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ファッション業界を変えるハッカソン『THE FASHION HACK TOKYO 2015』に時代の変化を見た

2015年09月02日 09時00分更新

文● イトー / Tamotsu Ito/大江戸スタートアップ

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ほぼすべての参加者、審査員、司会などの運営スタッフでパチリ。2日間のハックと講評を終えたあとだけに表情が晴れやかですね。

 ハッカソンイベント『THE FASHION HACK TOKYO 2015』(ザ・ファッションハック東京)が8月29-30日に開催された。
 ファッションハックは、イベント運営を出版4社が協力して行うという企画・運営体制をとるイベントだ。
 参加出版社はハースト婦人画報社、小学館、講談社、集英社。4社のもつ、男性誌、女性誌の各媒体のデジタルデータを自由に使って、”テクノロジーが雑誌の未来を変えていく”をテーマに、全8チームが業界ハックに挑んだ。 

 ちなみにこの出版社横断という企画は、メディア業界の外から想像するより、実はずっと難度が高い。デジタルメディアへの取り組み方ひとつとっても各社で温度差が相当にあるわけで、発起人のハースト婦人画報社の担当者はまさに奔走したんじゃないか、なんて想像してしまう。

 ファッションハックは、会場を見ても一目で、普通のハッカソンと空気の違いを感じた。
 たとえばハッカソンイベントは通常エンジニア率が結構高く、男女比でいえば女性が少なめ。ところが、まず女性参加者がとても多かった。13倍の倍率をくぐりぬけて当選した参加者は、職種ではデザイナーやプランナーが多く、逆にエンジニアがあまり目立たない。普通のハッカソンとは真逆だ。 

 複数の女性参加者に話を聞いてみると「ハッカソンが何をするものか知らなかった」「ツイッターで見ておもしろそうだから応募した」というような人も少なくない。参加者の属性自体が、通常のエンジニア/デベロッパーコミュニティーのハッカソンとは全然違うわけだ(これは主催側でそうした人選をあえてしたというのもあると思いますが)

講評中の会場風景。全作品をデモ展示していて、直接開発チームと話してコンセプトや動きなどを見られるようになっていた。

 開発チームは、ハック開始の土曜日に出会った初対面の人たちでチームビルディングをする方式。これも、なんだかんだで仲間内でのチーム参加が多い一般的なハッカソンと違う点だ。

 最終的に、参加チームは、業種・職種がバラバラな全8チームになった。それぞれが、発表・講評タイムで開発成果を発表した。

■受賞作
 審査員:鈴木えみ(モデル)、奈良裕也(アートディレクター)、渡邉康太郎(takram design engineering クリエイティブディレクター)、小池ゆりこ衆議院議員、イヴ・ブゴン(ハースト婦人画報社CEO/審査委員長)の5名。
 受賞作は次のとおり。

各チームのブースをまわって説明を熱心に聞く審査員。中央左は小池ゆりこ議員、右はモデルの鈴木えみさん。

最優秀 BEST FASHION HACK AWARD
チーム:M&Ms『ダレフウ?』

女子4人チーム。ハッカソン運営経験者がいたこともあって、プレゼンのうまさも際立っていた。プレゼンターは鈴木えみさん(左)。
アプリ画面。ちょっと小さいですが、左上に撮影した私の顔あ写っている。顔の特徴点から似てる判定をして、似ているモデルが載ってる記事や、メイクなどの記事リコメンドをしてくれる。
妙に説得力のある、ファッションボンクラの悲哀溢れるプレゼンが会場中の笑いを誘っていた。

 チーム曰く「ファッションボンクラのためのアプリ」。アプリで顔写真をとると、雑誌掲載のモデル写真から似ているモデルを探し出してくれる。
 あとは、モデルのコーディネートを真似てもいいし、記事で紹介されている服そのものを買ってもいい。誰でも自分に似合うファッションを取り入れられるというアプリ。

