ユーザーコミュニティ「kintone Café」活動レポート 第3回
kintoneで店舗経営を効率化せよ
真夏の湘南でハッカソン! とある海の家の異色のストーリー
2015年08月28日 09時00分更新
8月21日、真夏の湘南で「kintone beachCamp」が開催された。サイボウズ主催の開発者向け勉強会「kintone sevCamp」番外編で、kintoneカスタマイズ経験者を対象に、「海の家」で実践的な勉強会(ハッカソン)を行おうというものだ。
というわけで、いざ、陽射しとビキニ姿の眩しい真夏のビーチへ! 昨今、ハッカソンは多様な形態で開催されてはいるものの「なぜ、海で?」という疑問も抱きつつ、辿り着いた江ノ島東浜。そこではハッカソンの活気とともに、とある海の家の異色のストーリーが待っていた。
IT企業が運営する海の家
小田急電鉄江ノ島線の終着点「片瀬江ノ島駅」。そこから徒歩3分ほどの江ノ島東浜の一画に、会場となった海の家「SkyDream Shonan Beach」はある。一見すると普通の海の家だが、実は隣接する「極鶏.Bar」の店舗とともに、セカンドファクトリーというIT企業によって運営されている。
同社は、クラウド活用のコンサルから、複数のクラウドや端末でデータ入出力を連携させるサービス「SkyDream」や、クラウド型オーダーシステム「Qoopa」などを手がける企業。こうした自社製品を導入し、海の家の経営効率化を図るとともに、自社製品へのフィードバックも図っているという。海の家はショールーム的な位置づけとなり、その運営も同社の社員やアルバイトによって行われている。
社長の大関興治氏によると「オープンは3年前。社員教育や意識改革も兼ねていて、社員には『海の家をやります』ではなく『海水浴客の思い出づくりをお手伝いします』という意識でやるように言っています。ITもサービス業なので、顧客視点の感覚を身につける、あるいは協働環境で働く練習をする場としています」という。
今年からはkintoneも導入し、アルバイトのシフト管理、発注管理、売上予測に使い始めた。kintoneアプリの開発は、システム開発未経験の社員が担当。海の家がオープンする7月1日までに幾度となくブラッシュアップを重ね、実運用までこぎつけた。
とはいえ、間に合わずに不足している機能もある。kintoneアプリは、発注管理とともに売上予測にも利用する。たとえば、明日の売上予測金額を手入力すると、必要な食材の仕入れ量が提示され、それを基に発注をかけられる。ただ、現状は在庫情報と連動する仕組みが欠けていて、システムが提示する仕入れ量は、在庫を無視した数値となってしまう。また、売上予測金額をいくらにするかも経験と勘に依存しており、誰もが使えるわけではないという。
真夏の湘南でハッカソン開始
そこで、ハッカソン形式でkintoneアプリをカスタマイズして、もっと便利しようというのが今回のイベントの趣旨だ。参加者は、kintoneを取り扱っているSIerや、kintoneの元開発者などの精鋭13名。店舗スタッフから上記の課題が説明されると、2人1組でチームを組んで、およそ2時間のハッカソンがスタートした。
波音や海水浴客の声が響き、トロピカルなkintoneドリンクも用意され、ともすればふっと肩の力が抜けそうになる中、どのチームも眼差しは真剣だ。
多くのチームが取り組んだのが、売上目標設定の属人性を排除すること。「売上」と「曜日・天気」の相関性に着目し、指定日の曜日と天気を入力すると、前年実績などから適正な目標金額を算出するような機能を作っていた。
また、在庫を手入力して実際の発注量を計算する機能や、毎日詳細に棚卸しをするわけではないと聞いて、それぞれの食材ごとにざっくりと在庫量を把握する機能も提案された。
さらに、すべての食材を同じ日に発注するとは限らず、食材によっては3日分を一度に発注したり、仕入先の休日がバラバラだったりすることから、それらの事情も加味して仕入れ量を算出するための係数を設定したチームもあった。
それぞれが要件を定義し、できた成果物は多種多様だ。中には7月に実装されたばかりの新機能を使った例も。参加者からは「もっと勉強しようと思った」との意見があり、店舗スタッフからは「改善案を今後の参考にしたい」との意見があった。双方にとって実りのある一日となったようだ。
とある海の家にまつわるストーリー
なお、店舗からは食事も提供された。みんなでワイワイ食事をして意見交換するのもハッカソンの魅力の1つ。鶏の唐揚げをつまんでみると、これがまた美味しい。「海の家ってもっと味気ないイメージだったけど」なんて考えていたら、その秘密を大関氏が教えてくれた。
同氏によると、浜辺には協定があり、海の家には価格設定に下限が設けられるという。例えばビールは最低でも500円で、カレーも700円ほどでレトルトのものが一般的。ある海の家では、会員登録したらビールがタダというキャンペーンを行った結果、協定違反で追い出された例もあり、実は海の家には商売しづらい慣習があるそうだ。
対してSkyDream Shonan Beachの海の家では、ITでコスト削減した分を商品に反映し、同じ700円でも手作りカレーを提供するなど、品質の向上に努めている。結果、一昨年・昨年と江ノ島東浜で売上1位に輝いたというから驚きだ。
「海の家の食事に期待はしていないという声もあるけど、そんなことはなくて、美味しいものを提供すればちゃんとお客さまは来てくれる」(同氏)とのことで、「海水浴客の思い出づくりを手伝います」とはすなわちそういう意識のことだという。
コストを削減して、品質向上に反映する。そういうサイクルが作れれば、ルールの厳しい海の家でも工夫の余地があり、勝てるサービスが作り出せる。ハッカソンを見にきて、思わぬストーリーが聞けた取材となった。だが、「そもそも、なぜ海の家なのか?」という疑問は抱えたままだ。
「極鶏.Bar」はすでに東京に2店舗、神奈川に1店舗あるが、なぜ4店舗目が海の家だったのか。大関氏は「例えば、スキー場でも良かったんですけど、都内からだと行くのも大変ですしね」と述べたあとで、「あとは海が好きだから」と笑って答えた。なるほど納得。今期の営業は8月末までだが、来年の夏もまたオープンする予定だ。今度は純粋に遊びに来たい。

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