このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 5 次へ

世界の海は俺の海『World of Warships』へヨーソロー ― 第2回

【前編】現役ミリタリーライター宮永・有馬のミリタリー放談

航空戦艦伊勢!重雷装艦北上!WoWsで語るロマン艦の世界~WGJ宮永忠将氏

2015年11月25日 18時00分更新

文● 有馬桓次郎 編集●南田剛志、村山剛史/ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 厚くご好評をいただいた、WGJミリタリーアドバイザー・宮永忠将氏インタビューの第2弾。今回は若干趣向を凝らし、海戦ストラテジー『World of Warships』の主役である艦船、なかでもロマンはあるが実用性は……だったフネを中心に語っていただいた。お相手はミリタリーライターの有馬桓次郎氏。現役ミリタリア2人による熱い“ロマン艦”トーク、長編なので肩の力を抜いてお楽しみください。連載一覧はこちら

後編はこちら

ウォーゲーミングジャパンのミリタリーアドバイザー・宮永忠将氏に再びご登場いただいた。WoWsロゴ付きのPCは、会社が宮永氏の奥様専用(?)という名目で組んだ「ペイマックス(PAYMAX)2号機」

超絶グラの軍艦が入り乱れる大海戦ライフを満喫
海戦ストラテジー『World of Warships』が楽しい!

(C) Wargaming.net

 プレイヤー数1億人超を誇るオンラインタンクバトル『World of Tanks』のWargaming.netが、今秋に正式サービスを開始したPCゲーム、それがオンライン海戦ストラテジー『World of Warships』(基本プレイ無料)。

 プレイヤーは世界各国の軍艦を操り、2組に分かれて最大12隻対12隻の海戦バトルを行なう。すでに日米を中心に約100種類をラインナップ。今後もソ独英など各国の艦が続々登場予定。リアルさで1つ上に突き抜けた美麗グラフィックは、本記事の宮永氏をはじめとするミリタリーアドバイザーが世界中から収集した貴重な設計図などを元に作られたもの。かつて海原を暴れまわった艨艟を手軽に操れる爽快感は格別だ!

 会員登録や基本的なプレイ方法については、この連載の第1回「戦艦!主砲!轟沈!『World of Warships』でオンライン海戦を楽しむ方法」を参考にどうぞ!

ゲームとリアルのすり合わせは大事!
「仕事に疲れて帰宅後、索敵で2時間かかるゲームはちょっと……」

宮永 『World of Warships』の開発スタッフって面白くて、我々が『本当はこうじゃないの?』『こんなことはやらないの?』って思うようなことはとっくに考えているんですよ。たとえば夜戦とか。でも、実際やってみたらあんまし面白くなかったと。

有馬 夜戦(笑)

宮永 リアルに暗くしてやってみると、インターフェース的な無茶があるそうで。夜戦こそ艦隊運動がキモで「前の艦から離れるな」って世界なのに、いつものようにバラバラで動き出すと、敵を発見できないまま終わるらしい(笑)

 そういった意味でリアルな海戦に追いつけない部分はあるし、そこに近づけるには色々考えなきゃならない部分があるのでしょうね。

有馬 私としてはぜひ実装して欲しいです。たとえば水偵はすでに実装されているので、そこから*吊光弾を落として敵艦隊がぼうっと闇の中に浮かび上がったりとか、そういう形で期待したいですね。

現状、夜戦と言えるような“真っ暗闇”のマップは存在しないものの、最新のアップデートで、オーロラが浮かぶ“白夜”をイメージしたマップが実装された。飛翔する砲弾の軌跡が美しい

宮永 劣勢な日本海軍は夜戦に勝機を見出して訓練を積んでいた訳なんですけど、でも本当はどこの国の海軍関係者も、夜戦は嫌だったんじゃないかと思うんですよ。あんなに混沌とした状況で危険に晒される訳なんですから。そこをアメリカはレーダーなどの電子装備に集中して、混乱する夜戦でも危険を回避しようとしたわけです。

 ところで、これは海上自衛隊関係者から言われたんですけど、「海戦で一番重要な索敵がない点で『World of Warships』はけしからん!」と。自分たちと敵の位置を把握して、敵の目的を推定した上で決戦海域を定め、そこに至る艦隊運動をいかにとるかが重要なのに、『World of Warships』ではそこが省略されてるわけです。お説ごもっともですね(笑)

 でも、仕事に疲れて家に帰ってきて、さてPCつないで『World of Warships』をやろうってときに、たとえ簡略化したとしても1プレイあたり3~4時間かかるようじゃゲームにならないわけですよ。

有馬 関係者の方が言われていたのは、*発見電を出すまでの部分も含めて“海戦”なのだ、ということですよね?

