかったんでしたっけ?

宮永 そもそもソ連にはこれくらいしかまともな戦艦計画がありませんから。これ以前のになると、30cm砲を搭載したガングート級とインペラトリッツァ・マリーヤ級くらいしかないので。ちゃんとした超弩級戦艦といえるのは、ソ連ではソヴィエツキー・ソユーズ級しかありません。

有馬 ソヴィエツキー・ソユーズ級は非常に多くの計画案があった戦艦なんですけど、先ほど言われたプリエーゼ式を導入した案って割合新しいほうの案じゃないですか。それ以前の、初期の頃の計画案については実装は無いんでしょうか? たとえば、アメリカのギブス&コックス社に発注して冗談のように返されてきた、46cm三連装砲搭載の航空戦艦案とか(笑)

宮永 うーん、この航空戦艦案について考えるとき、私はいつも「じゃあ搭載機は何を積むの?」ってことを思うんですよ。そして同僚からは「何だって積めるよ」と返されちゃうんですけど(笑)

 でも、このゲームはロシアに開発拠点を置いて、ロシア国内にも多くのファンを抱える作品ですから、ソ連はまともな軍艦がなかったから残念だよね、で終わるわけにはいかないですよね。

 しょせん我々は東洋のミリオタなんだなって思い知ったのが、ロシア語でしか読めない海軍資料のなかに、我々がまったく知らない計画案がいっぱい出てくるんですよ。

 ソ連ツリーは駆逐艦が1つのヒントになると思うんですけど、現状で、Tier2とTier9および10の3種類が計画艦なんです。ソ連海軍は、第二次五カ年計画から第三次五カ年計画へと切り替わる頃に大量の建艦計画を考えてたんですけれど、Tier9、10がまさにその頃に計画されていた駆逐艦ですね。

 たとえばTier9の「ウダロイ」は第35号計画艦で、Tier10の「ハバロフスク」は第24号計画で検討された駆逐艦なんです。これが実装された理由は「ナチスとの戦争が起こらなければ、我々はこれらの艦を手にしていたはずだ!」っていう(笑)

有馬 まさにロシアの海軍オタクが抱える夢なんですね(笑)

Tier9ソ駆逐艦「ウダロイ」 (C) Wargaming.net

ハバロフスクはソ連海軍オタクが抱えるロマンの結晶だ!

宮永 「ハバロフスク」については、計画案の一文で「世界最強の嚮導駆逐艦を目指した」っていうことで、そのスペックがそのまま反映されてたりするんですね。そういうことが可能ならば、ソ連ツリーはある程度の厚みでラインナップが進むんじゃないかと。

有馬 そういえば『World of Warships』で、ソ連の魚雷の射程はアツいですね(笑)

Tier10ソ駆逐艦「ハバロフスク」 (C) Wargaming.net

宮永 アツいですよね、あれに関しては少し言いたいこともあるんですけどね。「そりゃ黒海限定だろ、お前ら荒れた海に出たことないだろ」って(笑)

 Tier10の「ハバロフスク」は、名前は架空なんですけど、ベースとなった第24号計画ってのは「世界最高速を目指した。砲撃力も世界最高峰である。装甲配置も優れている」と。でも、どの計画だって考え出されたときはそうじゃないですか。そこから実際に造ってみて、初めて性能にバラつきがでてきて最終的な評価につながるものです。

 しかしソ連には計画艦しかないものだから、設計スペックをそのまま反映する以外に方法がないんですね。そりゃ強くもなるわって話で(笑) ありゃソ連のロマン艦の集合体ですね

※ソヴィエツキー・ソユーズ級戦艦……帝政ロシア時代の「インペラートル・ニコライI世」(2代)以来、戦艦の建造が絶えていたソ連において、第二次大戦前に計画された戦艦。イタリアの技術供与を受け当初はアメリカに設計打診したが、アメリカはこれを拒否。あらためてソ連国内で40cm三連装砲を3基搭載する戦艦として設計され、4隻が起工した。だが3、4番艦は1940年に、1、2番艦は独ソ戦勃発直後の1941年に、それぞれ建造中止となった。
※ガングート級戦艦……帝政ロシアで建造された、初の弩級戦艦。同型艦3隻はいずれも第二次大戦でも活躍。2番艦「マラート」は有名なハンス・ウルリッヒ・ルーデルの急降下爆撃により大破している。
※インペラトリッツァ・マリーヤ級戦艦……帝政ロシアで黒海艦隊向けに建造された弩級戦艦。完成した同型艦3隻はいずれも戦火を経験することなく、1番艦「インペラトリッツァ・マリーヤ」は原因不明の爆発事故により喪失。残る2隻も第二次大戦勃発前に処分されている。
※嚮導駆逐艦……駆逐艦隊を指揮するための設備を有した大型駆逐艦のこと。

宮永・有馬のミリタリー放談、これにてお開き。またの機会をお楽しみに!

前編はこちら

(提供:ウォーゲーミングジャパン株式会社)

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