王道グループウェア「サイボウズ Office」をとことん使ってみる 第2回
シンプルさをきわめた「モバイル表示」の裏にある設計思想とは?
どこまで使える?サイボウズ Officeのモバイル対応をとことん試す
2015年11月25日 11時00分更新
サイボウズ Officeの最新バージョンでは、モバイル対応が強化されている。クラウド版の登場で、手軽にモバイルデバイスが使えるようになった一方、外出先での使い勝手は大きな課題だ。アスキーのオオタニがモバイル対応をとことん調べてみる。
サイボウズ Officeのモバイル対応の歴史は古い
グループウェアを利用すると、社内のユーザーで業務に必要なあらゆる情報を共有できる。会議や外出のスケジュールや取引先の連絡先、業務資料、従業員同士のやりとり等々。昨今ではノートPCや携帯電話のみならず、スマートフォンやタブレットが業務に導入されていることも多いため、当然グループウェアを外出先や出張先でも使いたくなるのが人情と言える。クラウドの普及にともない、サイボウズ Officeもこうしたモバイルデバイスの対応を強化している。
サイボウズ Officeのモバイル対応は実は歴史が古い。サイボウズは1990年代後半から通信機能のないPalmのようなPDA(Personal Digital Assistant)で持ち歩くためのシンクロソフトやiモードケータイ用のモジュールなどをいち早く投入してきた。2009年にはオンプレミスのサイボウズ Officeサーバーにセキュアにアクセスするための「サイボウズリモートサービス」の提供を開始する一方、スマートフォンの同期アプリである「KUNAI」をリリース。ガラケーやBlackBerry、Windows Phoneなどのデバイスがメインだった時代からモバイルデバイスでの利用にこだわってきたわけだ。
昨今、iOSやAndroidなどのスマートフォン・タブレットのニーズが急増し、cybozu.comのようなクラウドサービスが登場したことで、サイボウズ Officeやエンタープライズ版の「ガルーン」ではモバイル対応を一層強化している。10月にリリースされた「サイボウズ Office 10.4」ではスマートフォン専用のモバイルビューが用意するほか、11月にはiPhone専用の無料アプリケーション「サイボウズ Office 新着通知 for iPhone」を提供開始している。
スマートフォンやタブレットでPC用のグループウェアを利用するにあたっては、操作性がきわめて重要だ。PCに比べて画面サイズが小さく、物理キーボードもない。基本的には片手で操作になり、レスポンスも重要になる。スマートフォンやタブレットを前提に開発された最近のアプリならともかく、PC前提の既存のアプリケーションの場合、使い勝手に難のあるアプリは多いが、サイボウズ Officeはどこまで使えるのか見てみよう。
PC版と同じような機能が使えるスケジュール
さっそくクラウド版のサイボウズ Officeをスマホから利用してみる。とはいえ、特別なアプリを用意する必要はない。スマートフォンやタブレットからユーザーポータルにアクセスして、ログイン。まずはPC版が表示されるが、下で「モバイル表示」が選択できる。
モバイル表示では「通知」「スケジュール」「メール」「メッセージ」「掲示板」「ワークフロー」などが用意されている。外出先での利用を考慮し、あくまでリアルタイムなやりとりを重視した機能がモバイル化されているようだ。豊富な機能を持つサイボウズ Officeとは思えないシンプルさで、色も白、黒、青の3色のみ。設定も「日表示で最初に表示する時間」しかなく、とにかく削りに削った印象がある。
まずはサイボウズ Officeのメインアプリであるスケジュールから見ていこう。スケジュールをタップすると、まずは当日のスケジュールが時系列に表示される。メニューエリアには左下に月表示、右下に週表示のメニュー、右上にはスケジュールの新規登録、左上にはトップに戻るためのメニューが配置されている。多くのユーザーは直感的に操作できるだろう。
通常のスケジュールと異なり、グループウェアらしいと感じられるのは、ユーザーを切り替えられること。上部中央にあるユーザー名をクリックすると、同一グループのユーザーを選択し、予定を確認できる。高い解像度を前提としたPC版のように同じ画面で比べるのは難しいが、ユーザーを切り替えることで、他のメンバーの予定を片手でさくっと調べられる。
