11月4日、電子署名による電子決裁・承認機能を提供する米ドキュサイン(DocuSign)は日本法人の事業開始とシヤチハタとの業務提携を発表した。5000万ユーザーを越えるグローバルでの実績とハンコ文化への柔軟な対応で新しい電子決裁の市場を狙う。
日本の文化に合わせた市場開拓、シヤチハタ提携もその一環
ドキュサインはクラウドベースのデジタル取引管理プラットフォームを展開する。書類申請や登録など、これまで紙で行なわれてきた手続きすべてをデジタル化し、電子署名による速やかな電子決裁・承認機能を実現する。特にデジタル化では、データの長期的アーカイブ機能やデータ処理状況のリアルタイム監視、モバイルアプリの提供など、ペーパーレス化に止まらない総合ソリューションを提供するのが特徴だ。
すでに188か国10万社以上、5000万人を超えるユーザーが利用しており、日本ではリクルートホールディングスや三井情報、NTTファイナンスなどが戦略的投資家としての参画を発表している。11月4日の発表会では日本法人ドキュサイン・ジャパンの設立が発表され、サービス概要と戦略が披露された。
ドキュサイン・ジャパン代表取締役社長 小枝逸人氏は、「たとえばインターネット経由で銀行口座の開設ができるようになったものの、最終的な捺印による確認は書類が郵送されてくる」と述べ、未だ紙ベースに依存する現状を指摘した。「弊社ソリューションを導入するSilicon Valley Bankでは、書類手続きもすべてデジタル化することに成功した。ドキュサインは、高速道路のETCに似ている。より安全で快適、しかもコンプライアンスに沿った形で利用できるプラットフォームを提供する」(小枝氏)。
小枝氏は日本での市場戦略のキーワードに「Jeep Way」を挙げ、ただ目的へ一足飛びに到達するのではなく、文化に合った形を模索しながら推進する方法で開拓すると明言。その第1弾として、シヤチハタとの業務提携を発表した。
シヤチハタは1995年にオフィスのペーパーレス化に向けて、電子決裁・承認システム「電子印鑑システム パソコン決裁」を開発・販売、現在はモバイルへの対応でクラウドサービスにも参入した。「電子署名とアナログな捺印ノウハウを融合することで、日本の商習慣にマッチしたビジネスモデルを構築し、電子署名・契約市場の拡大に貢献したい」(シヤチハタ代表取締役社長 舟橋正剛氏)。
両社によるソリューション開発はこれからになるが、「将来的には韓国や中国など、ハンコ文化の国で提供できることを目標とする」と小枝氏は言う。
SI事業者との提携を中心に展開を検討
日本法人の設立について「日本はグローバル戦略で重要な市場と認識している」と述べる米ドキュサイン 最高顧客リレーションシップ責任者、ニール・ハドスピス氏は、「まずはインテグレーターとの提携を中心に開拓することになる」と明かす。
また、同社はSalesforce.comやBoxなどのクラウドベンダーや、マイクロソフトのOffice365などクラウドサービスとのネイティブ連携を積極的に展開しているが、国内企業とのこうした提携の可能性については「可能性もある」と示唆した。
特にこれら取り組みは一般ユーザーにドキュサインの魅力を伝える良い方法の1つであり、「一部でも機能を体験してもらうことで、機能の良さに加えてソリューションに対する信頼性も獲得できるメリットがある。ユーザーの評価を受けて、最終的には企業での導入につながるケースもある」と米ドキュサイン創業者兼最高戦略責任者のトム・ゴンザー氏は述べる。
利用料金は近日発表予定だが、法人、SMB、個人それぞれで月額料金制や課金制など各種プランを用意するという。
初出時、本文の「決裁」を誤って「決済」と表記しておりました。読者および関係者にお詫びし、訂正させていただきます。本文は訂正済みです。(2015年11月10日)