MAGAZINE INNOVATION AWARD
チーム:Spoilers『Peek!』

男女混成チーム……といってもこの女子率の高さ。プレゼンターは小池ゆりこ議員(右)。

 スタティックな情報である「雑誌」にQRコードなどを埋め込み、スマホをかざすと動的な情報を取り出せるアプリ。

FASHION INNOVATION AWARD
チーム:アッシュ『MF』 
 

某音響機器メーカーのエンジニア、デザイナーなどで構成されたチーム。実はコーディング担当は移動する暇を惜しんで自宅でコーディング中だったため写真には間に合わなかったそう(可哀想)。プレゼンターはアートディレクターの奈良裕也さん(左)。
アプリの動作風景。アーティストのもつキーワードにあわせて雑誌記事(ファッション)をレコメンドする。
生成の仕組みの図。この点のリコメンドではメタ情報をどう生成するか?が問題。アーティストのインスタグラムのタグを使えば良いと思いついたところが勝因。

 YouTubeの公式アカウントからアーティストを引き、そのアーティストに関連のあるファッションキーワードが掲載された雑誌のページをリコメンドする。
 アーティストのファッションキーワードの抽出にInstagramのタグを使っている。 

TECHNOLOGY INNOVATION AWARD
チーム:クローゼット『tomosu Hanger』 

自作のIoTハンガーを持ち込んだり、もっともテクノロジー感が強かったチーム。プレゼンターはtakramの渡邉康太郎さん(上段左)。
ハンガーの実演の模様。

 IoTハンガーとセットで使うサービス。しばらく着ていない服があるとハンガーが赤く光っておしらせ。特定の服を取り上げると、その服にあうコーディネートを緑のランプで教えてくれる。自宅の服に合うお店の服を知らせたり、tomosu Hanger自体を雑誌付録にするような展開も視野に。

審査員特別賞
チーム:押忍!『OTOKOGI FASHION』 

男性3名。この3名が集まった時点で女子が誰も来てくれなかった、と壇上で嘆いていたのが印象的。プレゼンターはハースト婦人画報社のイヴ・ブゴンCEO(左から2番目)
アプリの男着を達成したところ。こういうFacebookアプリ、いかにもありそうでしょ?
男着メーター。男着が数千(人)評価までいけば、服飾メーカーから服を提供、などの展開もあり得そう。そういう意味ではとてもマーケティング要素も感じる。

 唯一の男性オンリーチームで、ノリも他チームとは少し違うオトコノコ的感覚のアプリ。ファッション誌の着こなしをソーシャル共有し、一定以上の男着(おとこぎ=いいね!のようなもの)が集まると、その服を実際に買って披露するというバズを意識した動線設計。どちらかというと女性向けによった作風が多いなかで独特のノリが評価され、急遽、審査員特別賞が設定された。

ファッション業界もITとデジタルメディアを真剣に考え始めた

 全般の傾向として、ファッション業界かつ雑誌との連動性という要素を踏まえると、洋服のリコメンドとEC機能をどういう切り口で実装するか?というテーマに集約している。
 個人的には、日本のファッション業界はデジタルメディアとは一番離れた業界の1つだと思っている。ファッション分野のECは非常に活発だし、雑誌としての強さもまだまだある。その一方で(だからこそ)いわゆるファッション雑誌の文脈をそのまま置き換えるようなネット媒体というのは未だにほぼ存在しない。 

 他のメディア業界ほどには、ITのブーストを使わずに2010年代まで生き抜いて来たファッション業界が、ここへきて「ITだ、ハックだ」とこちら側に注目し始めているのは、とても興味深い。
 本質的な意味で手付かずな部分が多い一方で、消費行動とはとても相性がいい業界が、媒体をあげて本気でITに取り組んだら、結構面白いことが起こるんじゃないかという気がした。 

●関連サイト
THE FASHION HACK TOKYO 2015

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