10月15日、IDCフロンティアはパブリッククラウド「IDCFクラウド」の1周年を祝うクローズドミーティングを開催した。国内のパブリッククラウド事業者でもっとも危機感を持っているというIDCフロンティア。イベントに潜入し、新サービスの概要やユーザーの声を直接聞いてきた。
背水の陣でとにかく攻めるIDCFクラウド
イベントは新宿のスペイン料理屋で行なわれ、IDCフロンティアの担当者やユーザーが飲み食いしながら、次々とLTを進めるという形で進められた。
冒頭、IDCフロンティア取締役の西牧哲也氏は、「IDCFクラウドが出た時は、まさに裸の仮想マシンのみで、性能だけが自慢だった。その後、1年間かけて、DNSやコンテンツキャッシュ、RDSなどのサービスを出させてもらった。そのほか2段階認証やディスクの容量増など、小さい改善はほとんど毎週のようにやって、ここまで来た。最近はMackerelやGrowthPush、SendGridなど他のベンダーさんとの協業も進め、お互いがハッピーになる仕掛けを作ってきた」とこれまでの経緯を説明し、協力を求めた。
続いて登壇したIDCフロンティア技術開発本部の梶本聡氏は「まだまだ攻めます!IDCFクラウド」と題して、IDCFクラウドのロードマップについて披露した。冒頭、梶本氏は「国内主要パブリッククラウドプロバイダーの中でもっとも危機感があるのはどこでしょうか?」という質問を聴衆に投げかける。これに対して梶本氏は、さまざまなサービスを持ち、事業的に安定している他社に比べ、データセンターとクラウドしかないIDCフロンティアはまさに「ダンベル状態」で、「一番危機感を持っている」と説明。背水の陣を敷き、「クラウドでこけたら、次にいけない。とにかくクラウドで攻めるしかない!」と意気込みを語った。
高い性能と低廉な価格を売りに1年前に生まれたIDCFクラウド。この間、DNSやCDN、RDB、セキュリティなどの機能、外部ベンダー連携などを実現。先日発表されたASPICのクラウドアワードのIaaS・PaaS部門でも「総合グランプリ」を受賞したという。梶本氏は、「まだまだ発展途上のサービスもあるが、1年前の初心を忘れずに、休むことなく、止めることなく、どんどん攻めていきたい」と語る。
新しいインスタンスやロードバランシングなどを投入
では、次の攻めとはなにか? 従来よりCPUクロックで2倍でありながら、価格を1700円(15GBを含む)に抑えた「S2」をリリース予定。また、シングルコアのDB向けにCPU 1.6GHz、メモリ8GBの「S8」も用意する。こちらも9100円と低廉なプライスに抑えた。11月以降には、オールフラッシュアレイをベースにした西日本リージョンの開設を予定。「仮想マシンがすべてフラッシュ上で動く。今までのかなり異なるIOPSを実現できるので、期待して欲しい」(梶本氏)と説明した。
今後はユーザーが意識しないITインフラをシンプルに使いやすくしていくという方向性を掲げ、DNSフェールオーバー、DNSロードバランシング、スケーラブルなロードバランシング、SSLアクセラレーション、オートプライベートネットワーク接続などを年度内を目処に提供していくという。
続いてIDCフロンティア サービスディベロップメントグループの飯田充氏が、12月上旬にリリースが予定されているロードバランシングサービスを説明。こちらにはSSLアクセラレーションやオートスケールなどの機能が搭載されるほか、Mackerelとの連携によるモニタリング、UIからのウォーミング設定なども用意する。「仮想ルーターの約10倍の性能を実現できる。仮想ルーターでお困りの方はぜひお使いいただきたい」(飯田氏)とのこと。価格未定とのことで、会場では価格の要望などが競りのように飛び交った。
さらにIDCFフロンティア 技術開発本部の渡邉奈月氏は、今後の勉強会について説明した。従来はビッグプレイヤーのクラウドの中で、肩身の狭い思いをしてきたユーザーに勉強会を提案。数々の勉強会に参加・運用してきた渡邉氏は「講師」と「会場」があれば、勉強会はできると説明し、会場が貸し出しできる点をアピールした。
ユーザーが語るIDCFクラウドのここが好き!
その後はIDCFクラウドユーザーによるLTが披露。ユーザーコミュニティ「IDCF Meetup」のアピールや、無料クーポンでどこまで利用できるか、500円クラウドでメールやブログサーバーを立ててみた、Ansibleによる効率的なサーバー運用監視などさまざまなトピックが披露された。
LT内では、「低価格で安定したVM」「クーポンが太っ腹すぎる」「月額上限課金で社内稟議が通りやすい」「サポートが丁寧」などのIDCFクラウドのメリットが披露。一方で、「もう少し障害を少なく」「DebianやFedoraに対応してほしい」「AnsibleとGUIで連携してほしい」「高トラフィックのユーザー事例が聞きたい」といった改善要求や新機能のリクエストも声も参加者から挙がった。ユーザーとベンダー同士が率直に意見を交換しあうという点はイベントの特筆すべき点と言える。
最後はIDCフロンティアからユーザー表彰が行なわれた後、IDCFのイメージキャラである「モリオ」をかたどった1周年ケーキがふるまわれた。
さまざまなサービスやアップデートが次々と重ねられつつあるIDCFクラウド。パブリッククラウド事業者で一番危機感を持つというIDCフロンティアが、今後どこまで進化を遂げ、どういったユーザーに受け入れられてくるのか、いよいよ正念場の年を迎える。