ニュータニックス・ジャパンは9月9日、「インビジブル・インフラストラクチャ」を推進する事業戦略説明会を開催した。キーワードは「インビジブル」、すなわち「非可視化」。さまざまな「可視化」が進められるIT業界では、意外にも思える言葉だ。そこにあるのは「インフラが安定して動き、復旧も自動化されていれば、利用者はその動きを常に意識しておく必要はない」という思い。その構想をどのように実現するのか――。
Nutanixが描くインビジブルなインフラ環境
「インビジブル」がもたらす価値について、Nutanix エンジニアリング部門担当シニアバイスプレジデントのRajiv Mirani氏は次のように説明する。
「インフラのあるべき姿とは、確実に機能すること、制約なしに機能すること、想定通りに機能すること。この3つが揃えば、その仕組が見えている必要はなく、エンドユーザーも動作を気にする必要はない。電力を例に取ると、コンセントを挿せば機械が動き、ユーザーは送電の仕組みを意識なくてもよい。つまりは『インビジブル』であることが価値になる。こうした利点をエンタープライズにも採り入れるのが当社の戦略だ」
同社ではこのコンセプトをまずは「ストレージ」から実現しており、今年中に「ハイパーバイザー」、その後に「クラウド」についても「見える必要をなくしていく」方針という。
その中核製品となるのが、米Nutanixが6月10日に発表した次世代統合基盤製品「Xtreme Computing Platform」だ。従来の統合基盤製品を拡張し、サーバー内のストレージをスケールアウト可能な共有リソースとして、各仮想マシンから利用可能にする「ハイパー・コンバージド・インフラストラクチャ」と呼ばれるもの。
「Acropolis」と「Prism」の2種類の技術で構成され、高度なアプリケーションモビリティ機能、ネイティブな仮想化機能、コンシューマグレードの検索機能を提供するとしている。
「インビジブル」を実現する技術概要
Acropolisは、次世代統合基盤として提供されるアプライアンス製品。サーバー、ネットワーク、ストレージが最適に構成され、ストレージに関しては「分散ストレージファブリック」という機構を備える。Nutanixの分散ファイルシステム上に構築され、複数のストレージプロトコルで共通のWebスケールサービスを実現。Microsoft Exchangeのように特定のストレージプロトコル要件を持つアプリケーションには、ボリュームをゲストOS用iSCSIストレージとして実装することで、マルチプロトコルをネイティブにサポートする。また、VMをフラッシュに固定させることで、アプリケーションを最適化する技術も備える。
ハイパーバイザーとしては「vSphere ESXi」「Microsoft Hyper-V」のほか、KVMをベースとした独自の「Acropolis Hypervisor」が用意される。各種ハイパーバイザーは単一アーキテクチャ上で共存し、ハイパーバイザー間で仮想マシンの配置・移行・変換が行える。「App Mobility Fabric」と呼ばれる技術で、今年中に本格提供を開始。将来的にはDockerなどの仮想コンテナ技術もサポートする予定という。
さらにAcropolis上で稼働するVMをAWS/Azureにシームレスにマイグレーションする機能も実現予定。説明会でのデモでは、Acropolis Hypervisor上で稼働するVMをワンクリックでAWSにマイグレーションする様子が実演された。構想段階でまだプロトタイプとのことだが、実現すれば、オンプレミスとクラウドは融合され、ユーザーがそれぞれの実装方法などを気にすることはなく、その境界線は「見えなくなる」。これがすなわち「クラウドのインビジブル」というわけだ。
VMwareもIaaSの「vCloud Air」や、先日発表した「Unified Hybrid Cloud Platform」で同様の青写真を描くが、ともにハイブリッドクラウド実現可能性を強く感じさせる技術である。
加えて、ワンクリック管理ツール「Prizm」も重要な要素となる。ストレージ、クラスタ、VM、ネットワークなどの「インフラ管理」、プロアクティブなアラート分析、サービスインパクト分析、根本原因分析、障害対応アドバイザなどの「問題対応」、キャパシティの傾向、What-if分析、カスタマイズ可能なダッシュボードなど「インテリジェンスの取得」をワンクリックで行えるのが特長で、「Acropolisが想定通りに機能する」ためのシンプル性を実現する。
「これまでは3年後にどれだけのリソースが必要かをサイジングしなければいけなかった。例えば、VDIを始めるとき、現在は100ユーザーでよくても、今後どのくらい増えるか。こうした場合に勘を働かせて推定で作業をしなくて済むようになる。複雑なものをシンプルに、シンプルなものをインビジブルに――それが当社の考えていること」
サイジングについては、「Nutanix Sizer」というツールも提供している。
日本での展開について
日本市場への展開については、ニュータニックス・ジャパン マネージング・ディレクターの安藤秀樹氏が説明した。
同社はパートナービジネスを基本としている。そのためのエコシステムを拡充していくとともに、「従来は“大規模”というイメージが強かった当社だが、スモールスタートの要望に応え、より小規模な新規顧客開拓を進める」という。
スモールスタートへの対応としては、Acropolisの受注生産モデルを挙げる。これにより、大規模でも小規模でも最適な構成でシステムが組めるようにした。
さらにストレージについては、企業内で急増するデータのうち、頻繁に利用されないコールドデータの保管を主な目的として、ストレージオンリノード「NX-6035C(60TB/2ノード)」を新たに提供。逆にホットデータ向けにオールフラッシュノード「NX-9000」も提供する。
こうした特徴を持つ同社製品は、特にVDI基盤で強みを発揮するという。そこで日本市場ではまずVDI基盤として訴求を強める方針で、8月13日にはAcropolis HypervisorがCitrix XenApp/XenDesktopに対応し、「Citrix Ready認証」を取得したと発表している。
一方、海外ではSAP/Oracle環境、ビッグデータ、各種サーバー仮想化など新たな活用領域での採用が伸びている。VDIから訴求を始める日本でも、日本法人組織の拡大継続などを通じて、これら新領域への提案も増やしていく。日本市場においては「それら要望に応えるために、製品品質の維持とサポート品質の強化といった“当たり前”のところを一層向上していきたい」(安藤氏)考えだ。