企業や国家が「デジタル化(Digitization)」を果たし、生き残るために
チェンバースCEO最後の基調講演「シスコは変革を遂げた。皆さんは?」
2015年06月23日 14時00分更新
デジタル戦略を持つ企業はわずか、しかも大半は「成功しない」
すでに多くの企業CEOは、ビジネスのデジタル化、産業のデジタルへの移行が起きると考えている。しかし、具体的なデジタル戦略を持ち得ているCEOはほとんどいないと、チェンバース氏は指摘する。
デジタルビジネスの波はそれほどゆっくりと来るものではない。チェンバース氏は、わずか5年後の2020年までには「75%の企業が完全にデジタルになるだろう」と予測する。その一方で、デジタル化による成果を得られるのは「30%にすぎない」とも語る。「とても苛烈な話だ。なぜ変革に失敗するのだろうか?」
チェンバース氏は、大半の企業がデジタル化に失敗する最大の理由を、ビジネスのイノベーション、組織やプロセスのゼロからの再構築に失敗するからだと指摘する。「シスコとて例外ではない。だからこそ、勇気を持って取り組む必要があった」。たとえばシスコでは、わずか2カ月間で62のビジネスユニットを解体、再構成してビジネス変革を断行したという。
「(これからの)シスコが顧客に提供していくのは、ルーターやスイッチではなく、アーキテクチャやTCO、ビジネス成果といったものだ」「エンジニアリング、セールス、サービス、法務部門まで、われわれは再編成を行った」「3年間をかけて、シスコは『すべてをやり直す』勇気を持っていた」
またチェンバース氏は、デジタルへの変革において「テクノロジーは最も簡単な部分だ」とも語った。企業カルチャーの変革、組織編成やビジネスプロセスの改革にも目を向けねばならず、そのほうがより難しいというわけだ。
企業だけでなく国家、都市もデジタル化の波にさらされる
デジタル化の動きは企業ビジネスだけに留まらない。各国の政府や地方自治体も、国家や都市レベルでのデジタル化に着手し、より効率的な社会インフラの構築、教育水準やヘルスケア水準の向上、未来に向けた競争力強化を図っている。「産業界よりも政府が先んじて行動することもしばしばだ」とチェンバース氏は語る。
「90年代半ば、クリントン大統領(当時)とホワイトハウスで面会した際、大統領は『情報の時代』が来ることを理解していた。米国がこの時代をリードすることで、新たな雇用が創出され、GDPや国民所得も大きく成長させるとわかっていたのだ。(『デジタルの時代』でも)これと同じことが起きる。ただし、それに気づいているのは米国だけではない」
チェンバース氏は、ドイツや英国、フランスなどヨーロッパ諸国、あるいはインドや中国などアジア諸国でもその動きは始まっており、政府要人と面会する機会も多いと語った。「どのように国を変化させ、未来に向けて競争力のある環境を整えるか(をアドバイスしている)」。たとえば今年2月、チェンバース氏はフランスのマニュエル・ヴァルス首相と面会しており、フランス政府はデジタル化における「野心的なパートナーシップの相手」として、米国企業のシスコを選んでいる。
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