もう1つグループウェアらしいのは、細かく予定が登録できる点だ。個人用のスケジューラであれば、予定名と開始・終了時刻、メモを書き込む程度だが、サイボウズ Officeでは「通常」「期間」「繰り返し」のメニューがあり、参加者や施設を登録したり、日をまたいだ予定を登録したり、条件を設定した繰り返しを設定できる。つまりPCを開かなくとも、PC版と同じよう操作が行なえるということだ。サイボウズ Officeの目玉機能だけにモバイル表示でもきちんと機能が実装されている。
その他のアプリは、基本的にはシンプルな操作のみサポートする。社外用の「メール」と社内用の「メッセージ」はそれぞれ「受信箱」「送信箱」「下書き」「ごみ箱」の4つが並ぶ。メールは「新規作成」のほか「返信」「全員へ返信」「転送」「削除」などが選べ、メッセージは掲示板のようにコメント追加や「いいね」が可能になっている。
掲示板では「最新一覧」と「カテゴリー」という表示を選べるようになっており、投稿が一覧表示されている。投稿に関しては、コメント追加のほか、ファイル添付も可能。スマホなどの写真をさくっとアップロードし、掲示板でメンバーに見せることも容易だ。さらにワークフローでは外出先から気軽に承認が可能になっており、部長が不在で稟議や申請書が先に進まないという事態を防ぐことができる。
さらに11月には「サイボウズ Office 新着通知 for iPhone」をリリースしている。これはアプリを起動していなくても、自分宛の通知がプッシュされるというもの。スケジュール登録やメッセージの受信、電話メモの受信、ワークフローの受信、カスタムアプリの更新通知、自分宛のコメントなどがリアルタイムに通知されるため、重要な通知を漏らすこともなくなる。急いで上司にワークフローなどを承認してもらいたい場合など、重宝する機能だ。Android版も2016年春以降にリリース予定となっており、モバイル対応はますます強化されることになる。
モバイル表示は外出先での使い方を明確に想定している
モバイル表示を開いた当初は、あまりにもシンプルなので、PC版からのギャップに驚く。実際調べてみると、PC版にあるメニューのうち、施設予約、電話メモ、タイムカード、ToDoリスト、ファイル管理、アドレス帳、報告書、プロジェクト管理、カスタムアプリなどの多くの機能がモバイル表示では削られている。また、モバイル表示されるアプリに関しても検索やスケジュール調整などは実装されていない。データベースにクエリをかけるためにレスポンスが得られないような機能、セキュリティの観点で誤操作が問題になるようなケースは、モバイル表示では提供されていない。そのかわり、シンプルで軽快な使い勝手が得られている。
ここから行き着いた結論は、サイボウズ Officeのモバイル表示はワンハンドオペレーションでの利用シーンを明確に想定して作られているという点だ。たとえば、「携帯電話で電話しながら、先方とのアポを登録する」「出張での空き時間で、ワークフローを承認する」「社内会議の議事録に関して、コメントやいいねを押す」「外出先から現場の写真をアップして、案件の進捗をリアルタイムに共有する」などなど。外出先でモバイルデバイスを使う場合、複雑な操作はなかなか難しいため、スキマ時間を有効に活用できる用途に絞っているわけだ。そのため、上記のような利用シーンが多い場合はモバイル表示は非常にはまる。
一方で、利用シーンに当たらない場合はPC表示が必要になる。たとえば、「過去の報告書を検索して、案件の情報を得る」とか、「承認者や経路を設定して、ワークフローを作る」といった操作はPC表示が必要になる。ここらへんはどの機能を実装し、どの機能を落とすかと言った設計思想の問題になるので難しいが、個人的には外出先で必要になることの多いアドレス帳や業務に直結するカスタムアプリはモバイル表示で利用できるとよいのではないかと思った。ちなみにkUNAIやケータイ版はより多くのアプリケーションを利用できるようになっているので、デフォルトのモバイル表示も今後強化されるはずだ。
クラウドの普及やデバイスの進化、通信環境の充実で「外でグループウェアを使う」というシーンはますます増えていくだろう。現状、サイボウズ Officeのモバイル対応はあくまでPCとの併用を前提としているが、先にあるのは「フルモバイル」という利用シーンだ。使い勝手を活かしたまま、サイボウズのリッチな機能をモバイルに実装するのは大きなチャレンジだが、時代にあわせてさまざまな工夫を行ってきた同社だけに、今後の進化も期待したいところだ。
(提供:サイボウズ)
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