四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第145回
チューニングの世界に革新を起こしてきたメーカーに聞く
コルグのチューナーはケンカから誕生、歴代製品を技術者と振り返る
2015年07月04日 12時00分更新
表示は針から液晶、センサーはピエゾへ(1985年-1999年)
―― すでにチューナー向けの技術は揃った感じですね。この後のブレークスルーは何ですか?
肥後 LEDメーターを使った「DT-1」ですね。単4電池でカセットサイズ。当時世界最小サイズでした。同じようにLEDメーターを使ったラックマウント式の「DT-1PRO」も1987年に出ています。
―― これは買った記憶がありますね。
肥後 この後は表示が液晶ディスプレーになります。液晶ってマイコンの性能もあって、昔は使いづらかったんですが「CA-10」と「GA-10」という製品が1997年に出ています。液晶で針式の表示をする「GA-20」というのも、1998年に出ています。この時代、変わったところでは「DT-7」ってありましたね。発売は1999年です。これはバズ・フェイトン・チューニングシステムにも対応しているんですよ。
―― それは何ですか?
肥後 ラスカルズとかでやっていた、バズ・フェイトンというギタリストがいて、彼が考案したものです。それは開放弦とオクターブの間のピッチを平均律からずらすんです。それに合わせたナットやフレットであるとか、ギターの改造も必要なんですが。
―― 純正律みたいなものですか?
肥後 それに近いようなものですね。フェイトンさんいわく、「ヴェルクマイスター※1とかキルンベルガー※2が、響きをよくさせる音律を研究していたけど、私はついにそれをギターで実現しました」と。まじめに説明すると大変なので、そう言う風に言っていたのかもしれませんが。DT-7には、そのチューニングができるプログラムが入っていたんです。
―― でも、対応するギターがないとダメなんですよね。
肥後 そうですね。DT-7は、そういうギターを持っている方の間では、すごく支持されています。
市川 現在は残念ながら生産終了となっていますので、みなさんオークションで探したりしてくださっているみたいですね。
(次回は2000年以降のチューナーを振り返ります)
※1 アンドレアス・ヴェルクマイスター(1706年没)。ドイツの音楽家。鍵盤楽器ですべての調が演奏できるウェル・テンペラメントという調律法を考案。
※2 ヨハン・フィリップ・キルンベルガー(1783年没)。ドイツの音楽家。やはり鍵盤楽器ですべての調が演奏できる音律を考案。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ
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