宮永 そうです。確かに過去には、戦闘の前に長い時間をかけて索敵をするゲームはありました。でも、売れ行きは芳しくなかったようです。

有馬 私としての理解なんですけど、『World of Warships』はもうすでに発見電が打たれた後の海戦ゲームだと思うんです。艦隊司令官の仕事を再現するゲームなら、確かに発見電を出すまでの部分こそ重要なんですけど、このゲームは艦長という最前線の仕事を再現するゲームじゃないですか。

 ですので『World of Warships』内の状況としては、すでに敵味方双方ともに概略位置が把握されていて、各艦に対して戦闘開始指令が伝達された後の交戦を再現するゲームなんじゃないかと。

宮永 状況としては*サマール沖海戦に近いかもしれませんね。晴れてみたら「あれっ、向こうに何かいるぞ? 敵だ、各艦突撃!」って感じで。

 ゲームとして、海戦という大きな事象のどこを切り取るかってことは最初にかなり考えた部分だと思うんです。そのなかで、一番アドレナリンが出るタイミングを切り取って再現するのがゲーム開発の手法としては当然ですからね。

宮永忠将
 Wargaming.net社ミリタリー・アドバイザー。大学院まで西洋古代史(軍事植民史)を専攻。2003年4月よりアナログ・シミュレーションゲーム雑誌「コマンドマガジン」(国際通信社発行)の編集者として勤務。2008年に主に軍事、国際関係、歴史分野での執筆、翻訳、デザイン、各種軍事監修で活動。著書、訳書多数。2013年8月より現職にあり、グローバルID"Phalanx"としてWargaming.netの調査および広報活動に従事している。

有馬桓次郎
 ミリタリーライター。主に近現代の軍事史や歴史、民俗史を中心として各誌で執筆。またゲームや小説作品の軍事考証も担当している。近年の研究テーマは「日本海軍の料理史」。ASCII.jpには濃いミリタリーネタが必要になった際に賑やかし役として呼ばれる傾向にある。著書は「戦車に夢中です!」(小学館)、「20世紀の軍人列伝」「世界の名脇役兵器列伝」(イカロス出版)など。

意外にも魚雷は1ゲームにつき1、2本しか当てていない
これ以上リアルに振ると、プレイヤーの“ストレスがマッハ”に

宮永 これは魚雷の仕様についても同様でして。私と有馬さんは同じミリタリーライターとしてプロパティーが似てるじゃないですか。だからお判りになると思うんですけど、私このゲームをテストプレイしてて、最初は魚雷が簡単に命中するのって本当に不愉快だったんですよ(笑)

有馬 あー、判ります。実際にはこんなに当たるはずないのにって(笑)

宮永 そもそも魚雷なんて、船底をくぐっていったり途中で失速したり、たとえ命中コースに乗っていても2本のうち1本は爆発しなかったりと厄介なものなんですよ。でも『World of Warships』では、照準線に重ねれば、相手が回避行動をとらない限り確実に当たって大ダメージを与えてしまう。魚雷なんてそう都合のいいもんじゃない、と思ってたんですね。

 ところが、ゲーム内の魚雷発射管を持つ艦の発射回数と1回の発射につき何本当たるかで統計を取ってみたら、1ゲーム中に命中は1、2本程度らしくて意外に当たってないんです。やられるときは4本命中したりしてその印象が強く残っちゃうんですけど、実際はゲームでもそんなに命中率は良くないんです。

 「ここからさらに当たらないようにすること自体がプレイヤーにとって大変なストレスになってしまう」と説明を受けて、私はなるほどと思ったんですね。

 これは確かに軍事的な視点ではなくてゲーム的な視点ではあるんですけど、ゲーマーとしてはこれこそが魚雷という兵器に対しての真実なんだ、と納得できたわけです。今は軍艦というものに詳しい人々の希望や不満というのは、実際のゲームに対して尖りすぎている部分があって、“ゲームを開発する”という目的からは離れていると認識されてるみたいですね。

有馬 つまりリアルはリアル、ゲームはゲームとして、現状ではよりプレイヤーが面白さを求められる方向においてリアルを一部オミットすることもある、ってことですね。

※吊光弾……夜間、敵の上空でパラシュートをつけて投下される照明弾のこと。主に日本軍で使われた用語。
※発見電……偵察機や洋上監視をしていた船などから、敵艦隊を発見した際に打電される電報のこと。
※サマール沖海戦……1944年、フィリピン沖で生起したレイテ沖海戦の中の戦いの1つ。「大和」の主砲が敵艦に向けて発射された唯一の例とされる。

(次ページでは、「ロマン艦の中のロマン艦! 伊勢型航空戦艦はWoWsでいつ登場?」)

前へ 1 2 3 4 5 次へ

この連載の記事

ASCII倶楽部

最新記事

ASCII.jp特設サイト

ASCII.jpメール アキバマガジン

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII @LIVE 2016、この秋開催

ピックアップ

デル株式会社