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僕らが知らないGoogle マップ 第3回

iアプリ版開発がターニングポイント

Google マップの「モバイル」は日本から生まれた

2015年07月30日 09時00分更新

文● 西田宗千佳 編集●飯島恵里子/ASCII.jp

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グーグルで実施される「新宿駅の儀式」

 Google マップのモバイル版開発で、日本はコアな役割を果たしている。だが、日本の開発チームだけで作れるわけではない。Google マップの開発部隊は、何カ国かの主要開発国に分かれて存在しているという。中でも大きいのは、アメリカ・オーストラリア・スイス・ブラジル・イギリス・インド、そして日本だ。

 そうした国々が中核となっているものの、各国の地図に対するニーズはまちまち。そのため、それぞれの国にも拠点を構え、その土地でのニーズを汲みあげる形での開発が進められている。鉄道経路検索と歩行案内、それにモバイルに注力した、というのが日本の大きな特徴だとすれば、各国には各国なりの事情がある。例えばスイスの場合には路面電車が活発に利用されているため、路面電車を中心に案内するよう工夫されているという。

後藤 「ですからエンジニアには、『とにかくいろんな国へ出張しろ。そしてその場所でGoogle マップを使え』と言っています。自分で思っていたよりもこういうシーンでは使えないんだな、とか、逆にこの国ではこういう使い方をするんだな、といったことが見えてくるからです」

 グーグル社内には、海外から日本に出張でやってきたマップ関連のエンジニアに対して、必ず実施することがあるという。

後藤 「日本の地図はこういう使い方をするんですよ、という説明ツアーを組むんですが、そこで使うのは、必ず『新宿駅』ですね。まず新宿駅に、海外から来たエンジニアを放つんです。そもそも、目的地までの行き方もわからない。さらには駅の出口もわからない(笑)。まったく日本語のわからない、日本に来たことのない人間にとっては悪夢ですよね。そうやって迷うさまを、『ああ、また迷っちゃったかー』と言いながら、生暖かく見守るんです(笑)。そうやって、各国の地図に対するニーズの違いを体で知ってもらうことで、良いサービスの開発につながるんです」

 後藤さんは「日本は地図先進国で、ニーズが圧倒的に高度だ」と説明する。日本の場合、書店やコンビニにはたくさんの地図が置かれているのが当たり前だが、アメリカではほとんど見かけない。地図情報がこんなに広がっている国の方が少ないのだ。

 地図の表示の仕方も独特だ。

後藤 「例えば、『品川』と検索したとしますよね。そこで、品川駅を中心に表示するのか、それとも品川区役所を中心にするのか。日本人の感覚だと駅ですよね。でも、ご存知の通り、品川駅は品川区にはないんです。でも、日本人なら『品川へ行ってください』といえば、10人中10人が品川駅へ行くでしょう。他国だと、役所やシティーホールなどを中心にする場合もあります。そういう違いを認識しておくことが、開発していく上ではとても重要なのです」

 地図は人々の生活に密着したものだ。モバイルで使われるようになって、その価値はさらに高まっている。そのモバイル地図が開発されていく中で、日本が世界有数の「地図にうるさい国」だったのは、おそらく幸せなことだったのではないだろうか。

 次回最終回は、地図に求められるものの変化や「モバイルの先」など、これからのGoogle マップについて考えてみたい。

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