タブレットが売れ、デスクトップとノート型は売れない
PCが売れないのはジョブズが目指した理想の終了を意味する
2015年08月19日 10時00分更新
自らの創造性の拡張機器という理念はどこへ行くのか?
ともすると、こうしたパーソナルコンピューターの理念は青臭く聞こえる。しかし、多くの人々がスマートフォンやタブレット端末を携行し、企業による「IoT=Internet of Things」の旗振りのもと、あらゆる生活機器がことごとくインターネットに接続されていく時代、自らの創造性の拡張機器という理念をもう一度しっかり捉えなおされてもよいのではないか?
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2007年に邦訳が出版されているアメリカの発明家、思想家、未来学者であるレイ・カーツワイルの著書「ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき」(NHK出版)。昨今話題の「シンギュラリティー(技術的特異点)」についての約600ページに渡る膨大な論考 |
もしかしたら数年のうちにタブレットPC全体の性能がさらに向上し、現在のノート型パソコンが果たしている役割を完全に肩代わりできるようになるかもしれない。しかし、前掲の資料からも、タブレットPCのそもそもの開発意図/使用目的が自らの創造性の拡張機器などといったものと明らかに異なっているのは確かだ。しかも、米IDCの最新の調査ではそのタブレットPCですら、2014年の第4四半期、2015年の第1四半期は前年割れに転じている。
冒頭に触れたように、われわれはすでにアメリカの未来学者レイ・カーツワイルが2045年と予言した「シンギュラリティー(技術的特異点)」への階段を着々と登り始めている。また、昨今の風潮として「IA=Intelligence Amplifier」(知能増幅)としてのコンピューターが脇に追いやられ、「AI=Artificial Intelligence」(人工知能)としてのコンピューターが再び人々の耳目を集めている傾向が強くなっているように思う。
そうした状況の中で、「大多数の個人の創造力」はどこへ向かうのか? われわれは情報の従順な閲覧者になってしまうのか? それとも、「創造性」という言葉の概念自体が変化していくのか? 何も映像や音楽を作ったり、プログラミングをしたりすることだけが人間の創造力ではなくなる可能性もある。そんなことを次週も引き続き考えてみたいと思う。
(次回に続きます)
初出時、一部表記に誤りがございました。訂正するとともに、お詫びします。(2015年08月19日)
著者紹介――高橋 幸治(たかはし こうじ)
編集者。日本大学芸術学部文芸学科卒業後、1992年、電通入社。CMプランナー/コピーライターとして活動したのち、1995年、アスキー入社。2001年から2007年まで「MacPower」編集長。2008年、独立。以降、「編集=情報デザイン」をコンセプトに編集長/クリエイティブディレクター/メディアプロデューサーとして企業のメディア戦略などを数多く手がける。現在、「エディターシップの可能性」をテーマにしたリアルメディアの立ち上げを画策中。本業のかたわら日本大学芸術学部文芸学科、横浜美術大学美術学部にて非常勤講師もつとめる。
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